第50話 武術大会の終わりとそれから……
「ま……様……ローズ様!」
「きゃっ!……って、マイ?あっ痛っ!」
マイに呼びかけられて私は病院で目を覚まし、起き上がる。思ったより重症だったみたいで、体がギシギシと軋むような痛みを発していた。やばい、泣きそうなくらい痛い!
「あっダメですローズ様!まだ傷も癒えてないですからあまり動かれては……」
「あー……そっか。ありがと、マイ。あとごめんね?うん、安静にしとく」
「はい、しばらくは安静になされてください。それと……武術大会優勝、おめでとうございます」
「ありがとう、マイ。それと……リリーは?」
「リリー様でしたらまだ目を覚ましていませんが、もう数時間程で目を覚ますでしょう」
「そっか」
ふと隣を見ると、確かにリリーが寝ていた。にしても……やっぱりやりすぎちゃったよね。私もそうだけどリリーも頭に包帯を巻いている。マイから聞いた話だが、武術大会はクロッセオにある医療機関から支援を得ておりまだ次がある選手の場合は回復魔法で応急処置をしてまた戦えるようにする、というシステムにしているみたいだがもう武術大会は終わったので私達はベッドで寝かされてるそう。
「あ、そうだ……優勝のトロフィーを預かっているのですがまたお体が元通りになった時にお渡し致しますね」
「うん、助かるよ。ありがと……そういえば今って何時?」
「今でしたら……9時ですね。かなりお疲れのようで、おふたりとも一日中眠っていたみたいです」
「一日も寝てたのか、そっか……」
「ローズ様が無事にお目覚めになって良かったです。では、私はこれで」
「朝から来てくれてありがとう、マイ」
「いえいえ、お二人は私の大切な友達なのですから」
そう言ってマイは病室から出ていく。……あれ、そういえばマイの時はどうしたんだろ?一日で復帰してたけど……マイは単に魔力が尽きただけだから回復が早かったのかな。……にしてもほんとに驚くことばっかりだったな。イリアも、マイも、ローズ達も。みんなみんな、ゲームの世界より何倍も強くなってる。特に驚いたのはやっぱりリリー。確か本来のシナリオはローズ様には手も足も出ず終わってたはずだけど……
「ん……ここは……病院か」
「……あ、起きたんだリリー。おはよ」
「ローズ、おはよ。……ぷっ」
「どうしたの?リリー、起きていきなり笑うなんて」
「だ、だって……ローズってば包帯だらけじゃん……痛っ!?」
「えー?リリーには言われたくないなぁ。あと、私もだけどまだ傷が痛むから安静にしてなきゃダメだから当分はずっと横にならなきゃ」
「ずっと横かぁ……嫌だなぁ。あとそっか……私、負けちゃったんだね」
「ほとんど相討ちのようなものだったでしょ。ローズが倒れた数秒後に私も倒れたわけだし」
「でも多分あのままやってたら確実にまだローズは立ってたでしょ」
「まぁ……うん、多分」
「ほら、私の負けじゃん」
リリーが目を覚まし、またそれから少し話す。にしてもあれは本当に危なかった……リリーがあの勝負を持ちかけてこなかったら本当にどうなってたことやら。
「……楽しかったね、リリー」
「うん、楽しかったね、ローズ」
「リリー、悔しい?」
「うん、とっても悔しい」
「じゃあまた次、リベンジ待ってるよ。その時もまた、私が勝つけどね」
「っ……」
「リリー?顔赤いけど大丈夫?」
「うん、大丈夫……それよりも、今度こそ勝つのは私だからね!」
また似たようなやり取りを三日ほど繰り返して私達は退院し、また普通の日々に戻ってった。それからもちょくちょく皆で沢山遊んだりを繰り返して、今は十二月三十一日。もう、今年も終わる寸前だ。
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