第9夜 転生と仲間と主人公

(無事だ。一人仲間を見つけた)






そう紗生がテレパシーを送ったのは30分後だった。


無事だと聞いて緊張していた3人は瞬間脱力した。




ザムザは




「もう…心配させて…」と。




ラムソスも




「本当に…」




と涙した。




ベルデは




「ふん、伝えておくぞ」




そう言うとテレパシー返しをした。






(仲間とは良かったのぉ。誰じゃ?)


(…花畠華留美)


(おお、カルミんか!そうか!そうか!)






(…何故ニックネームを知っている)




これは言い合いを繰り返す、と思いベルデがこう言い放った。




(わしは輪廻転生を経てここにいる。転生は誰もがするもんじゃが、わしは記憶を持っとる。他の連中のことも覚えとるぞ。カルミんという名をつけられたのを水晶で見たことがあるんじゃ。お前らの転生の仲間だからの)






紗生は唖然とした。






(……なんだと?本当にそんなことが……)






少しの間を与え、ベルデはこう答えた。


その声は弟子二人にも聞こえた。








(ワシに仕えたレオナ1世はぶっきらぼうな人だった。その…転生した可能性がお前にある)






(((!!!)))








「どうした?呆っとして…」




と、所変わってここはヒール。


アザムが紗生に話しかけた。


当たり前だ。


傍から見たら、口を開け空を見上げた障碍者だ。




「な、何でもない!!」




そうは言ったものの内心はこうだった。






(私がレオナ1世とかいう奴の転生した姿!?誰だそれは!今のこの状況と何か関係があるのか!?)






と、気になったので




(レオナ1世のことを後で教えろ!!)




と紗生はテレパシーを返した。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






所変わって、スミレとエナと、それに従う妖精数名。


彼女らは何かを運んでいた。


聖水と聖典だ。






「何よ!何でこんな重いの私たちが運ばなきゃなわけ!?アイツぶっ殺!!」


「まぁまぁ…しかしいつの間に罠なんてはってたの……?」




と、スミレとエナ。


そこに数名の妖精が割って入る。




「そういえば、スミレさん達どこに行ってたんですかぁ?」




その問いにエナが答える。




「んー?魔女狩りよー」


「魔女狩り!?」




スミレのその言に数人がざわっとなった。




「魔女狩りを…見てたんですか!?」




ぶるぶる震える下の者にスミレは




「戦いに備えたのよ」




と言うと、妖精はえっとなった。




あれから---------------……。










-----------------------------------------------------------------


それは遡ることアガナ・ダヂオ村。




スミレとエナはすぐに清教会の中にある、紗生の持っていた日本刀を探した。


探す事数時間、漸く見つけたので、妖精村までワープした。


ベルデが「大切」「危険」と言うので戦闘中のザムザらを見ていたが、紗生を中心にして良く動き、村人の手を逃れて彼らはなんとか死者の森に向かったのだった。


その間2人はどれだけハラハラしたかしれない。




「サキ……弟子ぃ……」




ひぃぃんと、気の強いスミレが泣いて見せた。


そしてエナも。




「良かった……」






とは言ってもだ。


人の生き死にがかかっているのに何故刀を運ばせたのか?


2人は納得がいかず、ベルデを問い詰めた。






「世界が動き始めたのじゃ!」






意味が分からなかった。




「え?何て?」


「……ふう。少年達を中心に世界が動き始めたのじゃ!」




「少年達って……弟子たちのこと?サキじゃなくて」


「そうじゃ」




大威張りでベルデがそう言い放った。




「魔女に間違われててんやわんやして、サキが主人公じゃないって何か変だね」


「うっさい!作者が出番作るの下手だったから仕方ないんじゃ!今や聖教徒達に喧嘩を売ったとして指名手配されるのも時間の問題じゃ、奴らも鍛えねばな」


「鍛えるって?具体的に?」


「ザムザは光の、ラムソスは……」


「ラムソスは?」


「まだ言えんがの。本人の前で話すわ」


「勿体ぶってー」


「そして紗生。こやつの運命は重過ぎる……わしが守ってやらんとな」


「紗生が?確かになんでこげてたんだろう……あれ呪いでしょ!?かけたのって誰なの?


 何の理由があってあんないい子を……」




「母親じゃ」




2人は思わず顔を見合わせた。






「母親ァ!?」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






そして話はまた死者の森に戻るが……今度はザムザ、ラムソス、紗生を山賊が襲ってきた!!!!


蔦を使って近づき器用にナイフで切ろうと構えてくる。


口々に




「身包み全部置いてけ!じゃないとナイフでぶっさすぞぉ!!!!」




と言ってきた。


ラムソスは




「僕たちは何も持っていません!ここを通して下さい!!」




そんなラムソスの言に耳を貸さない山賊たち。




「じゃあ可愛いこちゃん達を……犯しちゃおっかなー♪」




そう言われると紗生とラムソスは怖くなって(ラムソスは姿は少女の褐色の肌の黒髪の男の娘)、紗生は剣で相手を攻撃し始めた。




「黙って通らせてくれないか…人の命……取りたくない……」




と紗生。


それに良く思わない盗賊。






「来るぞ!」






身を引き締める3人。


が、2人は途端にいなくなってしまった。




「ザムザ!ラムソス!」








--------------ここからは前の通りである。






所変わって妖精村。


ようやっとスミレとエナがザムザ、ラムソス、ベルデと合流した。




「お二方……」




とザムザ。




「おっつー」




とスミレ。




それに2人がムカッとして、






「どこに行ってたんですか貴方達は!大変だったんですよ!?それを呑気に……」




それを遮ってスミレが




「はいはい私らも労働してましたぁ」




となめくさった態度で耳をかく。


これではいけないとエナが割って入った。




「私達はサキの刀と貴方達の聖典と聖水を持ってきたの。スミレは疲れているの。我慢してあげて」




これで怒りを鎮める2人。




「で?サキはどうなったの?」




とスミレ。




「うむ。ヒールにいる」




「ヒールぅぅっぅぅぅぅうううううううううううう!?!?!?!??!?!」




2人と2匹が驚愕する。




「そ、そーいうわけでどんなわけでヒールにいるんですか!?」


「命狙われたんですよ!?」


「犯されちゃうよ!?」


「体力大丈夫なの!?」




と、4人が怒涛の如くベルデに殺到した。


それに引かないベルデ。




「仲間が一人いたらしい。口調からして何の問題もなさそうじゃ」




それを聞いて、遂に1人見付けたのかあ、という思いと、無事だということで4人は安堵した。




「そうかぁー、良かったァ」


「そーならそうと早く言えよババア!」


「こら、スミレ!」


「サキさん……良かった……!」




5人は喜び合うと、次の対策を立てることにした。


先ずはザムザ。




「僕、強くなりたいんです」




するとベルデが




「うむ、そうじゃろうな」




そしてザムザは続ける。




「否定出来るくらい、強く」




それにスミレとエナが反応した。




「「否定?聖教を?」」




「はい。僕に出来ることなら」




その眼には激しい炎が満ちていた。


激しいオーラのようなものも感じる。




「僕も……」




と、ポツリ、とラムソス。




「僕も強くなりたい。足手まといにならないくらいに。だって、魔法使いの弟子だもん!」




「魔法使い?」




とスミレ。




「牧師様だよ。」




それにベルデは「ほお……」とうなづく。そして




「ならばお前達に試練を与えよう。ついてこれるな」






2人は勿論








「「はい!!」」








と答えた。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






所変わってヒール総本山。






「どうかしたのか?さっきからそわそわと」




とアザム。紗生の様子がおかしいからだ。


それに紗生は




「私はどうも特殊な力を持っているらしく……その仲間のような魔女がいるんだが」


「魔女!!!!」




皆がざわめき始めた。当然である。




「……その魔女が私にテレパシーを送ってくるんだ」




その言にまたしても皆がざわめく。




「テレパシーって何だ?」


「頭で声がするってことだろ?!」


「返事もできるんだよな!?」




「魔女って黒魔術使う魔女かよ!?」


「魔女狩りで本当の魔女は捕まらないらしいぜ」




そんな中、混乱を収めたのは、他でもない、一番隊組長アザムである。


足でダン!と地面を踏むと、全員シーンと静まり返った。


そしてアザムは……




「魔女。本当にいるのかそんな奴が」




そして紗生も




「いる!私も初めて見た……私をドーピングしてくれた恩人だ」


「ドーピング!?」




またもざわざわし始めた。




「私は23日間寝ていたらしいんだ。だから身体を元に戻してくれた……少しの間だが。呪いも解いてくれた」




呪い、という言葉に皆ピクッとする。


アザムは……




「ドーピングの次は呪いか。とんでもない世界に迷い込んだものだな。さて、お前……これからどうするんだ?」




とあからさまに含んだ言い方をする。


と、華留美が割って入って……




「ねぇ、これって紗生姉のこと言ってるんでしょ!?泊まっていきなよ」




「!?何を!?命を狙われたんだぞ!」




「私の友達だから大丈夫!」




そう言い合いが終わると、華留美はジャンに




「ねえジャン!お願いだから紗生姉をここに置いてやって?ね?」




と持ちかけた。


ジャンは当惑し、フェインとアザムを見た。




「……別にいいんじゃねえの?」とフェイン。


「……ふん」




OKという合図だ。


紗生はしょうがないという風に泊まることにした。


それに、大分疲れているし。


ドーピングももうすぐ解ける。


そう思うと同時に、安心したのかその場に倒れこんでしまった。

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