第36話 悪役令嬢達の夏休み ~海~ その二
とりあえず大きな被害とかがなくてよかった。……ただちょっと前世で物凄く苦戦した為にどこか呆気ない気もするけど……まいっか。
そして、私が浜辺に戻った時にはリアンもラーベルも戻ってきていた。
「かっこよかったです!ローズ様!」
「流石ローズだね。まさか注意を引くって言ってそのまま足を切り落とすなんて」
「……にしても、なんで急に?」
「それに関してはなんもわかんねぇ。俺らが泳いでたら急に出てきやがった」
「私も兄様も何もませんでしたし、その足も見えませんでした。なので本当に急に現れたと言ったところでしょう」
前世で色んなゲームをプレイして、何回も色んなゲームのクラーケンを倒してきたけど、このゲームのクラーケンに関してはなんで現れたとかの情報がほんっとに一切ない。ファンブックにも攻略情報しか乗ってなかった。
「色々不思議ですわね……あのクラーケンがどうやって現れたのか。それと海は一切変わりないことも」
「まぁ……特に海に変わりはないみたいだし、引き続き遊ぼっか!何かあったら私達がなんとかするし」
これはゲームだ。そしてあのクラーケンはリリーと攻略対象との仲を深めるためのちょっと強いモブ的なやつ。折角クラーケンを倒してもそれで海が立ち入り禁止になってしまったら制作段階の運営からしても都合が悪い……つまり、この後海が立ち入り禁止になることはない!なのでもうこのまま遊んでしまおう!ゲームで本当に海に変わりがないことは知っている。そして恐らくこの後は何も出てこない!けど……
「……ちょっとその前にお昼にしない?お腹すいちゃった」
「私は賛成です!私も少しお腹がすきました!」
「まぁそうするか。俺も腹減っちまったしな」
って事でまずお昼を食べることにした。
皆で近くにあったベンチに座って弁当を食べる……なんか似たようなことを前世で経験した気がする!
「……ローズ、あーん」
「え、リリー!?」
急にリリーが私にあーんしてきたから驚いてしまった。……普通そういうのってカップルとかがやるものなんじゃ?……やっぱり変だな。驚いている反面、どこか嬉しくなってしまってる自分もいる。
「ふふっ、ちょっとからかってみただけ。そんな驚かなくてもよくない?」
「急にそんな事言われたら驚くって!」
「ごめんごめん。この卵、凄い美味しいからローズにも食べてもらいたくてさ」
「……だったら普通に言ってくれればいいのに……あーん」
「あ、でも食べるんだ」
「それは……折角リリーがくれるんだし、まぁ、ね?……美味しい」
「そう言って貰えて嬉しいよ。……あとごめんマイ。ずっと視線が痛い……」
「リリー様だけずるいです」
マイの方を見ると、幼い子供みたいに頬をぷっくらさせてリリーをずっと見ていた。……んー可愛い。超絶可愛い。
「ごめんローズ、何とかしてくれない?」
「んー……じゃあマイには私からあげよっか」
「え、いいんですか!?」
「うん、いいよ。ちょっとこっち来て、マイ」
私がそう言うとマイは目を輝かせてこっちに来る。……ねぇもうほんとに可愛いじゃんこの子。日に日に私の中でマイ=妹の認識になってきちゃってるんだよなぁ。扱いはさておきマイ・コフィールでも良かったんじゃないかな運営さん
「じゃあ……このタコさんウインナーあげる。はい、あーん」
「あーん…………はい!ものすごい美味しいです!ありがとうございますローズ様!」
繰り返し言うがこのゲームはほんとにリアル要素が強めなので普通にウィンナーとかも存在している。そして私は料理がものすごい得意なのでお母様に報告さえすれば弁当なども自分で作れる。ちなみにこの四年で料理を教えていたので最初は料理が苦手だったマイも今ではハマっているみたいだ。
……そしてそれから少しして、みんなで弁当を食べ終えてまた遊びを再開することにした。
「丁度お昼食べ終わったら皆さんでビーチバレーをしたいと思い、ボール持ってきたんです」
「ビーチバレーってなんだ?」
「ビーチ……バレー?」
「とは一体?」
「リリー、わかる?」
「うん、わかる」
「じゃあ私とリリーが実践するよ。コートは適当に線引いて……ネットは私がそれっぽいの作るから」
「お二人は知ってるんですね、ビーチバレー」
「うん。昔やった事があるんだ」
「私も昔遠い友人とやった事があるの!」
あー……確かこの世界だとビーチバレーって平民がよくやるスポーツで知ってる貴族はなかなかいないって設定だったっけ。とりあえずみんなだし説明したらすぐわかってくれそうな気がするな。
「さ、用意できたね。それじゃあローズ、私から行かせてもらうよ!」
「うん!」
という感じでリリーと軽くやりながらビーチバレーについて説明した。そして私の予想通り、みんなすんなり理解してくれた。ジークの提案で6人でやることになり、チーム分けは私・マイ・イリア、リリー・リアン・ラーベルになった。ジークは審判をやってくれる。
「それじゃあラーベル様からのサーブで、初め!」
「確かさっきリリーがやっていたのはこんな感じでしたよ……ねっ!」
「凄いよラーベル様!さっきのリリーのサーブを見ただけでもう覚えたなんて!」
あわあわしてたマイの手にあたり、上手いことトスになったので私がレシーブして相手に返す。というのを軽く繰り返し、残り一点でリリー達の勝ちになるところまで来た。……やってて分かったけど、この世界のビーチバレーって前世のルールとはまた結構違うんだな。
「さ、残り一点!本気出していくよ!……えいっ!」
「どんとこいだよ!」
リリーのサーブ。やっててわかったけど流石にまだ経験が浅い二人だとリリーのサーブは受けれない。のでここは私が取るしかない。
「イリア!」
「はいですわ!」
多少腕と足に強化魔法をかけて、リリーのサーブをトスしてイリアに渡す。そしてイリアがレシーブしてボールをあげる。
「二人とも、来るよ!」
「……えいっ!」
そうして私がアタックをする、がリリーに防がれてしまった。そうして私・リリーがアタックしてそれをまた私・リリーが防いでを繰り返し、数分が経った。
「えいっ!」
「……うぉりゃっ!」
「ナイスリアン!よし、これで決めるよ!……はあぁっ!」
と、リアンが受け切り負けたと思った瞬間。ボールがパシュンっと破裂した。
「……あ、やっちゃった」
「えーっとこれは…………ローズ様達の勝ちで」
「リリー、お前強化魔法使ったな?お前の場合超適正なんだからボールなんざ少し強化したら破裂するに決まってんだろ……」
「ごめんリアン……勝ちのチャンスが見えたからちょっと興奮しちゃって」
「やっぱりリリー様って凄いですね……」
「なんか勝ったのに変な気分ですわ……」
「ま、楽しめたから私はいいや。けどもし次やることになったら次はちゃんと勝つからね!」
「うん!けど、次も私が勝つから!」
ビーチバレーに熱中しすぎて、もう日は沈む寸前だった。
「もうこんな時間か。……それじゃあそろそろ帰りましょうか」
「うん、そうだね。もう日が暮れちゃうよ」
「凄い楽しめたよ。ジーク、誘ってくれてありがと!」
「いえ、皆様にも楽しんでもらえたようで何よりです!」
「またみんなでどこか行きたいですわね!」
「そうですね!私もすごい楽しかったですし!」
「あぁ……それならよ、確か八月に夏祭りがあったはずだからそれ行こうぜ」
「夏祭り……いいですね!ぜひ行きましょう!」
夏祭りの約束を結び、私達は別れて帰っていった。
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