第47話 武術大会決勝戦 悪役令嬢VS主人公 前編

あれから一日。リリーはまた元気になり、無事に学校にも来れたみたいだ。あと今朝昨日のモブと会ったんだけど顔合わせた瞬間に逃げられてしまった。

やっぱり昨日やりすぎちゃったかな?いや、まぁ気にしない方がいっか。

それより……私は悪役令嬢。本来のストーリーならば最後でなければ君は勝つことの出来ない存在。だから私は……君に勝つよ、リリー


『さぁ皆様お待たせいたしました!ついにやって来ました武術大会、決勝戦です!はたして、本校最強の座は誰が手にするのでしょうか!ということで選手に登場していただきましょう!』


と、この一週間でとても聞き慣れた声が響く。そして、私は歩き出す。闘技場の中心へ向かってゆっくりと。


『まずはこの方!底知れない魔力とそれを零さず扱う力、更には冴え渡る頭脳を持った非の打ち所なしな完璧聖女!ローズ・コフィール選手!』

「……全力で勝ちに行くよ、リリー。この前の借り、返してあげる。絶対に、負けないから」


いよいよ私完璧聖女になったんだけど?昨日あんなことしたばっかりだから喜ぼうに喜べれないんだけど?

とまぁ、そんなことはさておき……私は闘技場の中心に辿り着くとまるで宣戦布告するようにリリーの方を指さしてそう告げる。


『続きましてはこの方!身体強化の超適正にそれを抜きにしてもセンス抜群の身体能力。だが実はまだ本気を出していなかった!?リリー・クレスアドル選手!』

「私だって全力で勝ちに行かせてもらうよ。ローズには悪いけど、もう一個借しを作ってあげるよ……また、あなたを打ち負かしてあげる」


闘技場に現れたリリーは腰に剣を引っ提げている。そして指には緑色に輝く指輪をはめている。……なるほど、いつでも本気を出せる体制って訳か。そして中心まできてリリーは剣の切っ先を私に向けてそう言い放った。


『さぁ早速始めていきましょう。武術大会決勝戦……スタートです!』

「……やっぱり初動はそう来ると思ってたよ!」

「きゃっ!……今のは、無詠唱……?」


私の読み通りリリーは初動で速力強化を使い、先制攻撃を叩き込んできた。なので私は動体視力を強化し、攻撃しようとしてきたリリーは吹っ飛ばされる。もちろん、ちゃんと威力は普通詠唱くらいのやつ。


「大会が始まるまで、ずっとジークに教えて貰ってたんだよ……ねっ!」

「へぇ、そうなんだ……それは避けれるよ!」


リリーに十発の火球を放つ。うん、やっぱり無詠唱のが戦いやすいかも。まぁ、リリーには全部よけられちゃったんだけど……


「けど、ずっと避ける訳にも行かないからな。それじゃあよし、ふぅ……リリー・クレスアドル、推して参るッ!」

「お、剣抜いたね?それじゃあ私も飛ばしていこうかな。《弾丸バレット》!!」


私はリリー目掛けてバレットを放つ。その数約五十発ほど。特別な魔法でない限りは使用者に魔法が当たることは無いので、私に当たるなんて事は気にしないでいい。さて、これが通じるかだけど……


「それはもう見切ったよ。……ほら」

「それは……ちょっと予想外だな」

「バレットなら通じないよ。私の目は全部追いつけるから」


ただの瞬き一回だ。その一回の瞬きで、五十発のバレットは全て切られていた。まさか微塵も通じないなんて思わなかったな。だけどまだまだ色々試したいことはあるから……とにかく攻める!


「ならこれはどうかな?《弾丸・反射リフレクト・バレット》!」

「何度やっても全部切る……ってわっ!く、しまった!」

「風魔法を使えばこんな感じに反射させることもできるんだよ」


また、バレット五十発をリリーに叩き込む。けど、リリーはそれをまた切ろうとする。が、しかし。バレットの数発が宙で反射してリリーに当たった。風魔法で高速で銃弾の軌道を変えて反射させる、《弾丸・反射リフレクト・バレット》。……まぁ本当は今思いついたんだけど


「それは少し厄介だけど……もう理解した!」

「やっぱり流石リリーだね。私の予想通り、ほんの数発で理解してくる」

「そろそろ私も攻めなきゃね!」


と言い、リリーはまた速力教科で私の背後にすぐ迫り、私に剣を一発入れようとする。そして私もまた、風魔法で対応しようとする……が。


「っ、フェイク!」

「……あーあ、そこでスカしちゃうかぁ」

「スカしてなんかなくない?ほら、私の髪がこんなに切られちゃった」


リリーのフェイクに気づいた私は、咄嗟に体を動かして髪を身代わりに避けた。今のはかなり危なかったな。リリーに髪を切られたので、私の髪はロングからボブら辺まで短くなっていた。


「でもありがと、動きやすくなったし万が一の時に髪を切る手間が省けた」

「それはどういたしまして、かな?お互い最高の状態で戦えるんだからお礼なんて言わなくてもいいのに」

「私が言いたいから言ってるんだよ、その方がよりリリーに……勝てる!」

「これは、マイの時の……いや違う!」


私はまたリリーに五発の火球をぶつける。リリーがそれを切り裂くと、十五発に分裂して……爆発した。

けど……


「ふー、危なかった。危うく食らうところだったよ」

「あのギリギリで高速移動を……」

「惜しかったね、ローズ。私もあれを受けてたら危なかったけど……一度見た以上はもう通じないよ!」

「やっぱりリリーは私の最も苦手な相手だ……追って、炎鎖!」


寸前のところでリリーは高速移動をして避けた。あの距離で避けられるなんて思ってなかった。そして私はリリーに三つの炎の鎖をぶつける。炎の鎖は地面から突き出て、まるで龍のような動きでリリーに迫っていく。


「これは切れ……っ、はぁ。避けてくるのか……」

「流石にこれならリリーも少しは手こずると思ってね」

「……掴んだ、そこだっ!」


リリーが剣を横に振る。すると、三つの炎の鎖はバラバラになって消えた。言ったそばからこれだ。いやフラグ回収早すぎない?


「お見事だよリリー。私が言ったそばから全部切り伏せるなんてね」

「私の強化魔法は物体にも適応されるんだよね。だから剣の方に速さと強さを強化したんだ」

「そんな事してて魔力は大丈夫なの?」

「もちろん、だって私超適正だから」

「そっか、なら心配はいらないね。……よし、それじゃあもっとあげていくよ!」

「うん!……そう簡単に遅れたりしたらダメだからね、ローズ」

「もう、リリーってば誰に言ってるの?遅れるわけないじゃん。逆にリリーこそそう簡単に遅れないでね!」

「もちろん!私、ローズとならどこまででも飛ばせるから!」

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