第44話 武術大会準決勝一試合目 悪役令嬢VS平民

あの後私はすぐ保健室に行った。結論から言うと、両手、頬、目元を火傷したけど何とかなった。マイも魔力を使いすぎで目を覚ますまで一日かかったけど何とかなった。私の決勝の相手はマイに比べたら弱すぎたので全く覚えてない。Bブロック、Cブロック、Dブロックはそれぞれジーク・リリー・リアンが優勝して終わった。そして今はAブロックから五日後、武術大会準決勝だ。


「ジークもローズも頑張ってね!応援してる!」

「うん、ありがとう!リリーも頑張ってね!」

「リリー様、ありがとうございます!」


リリーとジークとそんなやり取りを交わし、私達は闘技場へと向かっていく。にしても、この闘技場回復力がすごいな……マイと戦ってできた数え切れないくらいの焼けた跡だって、他ブロックでついた傷だって僅か一日で回復している。それはさておき……ジークとどう戦おうか。以前より力を出してはいいとはいえリリーに手の内を明かすわけにはいかないからな……


『先日各ブロックで戦っていただいた皆様、お疲れ様でした!それではこれより、武術大会準決勝第一試合を行っていきましょう!』


そして、闘技場に聞き慣れた声が響く。そういえばだけど……この声ってどこから来てるの?一応加工とかされてる感じの少し変わった声にはなってるけど……

とりあえず落ち着いてやろう。私は私らしく勝とう。


『それでは選手に登場して頂きましょう!まずはこの方!その圧倒的な実力で見事Aブロックを勝ち抜き優勝した誰も及ばぬ実力者!ローズ・コフィール選手!』


そう呼ばれて私は闘技場に姿を現すんだけど……この口上の設定とかが全体的に適当な気がするんだよな。

……まぁゲームのそういう設定だから詳しくは触れないようにしておこう。


「今度は手抜いたりはしないよ。お互いに全力で行こう、ジーク!」

『相対するはこの方!まさに幻と言われている光の魔力の保持者であり圧倒的な魔法知識で見事Bブロックを勝ち抜き優勝した魔法知識なら右に出る者はいない男!ジーク・イヴァスチェン選手!』


ジークが私の反対側から出てくる。そして、私の前まで来て私に告げた。


「本気のローズ様と戦えること、光栄に思います。そしてこれはきっと滅多にない機会だと思います。ですので……僕も全力であなたとぶつかって、あなたを負かします」

『さぁさぁそれでは始めて参りましょう!武術大会準決勝一試合目……始めてください!』


合図と共に私もジークも後退する。まずはお互いに様子見。それから攻め始める。……よし、私から!


「炎よ!降り注げ!」

「さすがローズ様ですね、いきなり炎の隕石を振らせてくるとは。ですが……このくらいならば簡単に躱せます!」


私は火球をジーク目掛けて降り注がせる。が、ジークはそれを身体強化の魔法で難なく躱す。……流石に躱されちゃうか。けどまぁ先手を打てたから良しとしよう。


「光よ!飛びかかれ!」

「うおっと……って追尾式なのか。じゃあ空……もついてくるか。しょうがない……」

「今のは……無詠唱ですか」


ジークは光の魔力の球を私目掛けて放ってきた。私はとりあえずで軽く速力強化をして走り回る、が追尾してくるみたいなので飛行魔法を使い宙へと飛び上がる。それでもなお追ってくるので無詠唱で超高速で水の剣を突っ込ませて切り裂く。


「へぇ~、今かなり早く突っ込ませたんだけどそれでも認識できるんだ」

「とはいえ僕もギリギリ認識できるくらいでしたけどね。さてローズ様、これはどうでしょう!……光よ!」

「……消えた?いや、吸い込まれ……っ!?水よ!」


今度は光の魔力の球……魔球を五発放ってきた。そして不思議なことに五発とも私の前で虚空に吸い込まれ、僅か二秒で五発とも全て爆発した。寸前に気づき水魔法で全身を包んだが、衝撃に耐えきれず少しだけ吹っ飛んでしまった。


「今のは割と危なかったかも。いやまぁ吹っ飛ばされちゃったけどっ!」

「くっ、球が見えない!これは……融合魔法、ですか」

「うん、正解!水魔法の勢いに風魔法で速度を上げて更に勢いを増やしてぶつける私独自の融合魔法弾丸バレット。流石にジークでもこれは見えないでしょ?」


リリーと手合わせした時に使った技に、あの後より愛着を持てるように名前をつけた。名前はそのまま安直に、この世界にはなくて私の前世にはあった弾丸を意識して"バレット"にした。そして私はバレットを三十発絶え間なく打ち続ける。流石のジークもバレットは目測できないみたいだ。


「光よ!我が身を守る盾となれ!」

「……それでも全部弾かれちゃうのか。じゃあもう同じ手は通じないな」


ジークは光で全身を包み盾にした。そして残った十四発のバレットは全部光の盾に弾かれて消えた。


「流石にあれはこちらも危なかったです。けど、さすがにもう通じませんよ」

「なら……その盾を貫いてみせるまでだよ!弾丸・IIバレット・セカンド!」


今咄嗟に思いついた、バレットに威力を付け加えるために炎魔法もプラスしたバレット・セカンド。

流石にこれならその光の盾も壊せるはず。これで決めれたら楽なんだけど……?


「そう来るならそうですね……こうしましょう。光よ、雨となれ!」


ジークは手を天に掲げる。すると、光が空へと舞い上がり空に魔法陣を描く。そしてそこから光の魔球が雨のように降り注ぎ、バレットと相殺した。


「いつまでも守って攻め手を繰り返しては埒が開きませんね……よし、一発重たいのいかせてもらいます!はぁぁぁぁ……」

「これは……でも受けるのは流石にまずいか。でもどうしようかな……」


ジークは手に光の魔力を貯めている。これをぷっぱなしてくるのかな。だったらいつもみたいに防御してたらすぐに貫かれそう。なら……よし!私を中心として柱魔法を使おう!


「水よ、我が力の全てを解き放て!」

「自分に柱魔法を……?」


私を中心として地面が円状に窪み、そこからおびただしい量の水が溢れ出して柱の形を為した。どれだけ重い攻撃でも多分これなら軽傷で済ませれるはず。


「はァッ!」


ジークは貯めた光の魔法を片手で私に向けて放つ。

それはもう例えるなら光の魔球というよりかはほんとにただの光線と言った方が正しいだろう。その光線はジュィィィィィィィンと激しい音を立てて地面を焼け焦し、私の水の柱にぶつかってすぅっと消えていった。


「まさか自分に柱魔法を使って盾とするとは思いませんでした。これでもうほぼ僕の勝ち目はない……ですが、そう易々と負けを認める訳には行きません!これが僕の、最後の足掻きです!光よ、溢れだせ!」


これは……以前手合わせした時のやつ!ジークがまた手を天に掲げる。すると、地面がまた揺れて地面からどんどん光の柱が立っていく。……地面は揺れているから身体強化で動こうにもろくに動けない、飛行魔法を使おうにもどんどん柱が増えてどのみち範囲が狭まっていく、と。どれくらいこれが続くか分からないけど……ここは一つ、賭けよう。そう、三発。三発だ。魔法の盾を三重にはることによって三発だけなら受けれる。だから賭けだ。三発で終わったら私の勝ち。四発くらったら私の負け。


「折角の賭け……楽しんで行こうか!水よ、炎よ、風よ!我が身を守る盾となれ!」


私は三つの魔法を全身を包む盾にしてただその場にじっと立っていた。そしてパリン、と音が鳴る。早いな……もう一発もらったか。そしてあっという間にもう一発。そして残り一発というところで、大量の光の柱が消えてきた。が、まだ二、三本程柱が立ってきており、そのうちの一本が当たり私の盾を全て壊した。


「……ふぅ、やっと終わった」

「本気のローズ様と戦えてとても良い経験になりました、ありがとうございました。……僕の負けです」

『ジーク選手から降参発言が確認された為、準決勝一試合目はローズ選手の勝利です!』

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