第49話 武術大会決勝戦 悪役令嬢VS主人公 決着
さて、ラストスパートだ。私とリリー、お互いの魔力が半分を切ったということで先に魔力を尽きた方の負け。リリーは魔力が二倍になってるのでだいたい私と同じくらい。なら……とりあえず攻撃させる隙を作らない!
「よし、しょうがない。かかれっ!」
「数で私の魔力を減らす気か……もうこうなったらお互いにただの我慢比べじゃんね!」
「私は激しい魔法を使わないといけない、リリーはそれを防御するためにより倍率をあげないといけない……ふふ、そうだね、我慢比べだね!我慢比べは得意だから……負けないよっ!」
「なら望むところ!私も我慢比べには自信があるからね!……斬撃波!」
私は、雷・風の剣、水・火の球を全力で絶え間なくリリーに打ち込む。そしてリリーは同じくそれを絶え間なく一瞬で切り裂き続ける。私に斬撃も飛ばしてくる。難なくよけれるんだけど……こう見るとすごいよなぁ。だって実際に見てみればわかるけど……見えないもん。
「はぁ……またそこそこ魔力使っちゃうけど……《弾丸・全フルバレット》!」
「またそれか!……めっちゃ早いし、もう!」
「よし、今だ……爆ぜろ!」
「な……!」
二度目のフルバレットを放つ。今度は以前より多めの百発。極限まで速度を早めてリリーもギリギリ追いつけるくらいのスピードにしたが、一発一発の威力は抑えた。なぜなら、これもまた全て爆発するからだ。
そして爆発させる。ほとんど命中し、リリーは頭から血を流す。……また、やりすぎちゃったかな
「リリー……大丈夫?」
「敵の心配をするなんて……優しいねローズは」
「さすがに頭から血を流してたら心配するよ……今は敵だけど友達なんだしさ」
「私は大丈夫!さ、まだまだ行くよ!」
そう言ってまたリリーは強く地面を蹴って私に向かってきた。……ま、本人がそう言ってる事だし心配は特にしなくていっか。また後で治して貰えるし
「すぅぅぅ……《一閃》!」
「ふふっ、まだそれだけ出来るなら心配するだけ無駄みたいだね。……あ」
「お揃いだね、ローズ。ローズは大丈夫?」
「うん、全然大丈夫!さ、もっともっと楽しも!」
不思議だなぁ。私もリリーも、頭から血を流してるのになんでこんなに楽しいんだろ。やっぱりリリーだからかな?もしかして私ってリリーの事好き?……いや、気の所為かな。だってリリーは今の最推しだもん。
「ほんっと不思議だねローズ、私達今お互い凄い怪我してるのに」
「そうだねリリー、すーっごい楽しいね」
「終わっちゃうのは寂しいけど……私が勝つ為にも!」
「何言ってるの?勝つのは私だよっ!リリーはただ楽しんで私に借りを返されればいいの!」
「言ってくれるじゃんローズ……勝つのは私だよ、また借しを増やすんだから」
これを見てる観客席の人はどう思ってるんだろうか。ドガァーンとかバゴォーンとか凄まじい轟音とともに頭から血を流しながら笑って戦ってる私達のことを、凄まじい速度で攻防を繰り返しながら話してる私達のことを。おそらくだけど狂気でしかないと思う。
……一個試してみたいことがあるからちょっと試してみようかな……いや、まだいいや。あれは一応切り札として使うことにしよう。
「そういえばローズ、回復魔法とか使わなくていいの?ローズならすぐ何とか出来ると思うんだけど」
「相手がリリーなのに回復魔法なんて使ってる余裕ある?リリー相手だとさすがの私も攻めと守りで手一杯!」
「それもそっか。ローズ、まだまだ行ける?」
「まだまだ余裕!まだ柱魔法五発打てるくらいは残ってる」
「さすがローズの魔力量だね、魔力増量の魔具を付けていても魔力量が届かない」
「リリーはどう?」
「このままのペースで行けばもって一時間かな」
「なら平気そうだね、もう少しだけ楽しもう!……風よ、我が命に応じて全てを切り刻め!」
「ぐっ……流石に全力の風魔法はかなりくらっちゃうか……」
私は風魔法を完全詠唱で行使する。リリーはそれを受けて、肩や腕にたくさんの傷を負う。これ、本当にリリーは大丈夫なのかな……
「……ローズ、一個勝負しようよ」
「……勝負?」
「うん、勝負。今から私はローズに剣の柱魔法を使うからさ、それを防いでよ。防げたらローズの勝ち、防げなかったら私の勝ち」
「いいよ、やろう」
「ふふ、ありがと。それじゃあいくよ……神秘の剣よ、我が力の全てを解放せよ!」
リリーが剣を天に掲げると、剣が強く光った。そして不思議なことに私は動けなくなった。……金縛り効果的なのもあるのか……厄介だ
「……《斬撃ノ柱スラッシュ・ピラー》。はぁぁぁぁっ!」
「……痛っ。なんだこれ、毎秒全身を切られてる……?」
リリーは剣を振り下ろす。すると、剣にまとわりついてた白いオーラが柱状に溢れ出して私を包む。そして包まれた私は、絶え間なく斬撃を浴び続けている。
……リリーってば本当にとんでもない切り札を隠してたんだね。でも、これを防げば私の勝ちだから……耐え凌ぐ……いや、私の柱で上書きをする!
「風よ、我が力を解き放て!」
斬撃から私を守るくらいの小さめな風の柱を生成して自分を守る。これも守れるには守れるけど……けどまた食らうのも時間の問題だろう。ならばもう、かき消そう。私の柱魔法で。
「炎よ、我が力を解き放て!」
私は更に炎の柱魔法を使う。そして風と炎が混ざり合い、炎の渦ができていた。……本当はリリーに使いたかった融合魔法、《灼熱ノ渦フレア・トルネローズ》本当はこれを縮小させてリリーに大ダメージを与えるつもりだったんだけど……
「はぁっ!」
炎の渦をどんどん広げていく。そしてついに、炎の渦が斬撃の柱を上回り、逆に包み込んだ。……よし、これで私の勝ち、かな?
「……破られちゃったかぁ。じゃあ、私の負けだねぇ……」
『リリー選手の戦闘不能が確認されました。よって……この三十分に渡る激しい試合を制し、今年の武術大会の王座を手にしたのは……ローズ・コフィール選手!!!』
やがて柱が消えて視界が開かれる。すると、そこには倒れてるリリーがいた。リリーの元へ行こうとするが……だめだこれ、体が動かない。視界が、ぼやける。
「……やっ、たぁ……」
結局私も倒れてしまい、意識を失うのだった。
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