第43話 武術大会五回戦目 悪役令嬢VS元忌み子

あれから十分の休憩を挟んで三回戦、四回戦はモブ達が戦って終わり、いよいよAブロック準決勝。私の相手は……マイ。マイと戦うのは初めてだけど魔法とかはあらかたしってる。けど、もしかしたら私の予想を軽く超えてくるかもしれない。だから油断はせずに行こう。


「次はローズとマイかぁ。どうなるかな」

「リリーと全力で戦う為にも勝つよ」

「とりあえず頑張ってきて、ローズ」

「うん、ありがとう」


私は飛行魔法で舞台の方にゆるりと降りていく。ちょうど、そのタイミングで声が響き始めた。


『さぁ始めていきましょうAブロック準決勝!まずはこの方!一回戦では鎖のフェイクを作るという頭脳プレイを炸裂させて見事勝ち抜いた魔法も頭脳も飛び抜けて高い聖女!ローズ・コフィール選手!』


やっぱり私の紹介に聖女って言うのは入るんだ……聖女ってどちらかと言えばリリーじゃないかな?

まぁいいや。とりあえずもう気にしないでおこう。

そして私はゆっくりと闘技場の中心へと歩いていく。


「私、一度マイと戦ってみたかったんだ。よろしくね!」

『相対するはこの方!第二回戦ではローズ選手の鎖を真似したり様々な魔法の応用をきかせて戦う少し変わった炎使い!マイ・サヴェリス選手!』


向こうからマイも歩いてくる。……マイ、緊張してるのかな?少し歩き方がぎこちないというかなんというか……


「私は今までずっと。いえ、これからもずっと。あなたに憧れて、追いつけるように沢山頑張ってきました。もしたとえここで負けるとしても……ローズ様、あなたが変えてくれた"私"を、言葉で表せれないほどの感謝を……全身全霊でお見せ致します!」


マイは私にそう告げる。そして、マイの目は覚悟が決まったものになっていた。なんて言えばいいんだろうか、こう……ものすごい感慨深いものがある。

ならばマイがそうするように、私も……全力で楽しむ。全力で……私が変えたマイの姿を見る!


『武術大会Aブロック準決勝一試合目……始めてください!』

「水よ!」


合図と同時、私は高速で後ずさり、二十発程の水玉で先制攻撃をしかける。


「炎よ!薙ぎ払え!」


マイは炎の剣で二十発の水玉全てを切り裂いた。流石に水玉くらいならもう見切られるか。ずっと私が愛用してる魔法だしね。


「っ、いや違う!水よ!」

「流石ローズ様ですね、瞬時にあれをフェイクと見極めるなんて」

「……へぇ、マイってそんな事も出来たんだ」


マイが出した炎の剣は、水玉を全て切り裂いた……後に私に突っ込んできた。私は慌てて水の壁を作ってその剣を防ぐ。


「私だってただローズ様の真似をしているだけではないんですよ?ちゃんと私独自の魔法の応用とかもあります」

「度々思ってたんだけどさ、マイって本当に魔力の使い方とかが上手だよね」

「そう言って貰えて嬉しいです……炎よ!纏わりついて!」

「……これは?」


今度は火球を出してきた……のだが、私の知ってる火球とは違う。普段ならそのまま突っ込んで焼き尽くす……的な感じのやつだったんだけど、今マイが出てきたやつは私の周りをずっとうろうろしてる。……あぁ、そういうことか。普段から語彙力ないんだけど……もう本当にすごいしか言えないよ


「水よ、私を包んで!」

「もう気づかれてしまいましたか。……爆ぜろ!」

「うわっと……あれを直に浴びてたら流石の私もちょっとまずかったかもな」


マイの合図で私の周りをうろついていた三つの火球が爆発する。咄嗟に水で全身を包んだから大したダメージは無いけど……流石にあの爆発を直で食らっていたら大きなダメージになっていただろう。というか現に少しだけ頭から血が出てきたし


「少し卑怯にはなりますが……ローズ様相手だとこうでもしないと勝てないので」

「全然卑怯じゃないと思うけどな。炎魔法を応用して爆発を多用することなんてそう簡単に出来ることじゃないし」

「ありがとうございます、ローズ様。それでは一切躊躇なくいかせてもらいます……炎よ、咲け!」


これは……先程マイがイリアに対して使っていた技か。確かイリアは雷で防いでいたよね。なら私は……


「風よ!切り裂いて!」

「そう来ると思いました……はぁっ!」

「そろそろマイも本気出してきたかな?水よ!」


黒い炎の花は全て切り裂かれ、無数の爆発が起こり私の視界が煙で塞がれる。そして視界が開けてきた瞬間に大きな火球が私の目の前に迫ってきていた。ので私は急いで地面から小さな水の柱を溢れさせ、火球を切り裂いた。


「私は最初から本気です……よっ!」

「……分裂してくるタイプのやつね。水と風よ!」

「先程見せましたし、まぁさすがに防がれますよね……っ!?」

「マイ、油断したね?普段私が使ってなかっただけでこういう使い方もできるの!」


マイは再び私に三つの火球をぶつけてくる。そしてまた同じように私は水魔法で火球を切り裂いた……が、火球はより小さくなって九つに別れる。これもイリアの時に使ってた技だから対処は難なくできる。ついでに少し鎌鼬の範囲を広げてマイに攻撃する。鎌鼬はマイの頬を掠めて、マイの頬から少し血が流れる


「凄いですねローズ様……全く斬撃が見えませんでした」

「私自身もあんまり見えてないんだよね。実は……炎よ!」

「これは……私の倍ですか。流石ですね、ローズ様……」


私はマイに六発の火球をぶつける。マイと同じ、分裂する火球だ。そして案の定マイはその火球を火の斧で切り裂く。すると火球はより小さくなり十八個に分裂した。そしてそのいくつかがマイに当たった。


「あっと……大丈夫?マイ」

「私の心配は大丈夫です、ローズ様。少々火傷はしましたが……すぐ直ると思いますので」

「マイがそう言うなら良かったんだけど……やり過ぎちゃったらごめんね」

「はぁ……やっぱりローズ様には敵いませんね。でも、私だってこれで終わりじゃありません!ローズ様、これが私の全身全霊です!」

「すぅぅぅ……闇よ。炎よ。我が魔力の全てを今、解き放て!」


えっと……なんだこれ?多分柱魔法なんだけど……私が知ってるものとは格段にレベルが違う!マイの魔力の余波だけで地面が激しく揺れて……立ってるのが難しい!


「な、なにこれ!?ってそうじゃなくて、だいぶやばい!……熱っ。嘘、ただの魔力の余波で手を火傷するなんて……」


マイの目元の雫が今までにないくらい強く光った後、すうっと消えた。……あの雫の魔力を取り込んだのか。確かあれは闇の魔力が溜まっているって設定だったはずだから……威力も物凄いものになるよね。多分ノーガードで食らったら絶対死ぬ気がする!


「水よ、我が力を以て我を守りたまえ!」

「闇炎ノ柱ダークフレイムピラー」


私は水の柱を極限まで丸くして私を包み込む盾にした。そしてマイが唱えた僅か一秒後。私の足元が燃え始め、雲をも貫く大きな黒い炎の柱に私は包まれた。

く……この水の盾をもってしても割と厳しいか!

手が、頬が、とてつもなく熱い。


「はぁ……はぁ……」

「……何とか耐えきったって、マイ!」


五秒ほどして柱は消えた。そして私の視界には倒れてるマイがうつった。……いや、まさかここまでマイが強かったなんて思ってなかった。さすがにあれは無茶しすぎだけど。とりあえずこれで……私の勝ちだ。


『マイ選手が戦闘不能の為、Aブロック準決勝第一試合はローズ選手の勝利!また両選手とも負傷が酷いため三十分の休憩を挟みます。マイ選手は直ちに搬送を、ローズ選手は後ほど保健室まで来てください』

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