第35話 悪役令嬢達の夏休み ~海~
「うーーーみだーーーっ!!!」
「綺麗……」
砂浜に立ってそう叫ぶリリーの先には、言葉では表し難いくらいに美しく透き通ったエメラルドグリーンの海が広がっていた。……今更過ぎるかもだけどどうしよう。私泳げないんだけど?……まぁ多分きっとなんとかなると思い、走っていったリリーの方へ歩いていく。ついでに一瞬で着替えも済ませる。
「これが海、ですか……様々な本や物語に度々出てくるので認知はしてましたけど……こんなに美しかったなんて」
「あれ、マイって海は初めてなんだ」
「はい、行きたいとは思ってましたけどなかなか行けなくて。……あとローズ様、その水着ものすごい似合ってますよ」
「ふふ、ありがと。マイもものすごい似合ってるよ!……まぁ柄違いなだけなんだけど」
やっぱり思ってたとおり、破壊力が強すぎる。ビジュアルの核兵器か何かだと思うほんとに。とにかく可愛い。あとマイに紫陽花ってめっちゃ似合うね!!
「ローズ!どう?似合ってる?」
「うん!リリーもイリアも凄い似合ってる!」
いざこうして見てみると全員共通して花柄の水着なんだなぁ。私は薔薇、イリアはカーネーション、マイは紫陽花、イリアは百合。イリアとリリーは普通にビキニなのでちょっと胸が……ってあれ、ところで男子メンは?
「あれ、リアン達は?」
「リアン達ならあそこにいるよ」
とリリーが指を指す方に目を向けると……
「はっ!おせぇなラーベル!」
「それはもちろん兄様は水魔法が使えますからね!」
「お二人ともお早いですね~!」
「……あれは一体?というかいつの間に?」
「わかんない。なんかラーベルと泳ぎで勝負してるんだってさ。私達がゆっくり歩いてる間に先に走って飛び込んでっちゃった」
全力で泳いでるリアンとラーベル、それに目を輝かせてずっと感心してるジーク。……あれぇ?こんなこと言ったらあれだけどリアンはともかくあの二人ってあんなバカっぽかったっけ…………男のプライド?って奴なのかな
「……ひゃっ!冷たい!」
「でも意外と気持ちいいですわよ、マイ。さぁ、マイもこっちに」
「……じゃあ、いちにのさんでいきますよ。いち、にの、さんっ!」
「きゃっ、まさか飛び込むなんて……でもほら、とても気持ちいいでしょう?」
「ちょっと冷たいですけど……ですね!ひんやりしてて気持ちいいです!」
いやぁぁ~眼福眼福。ふたりが仲良くわちゃわちゃしてるのを見る機会なんて滅多にないから凄い尊い。本当に溶けちゃいそう。まぁ……私はそんなみんなの様子を眺めながらずっと砂のお城を作ることしか出来ないけど。
「リリー、行かなくてもいいの?」
「うん。今のローズはいつにも増して可愛いから……私がローズの傍でローズをナンパから守らないといけないし」
「全然大……ううん、いいや。ありがとう、リリー」
「ところで……そういうローズこそ混ざらないの?」
「恥ずかしいことに、私って泳ぐの苦手だからさ……」
「そっか。だったら浅瀬でもいいから行こうよ!とっても楽しいよ?ほら、マイとイリアも浅瀬だし」
「じゃあ……ってわっ!ちょっとリリー!」
私はリリーに腕を引っ張られて浅瀬の方まで行く。……なんでだろう、いつもならナンパとかと思って怖いのにリリーに腕を引っ張られてる時はなんだか少し温かい気持ちになる。……本当になんでだろう。
「……冷たっ」
「まぁまぁ時期になれるって!さ、何しよ……」
「皆さん!大変です!」
私達が話していると、ジークが慌ててこっちに来てそう言う。次の瞬間、バシャーーーンと海の奥の方から大きな水柱を立てて物凄く大きなイカが出てきた。
「な、何あれ!?」
「あれは……クラーケン?」
「恐らくはそうでしょう。あと僕が見た限りだとクラーケンの中でもかなりの実力を持ってます」
……そうだ思い出した。ローズ様が一切出てこないシーンで出てきたな、このクラーケン。まぁ丁寧にローズ様変わりのボス枠にまでなるほどの実力もちゃんとありますよと。だから少し不安だったのか。にしてもどうしようか……ここは海だ。小さな子供とかも沢山いる。ならばなるべく被害を抑えつつ威力を抑えて倒す必要がある。……いや、ちょうどよく周りの被害を無くせる方法があった。
「実力を考えても……私達でなんとかするしか」
「……私があいつを引きつけるよ。その間に、リリー達は海から皆を出して。ラーベル達にもそう伝えてくれるかな」
「はい、わかりました!」
弱点はもうとっくに知っている。そう、私は前世で何時間もこいつと戦ってきているから。私が単にゲーム下手なだけなのか、それともこいつが強すぎるだけなのかほんっっとになかなかこいつが倒せなかった。なので攻撃パターンや弱点はもう把握している。
「……水よ!」
飛行魔法でクラーケンに接近し、いつも通りに水槍を出して、それをクラーケンにぶつける。すると、予想通りクラーケンの注意は私に引いた。そして直ぐにクラーケンは私に足をぶつけようとしてくる。
「風よ、切り刻め!」
……あれ?こいつってこんな弱かったっけ。いくら普通詠唱とはいえ風魔法で簡単に足を切り落とせるなんて思わなかったんだけど?足を切られたクラーケンは怯んだのか、ほんの数秒動かなくなった。
「ローズナイス!数秒のおかげでだいぶ人を海辺まで連れてこれたよ!」
「おっけい!それじゃあぱぱっと決めちゃうね!」
私は雷の指輪を取りだし、指にはめる。
……多分雷の槍とかなら確実にやれると思う。
「雷よ、槍となれ!!」
ジークから学んだ詠唱の応用。武器に変えて利用する場合は、その攻撃する武器になるように命令すると魔力がその武器の形全てに集中する。それを早速実践してみることにする。
私の手に雷の槍が現れ、それをクラーケン目掛けて投げる。
「グァァァァァァ……」
「……思ったより呆気なかったな。多分私がローズ様だからなんだろうけど……」
……ま、いっか。とりあえずこれでまた海を楽しめる
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