第45話 武術大会準決勝第二試合 主人公VS第一王子

例のごとく私達の消耗が激しかったのでまた一時間の休憩を挟み、第二回戦が始まる。ので私はまた観客席に戻っていた。


「先程はお疲れ様でした、ローズ様。お隣、よろしいでしょうか?」

「ありがとう、マイ。うん、いいよ!」


そして私が座ってゆっくりしていると、後ろからマイに声をかけられる。……というか、マイの目元の雫って本当に不思議だな。私と戦った後には普通に戻ってたし。あの時はほんとに消えてたはず……だよね?


「ローズ様は、リリー様とリアン様、どちらの応援をなされるのですか?」

「んー……両方応援したいけど……やっぱり応援するならリリーかな?」

「やっぱりそういうと思ってました。最近のローズ様は随分とリリー様の事を気に入ってるみたいですから」

「あ、やっぱり分かりやすく出ちゃってた?いや、まぁ他にも理由はあるんだけど……」

「他にも理由が?」

「全然話してもいいんだけど……マイ、怒らないで聞いてくれる?」

「え?はい」

「それじゃあ話すんだけど、実は……」


と、それから少しだけマイに以前リリーと勝負して負けたこと、今日勝つためにあえてリリーのわかる技だけを使って戦ってたことを話した。まぁ案の定、途中からマイは驚いていた。怒るかと思ってたんだけど……案外そうでも無いのかな?


「驚きました……まさか私と戦ってた時も手加減されていたなんて」

「あっはは……ごめんごめん、ほんとにリリーに負けたのが悔しかったもので」

「あと……いくらお互いに手を抜いていたとはいえ、ローズ様がリリー様に負けたことも少し驚きです。まぁ……リリー様であれば可能なんでしょうけど」


あれから色々私は自分で勉強して以前よりも強くなった、しもう剣魔法にもある程度は対処出来る。からあとはリリーに勝ち上がってきてもらうだけ……


「あ、そろそろ始まるみたいです」

「あれほんとだ、てっきりまだ10分くらいあるかと思ってたんだけど……」


そんなことを話してたらあっという間に時間になり、またどこかから声が響く。


『さぁ、時間になりましたので準決勝二試合目、始めていきましょう!ということで選手に登場して頂きたいと思います!まずはこの方、持ち前の身体能力にプラスして強化魔法の超適性を持つ超がつくほどの武闘派スタイルで見事Cブロックを勝ち抜き優勝した実力者、リリー・クレスアドル選手!』

「悪いけど、私にはどうしても勝たなきゃ行けない理由があるの。割と本気で行かせてもらうよ」


リリーは闘技場の中心まで来てそう告げる。が、剣は持っていない。確か……魔具の使用はOKだったはず。やっぱりリリーも私と戦う時の為にまだ剣は使わないか。


『相対するはこの方!我らがムース王国第一王子でありこちらも同じく手に水を纏わせて戦う武闘派スタイル!その見事なまでの戦闘スタイルでDブロックを勝ち抜き優勝した実力者!リアン・ムース選手!』

「リリー、何年お前と一緒にいると思ってんだ。俺だってそう簡単には負けねぇからな。上等だよ、全力でかかってこい」


……ん?武闘派?確か私とやった時は普通に遠距離で魔法撃ってきてた気がするけど……まぁ半年もすれば変わるか。


『さぁそれでは選手の準備も整っているみたいですので始めていきましょう!武術大会準決勝、第二試合目……始めてください!』


「あの、ローズ様……二人の動きが早すぎて全く見えません……」

「……いやまぁ、うん。やっぱりそうなるよね。っていうか……ギリギリだけどリアンもリリーに追いつけてるんだ」


はじまりの合図が出された瞬間、リリーはリアンに一発蹴りを入れた。そしてリアンはそれを腕で受け止めるが、反撃する隙がなく受け止める事で精一杯の様子だ。リリーが攻めて、リアンが受ける。合図が出された僅か一秒でそれを三回も繰り返している。


「蹴りはダメか。じゃあ……殴る!」

「ちっ……わかってはいたがまじで攻めれねぇなぁおい!」

「そのまま受けてるだけじゃ私には勝てないよ?」

「相変わらず大層な余裕だなぁリリー……水よ」


「あれは……なるほど。逆にリリーに突っ込ませるのか」

「……あ、ようやく見えました」


リアンは自分の周りに円状の窓のようなもので生成した。確かあれはゲームでも見た事ある。相手の勢いを利用して相手の方向に爆発する技だ。つまり、リリーに突っ込ませて爆発させ、リリーが怯んだ隙に攻めるつもりだろう。……あと、マイも半分より下くらいの魔力を視力強化にあてれば見えるみたいだ。


「……きゃっ!」

「よし、今だ!悪いなリリー、あまり女を殴りたくはないんだが……おらっ!」

「うわっ、思ったより強いな!」


案の定リリーは突っ込んでいき、爆発を受けて怯んだ。そしてリアンは手に水を纏わせてリリーを殴るが、間一髪でリリーに両腕で防がれる。がそれでも衝撃を抑えきれずにぶっ飛ばされ、壁に衝突する。


「痛ったた……ふふ、ちょっと油断しちゃった」

「うっし……水よ!」

「もう同じ手にはひっかからないよ!」

「……何が狙いだ?……うおっ!?」


「ろ、ローズ様!今何が起こったんですか!」

「少し変な話だけど……風圧だよ、風圧」

「風圧……?」

「リリーは、大きく速力を強化してリアンにも見えない速度でリアンの周りを走ったの。それでその風圧でリアンが吹っ飛ばされたんだ。これはリリーだからこそできる芸当だね」

「リリー様も、それを見ることの出来るローズ様も凄いです……」


正直かなりギリギリだった。私も視力強化をしなかったらしっかりと見ることが出来なかっただろう。


「このままやってたら俺が負けるのは明確か……よし、まだ二分とかそこらだが最後に足掻かせてもらうとするか」

「自分に自信あるわけじゃないけど……まぁ二分なら充分持った方じゃない?」

「今までで一番だな。……水よ、我が力を解き放て!水の柱アクア・ピラー!」


もうこの世界に慣れてあまり思わなかったけど……みーんな柱魔法で終わろうとするよね。なんでだろ……それが一番魔力を使って大きな威力を出せる技だからなのかな?


「申し訳ないけど勝ちの寸前だからこそ、慎重に行かせてもらうよ!……跳躍力強化!」

「……おいおいまじかよ……んな事ありなのかよ」

「これでおっしまい。えいっ!」

「ぐ、はぁ……」

「……あ、やっちゃった。まぁ気絶してるだけだし……いっか」


「え、嘘……そんなのあり!?」

「……リリー様と戦わなくて良かったです」

「次ちょっと怖くなってきたな……」


リリーは跳躍力を重く強化して飛び上がり、水の柱の中から抜け出した。そしてリアンの首元にストンっとチョップをしてリアンを気絶させた。てか……え、そんなこと出来るの?っていうかしていいの?柱魔法だよ?リアン曰く最後の足掻きだよ?呆気なくない?……っていうか次私ろくに柱魔法使えないじゃん……


『リアン選手の戦闘不能を確認しました。よって決勝に進出するのはリリー・クレスアドル選手!さぁ、出揃いました!決勝戦で戦ってもらう二人は……ローズ・コフィール選手とリリー・クレスアドル選手!言うなればそう、まさに最強VS最強です!』

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