第52話 悪役令嬢達の初詣 その一

「やはり新年なだけあって人が多いですね……」

「ローズ、マイ、またはぐれちゃダメですわよ?」

「わかってるよ、ちゃんとリリーにくっついてるから!」

「うん、私に任せてよイリア。必ずはぐれたりしないから」


あの後ゆっくり寝て六時に目が覚め、八時現在私達は初詣に神社?的なのに来ていた。異世界で初詣……ってのも変な話だけどまぁゲームだしね。……なんで初詣あって除夜の鐘がないのかはかなり不思議だけど。


「じゃあまずはそうですね……おみくじを引きに行きましょう!」

「おみくじか!いいね!行こ行こ!」


マイの提案で私達はおみくじを売っているところに進む。相変わらず人が多い……けど、なんとかリリーと手を繋いでいたからはぐれることは無かった。そして私達は列に並びおみくじを引く。


「さてさーて、今年の私の運勢は~っと。しゃかしゃか~……ぽんっ!」

「今年こそは大凶からおさらばしますわ!……えいっ!」


謎の音で楽しく振っておみくじを引くリリーと、とてつもなく気合を入れて引くイリア。実はイリアはここ三年ずっと大凶だった。凄いよね……三年連続で大凶を引くってどんな確率なんだろ……


「ローズ様、お先にどうぞ」

「ありがとう、マイ。それじゃあお言葉に甘えて……えいっ」

「毎年ながら少しこれ重たい気がします……私が弱いだけなのでしょうか?」


マイが先に引かせてくれたので、お言葉に甘えて私は先に引く。そしてマイも引く。マイはそのおみくじの入った箱をとても重たそうに持って精一杯揺らしている。……あぁ、やっぱりこういう時のマイっていつ見ても可愛いなぁ。


「……さ、みんな紙もらったね!それじゃあ、せーので開けよっか!」

「うん、わかった!……せーのっ!」

「吉……やりましたわ。私、やりましたわ!ようやく大凶の呪いから解放されましたわ!

「きょ、凶……ですか……」


イリアは吉だったみたいで、やっと大凶から解放されたとはしゃいでいる。逆にマイは凶で少々落ち込んでいる様子だった。何気にマイはそこそこ運が良い方で、この三年は中吉、大吉、中吉だった。


「お、やったー!大吉だよローズー!」

「良かったじゃんリリー!私も大吉だったよ!」


リリーが大吉と書かれた紙をとても嬉しそうに私に見せてくる。だから私も、大吉と書かれた紙をリリーに見せる。にしても、大吉か……かなり久しぶりだな


「あら!二人は大吉でしたのね!」

「羨ましいです……私は凶でしたから」

「えーっと、なになに……?『願う心は報われる。己が使命に従い友を守りし時、その心に主は応えるだろう』……だって!」

「己が使命に従い友を守りし時……また今年も何かあるのかな?ダンジョン試験とか」

「どうだろ?わかんないな。それよりそうだ、ローズはなんて書いてある?」

「えっとねー、私は……」


と、一度閉じた紙を広げておみくじに書かれてることを読み上げていく。


『やがて大きな福が来たる。絶え間なく続く己が試練を乗り越えしとき、願いは形となる。汝の願いは汝の傍に。』


私のおみくじにはそう書かれていた。……絶え間なく続く試練?私の願いは私の傍に?……どんな意味なんだろう


「さ、おみくじ結んじゃおっか」

「うん、そうだね!……ローズ、言わなくてもわかるよね?」

「もちろん……どっちが綺麗に結べるか、でしょ?いいよ?やろっか」

「さすがローズ、よくわかってる。負けないから」


……もうなんとなく察せるようになってしまった。色々勝負をしかけてきたリリーがこの勝負をしかけてこないわけが無い。というわけで丁寧に結び付けていく。いやまぁ……おみくじを結びつけるのに綺麗も汚いもないと思うんだけどね?


「……あっ、破けちゃった」

「これは……私の勝ちでいいよね?リリー」

「悔しいけどそう……だね、私の失格」


リリーの力が強すぎたのか、ビリィッと音を立てておみくじが破けた。一応結びつけたには結び付けたんだけど流石に破けたら失格でも……ねぇ?


「……なんであんな二人は競い合っているのでしょう?」

「リリー様、あの武術大会で負けたのが相当悔しいらしく「絶対に借りを返す!」と」

「リリーって意外と情熱的な一面も持ち合わせてますわよね……」

「ですね……」


なんて感じで話してるイリアとマイを見てると後ろから声をかけられる。少しビクッとしながらも後ろを振り向くと、ジーク達がいた。


「やっぱり、ローズ様達も来られてたんですね」

「あ、ジーク!」

「あはは……驚かせてしまってすいません……」

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