第33話 悪役令嬢達の学校案内

それから放課後になり、私とリリーとジークは学校を歩いていた。まずはグラウンドについて説明するため、私達は外に来ていた。


「まずはここがグラウンドだよ。ここで授業の実技試験だったり、魔物との戦闘訓練だったりをするんだ」

「見て、あそこ。的があるでしょ?」

「なるほど、あれに魔法を当てるんですね!」

「そうそう!大体こんな感じでね」


と、私は水玉を指先に浮かべ、軽く的に向けて放つ。普段ノープ先生が硬化してるけど的自体は凄くやわいのでローズ様レベルだとほんの少しの力で壊れてしまう。


「おぉ……って壊れちゃいましたよ?」

「大丈夫大丈夫、私達なら直せるから」

「ちょっと時間はかかっちゃうけどね」


リリーがそう言った頃には、リリーは的の前にいて魔法で的を直していた。


「ってあれ?リリー様、一体いつからそこに」

「ん?あぁ、今だよ。早いこと直さないといけないし」

「リリー様、もしかして転移魔法が?」

「違うよ?私、転移魔法はおろか飛行魔法もろくに使えないし」

「ジーク、魔法の適正って聞いた事ある?」

「あ、はい。基本人は皆適正で不適正も超適性も滅多に居ないんですよね、確か」

「流石だね。で、リリーはその滅多にいない身体魔法の超適性者って事なんだよね」

「お父様が言うには超適性の一個上らしいけどね。私は、身体強化の魔法は他の人より三倍の効果があるの。だから私が身体強化で速力をあげればまるで転移したように見える、って訳」

「凄いですリリー様!まさか魔法の超適性者だったなんて!」

「ありがとう、ジーク。ところで、その魔法知識とか、超適性に興味を持ってたりとか……ジークってもしかしてだけど魔法学者とか目指してるの?」

「あ、はい。よくわかりましたね。まだ幼い時から魔法について調べたり研究したりするのがたまらなく大好きだったもので」

「魔法学者……いいじゃん!ジークに似合いそうだし、何より好きな事を夢にして追っていくのは物凄いいい事だよ!」

「ありがとうございます……本当に優しいですね、お二方は。ここに来るまで周りの人間からは夢を笑われてきたり、光の魔力が原因で蔑まれてきたりしたものですから」

「夢を……全く酷い話だよね、人の夢を笑ったりちょっと異質だからって蔑んだりして。夢を笑ったり、すぐ蔑んだりして何が楽しいんだろ」

「そうそう、ローズの言う通りだよ。……あと、安心してね、ジーク。私達はあなたの夢を笑ったりしないし、応援してるから」


私はわかる。夢を笑われることがどれくらい悔しくて、辛い事なのか。私も中学時代、嫌になるほど夢を笑われた。紗蘭に出会うまで誰にも理解されなかった。

だからその辛さはわかるし、聞いてて少しイラッとくる。


「……はい、ありがとうございます!」

「よし、じゃあ次は……校内だね!」

「はい!」


再び靴を履き替えて、私達は校舎の中へと入っていく。そして、一番最初にフラスコやビーカーが置かれた前世で言うところの理科室のような部屋に着いた。


「まずここ!ここは薬学室っていって、主に魔法薬学に関して実験したりする場所だよ!」

「おぉ、魔法薬学!」

「まぁ多分使うのは当分先になりそうだけど……」


魔法薬学は多少危険な為、ある程度月日が経ち、生徒と教師共に深い信頼がなくてはならない。とかいう謎ルールのせいでまだあと入るのに三ヶ月くらいかかる部屋。いやまぁ……魔法薬って凄い変なの多いから。ほぼ高確率で精神がどうにかしたりするわけだし


「ここから近いところだと……あぁ、あそこがあったね。よし、次!」


薬学室の目の前にある階段をのぼり、二階に行く。すると、図書館に着く。……ここも利用したことないんだけど


「ここは図書館だよ!詠唱について記載されたのや魔物について記載された図鑑とか、色々なものがあるよ!私達一年生は主に放課後の利用が可能だね」

「ほんとに幅広いジャンルの色んな本があるから、ジークにはかなりいい場所になると思うよ」

「ありがとうございます!また、時間がある時とかに勉強したいと思います!」

「うんうん、その心意気だよ。頑張れ!」

「リリー、あと何か大事なとこあったっけ?」

「まだ全然あるじゃん……まぁいいや、次は私が案内するね、ついてきて」


と、私のかわりにリリーが案内してくれて保健室や各移動教室の場所だとか全部を教えてくれた。

そしてあっという間に最後の場所になった。


「じゃーん!かなり広いでしょ!」

「凄い広いですね……ここは?」

「ここは闘技場だよ。体育の一環でここを使う授業をやったり、九月にある武術大会はここで行われるんだ。あと、校内での喧嘩を防ぐために生徒間どうしで自由に利用していいんだ。その変わり、魔法の打ち合いとかになる喧嘩は絶対ここでしなきゃ行けないってルールもあるけどね」

「……ジーク、光の魔法が使えるんだよね。魔法は得意?」

「え?まぁはい、それなりには得意ですけど」

「だったら一回私と勝負しようよ!大丈夫、ちゃんと手は抜くから。まぁもっとも本気を出さざるを得ないくらいの強さだったら本気で行くけど……どう?」

「もっと自分の魔法を深めるためにも……ローズ様との勝負、受けさせてもらいます」

「いいよね?リリー」

「まぁローズが手を抜くなら、いいよ。じゃあ私が合図するから」


一回ジーク戦ってみたかったんだよね~!本来のゲームで一度もジークは魔法を行使する場面がなかったから初見だけど……ある程度は強いのは知ってるから。


「それじゃあ用意……」

「始め!」


リリーの合図で私とジークは動き出す。ちなみにリリーは速攻で脚力を強化して観客席の方まで飛んでった。最初はジークも様子見かな?じゃあちょっと私も軽めに……


「炎よ!」

「光よ、覆い隠せ!」


まず最初に軽く火球を二個ほど出してジークにぶつける。すると、ジークの手から光る球体が浮かび上がり、火球を覆い隠した。……流石魔法学者志望。変わった詠唱を使ってくる。


「光よ!降り注げ!」

「光の雨!?うわっと!」


ジークの頭上に巨大な球体状の光が現れ、私を追尾するように光線を放ってくる。……これは多分私が思ってたよりヤバいかも!


「水よ、打ち砕け!」

「流石の強さですね、ローズ様。まさかあれを全部避け切るとは」

「ちょっと頬をかすめる程度に……はあぁっ!」


困った時は大抵これ使えば何とかなる。そう、水槍。

負けの条件は相手を降参させることのみなので、軽く頬を掠めるくらいで放つ。


「光よ、盾となれ!」

「え嘘っ!?」


ジークを守るように光が彼を包み込む。その光に触れた水槍は、突き刺さりやがて真下に落ちていった。


「凄いよジーク!私の水槍を完全に防いだのは君で初めてだよ!」

「お褒めに預かり光栄ですローズ様!ちょっと次は一発……どでかいのいきますよ!……光よ!溢れ出したまえ!」

「……これは流石に逃げるしか!」


ジークがそう唱えた途端、闘技場の地面から次々に光の柱が溢れ出しては消えてを繰り返している。いやまぁ多分本気出したら何とかなるかもしれないけど……手を抜いていたとはいえ私よりも強いなんて。


「……まさか手を抜いていた状態でも完全に避け切るとは。僕の負けです。お強いですね、ローズ様」

「ジークも本当強かったよ!やっぱり魔法学の知識が深いだけあって色んな応用ができるんだね!」

「はい、魔法の応用とかも得意でして。意外と簡単に出来ますから」

「あ、そうだ。……リリーは?」

「こ・こ♪」

「きゃぁぁっ!?ちょっとリリー!脅かさないでよ!」

「ローズったら、本当にお化けダメなんだ。……にしても、ジークもローズも本当に凄かったよ!これなら学年でもかなり良い成績の方に行けるんじゃない?」

「リリー様からもそう言って貰えて嬉しいです」

「あぁ!そろそろ帰らないと!もう下校の時間だじゃん!ごめん二人とも!」

「大丈夫ですよ!今からでも急げば間に合いますから!」

「ふふ、急げ急げー!」

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