第32話 悪役令嬢と三人目の攻略対象

あれからまた二週間くらい経った五月の終わり頃。

相変わらずみんなで登校してる最中の出来事だった。


「……ここが僕の新しい場所!凄い大きいし……ワクワクするなぁ!」

「おや?彼はあまり見ない顔ですね。転校生ですかね?」

「……完全に忘れてた」


ちょっと先へ視線を向けると、黄緑色の七三分けの髪型をした男が立っていた。

……そうだ思い出した。ここで三人目の攻略対象が出てくるんだった。本来だと転校生っていう他より少し遅めなわりにイベント多くてどこか優遇されてる枠なのは覚えてる。


「それじゃあ早く先生に~……ってわっ!」

「大丈夫か?アイツ転びそうになってるが」

「助けるに決まってるよ……風よ!」


彼が転びそうになる。その寸前で私は風魔法で彼が転ぶのを防ぐ。ルートを変えたとはいえ、ある程度は関わってないと進行しないかもしれないからね。


「あの、大丈夫ですか?」

「……ありがとうございました!お陰様で僕は全然大丈夫です!」

「なら良かったです。気をつけてくださいね。最近はどこか滑りやすくて転びやすいですから」

「はい!貴方もお気を付けて!」


なんだっけ。名前は忘れたけど……確か彼が平民だったのは覚えてる。平民がどーだこーだっていじめられるんじゃなかったっけ?くっだらない。


「ものすごい元気な方でしたね……」

「それにしても、さすがですわローズ!サラッと見ず知らずの人を助けるなんて!」

「まぁ……転んだら絶対痛いだろうしね。さ、私達も行こっか」


と、私達はいつも通り席に座って話したりして、ノープ先生が来るのを待っていた。やがて、ガララっと教室のドアが開き、先生が入ってくる。


「はぁい、皆さんおはようございまぁす」

「おはようございます」

「今日も元気があっていいですねぇ。今日は皆さんに転校生を紹介しまぁす。皆さんで仲良くしてくださいねぇ。さ、どうぞぉ」


先生がそう言うと、先程見たばっかの黄緑色の七三分けの髪をした男が入ってきた。


「どうも皆さん初めまして!僕はジーク・レヴァスチェンといいます!よろしくお願いします!」


あぁ思い出した思い出した!そうだジークだジーク。

彼は光の魔法の使い手で、その優秀さから平民だけどこの学校への入学を許可された特別な存在?だ。


「あれ?マイの瞳の雫、光ってない?」

「あ、ほんとですね……でもどうして急に?」


マイの瞳の雫が強く光りだした。おそらく、彼の光の魔力に反応したんだろう。闇の魔力は光の魔力に反応する性質がある。その為、微量に彼女の体に混じっている闇の魔力が反応した。


「ジークさんはそうですねぇ……イリアさんの後ろの席に座ってくださぁい」

「はい!わかりました!」


と、ジークは席に座り、そのまま朝礼は終わった。

そして休み時間に私達が集まっていると……


「まさか同じクラスだったんですね!今朝はありがとうございました!改めまして僕はジーク・レヴァスチェンです。あなた達は?」


ジークがとても元気そうに私達の方へ来る。にしても……かなり爽やかだなぁ。そう考えると闇の魔力って彼には合わない気がするんだけど?


「私はローズ・コフィール!怪我がなくて良かったよ!」

「私はリリー・クレスアドルだよ。これからよろしくね!」

「私はイリア・ミシェンスですわ!これからどうぞよろしくお願いします!」

「ラーベル・ムースです。どうぞよろしく」

「俺はコイツの兄、リアン・ムースだ!よろしく頼むぜ!」

「マイ・サヴェリスです。よろしくお願いします」

「ローズ様にリリー様、イリア様にマイ様、ラーベル様にリアン様ですね!覚えました!……あ!そういえばそうだった!マイ様ってもしかして闇の魔力をお持ちで?」


確かファンブックに書いてあったことだがジークは物凄く物覚えが良いらしい。だから初対面でも六人の名前をすんなりと覚えることが出来る。……羨ましい。それと真面目な性格なのでちゃんと魔法学はある程度身につけてきている。


「えっと、はい……この瞳の雫が闇の魔力の塊らしいです」

「なるほど、だからさっき光ってた……というか今も光ってるんですね。実は僕、光の魔法が使えるからって理由で急にここに入ることになった平民なんですよ」

「おぉ!光の魔法か!そいつぁすげぇな!」

「そういえば闇の魔力は光の魔力に反応するって聞いた事あるかも!」

「マイ様、体調とかにお変わりはありませんか?」

「え?あ、はい……大量とかでは無いので特には」

「なら良かったです!光の魔力は闇の魔力を持つ者の体に大きな影響を与えると学びましたので」

「心配してくれてありがとうございます。お優しい方なのですね」

「いえいえ、優しいのは皆様の方ですよ。平民の自分に対して優しく接してくださって」

「私は平民とか貴族とか関係ないと思ってるもん。だって同じ人間なんだし、クラスメイトなんだからさ」


事実私は一度も貴族や平民の違いなんて考えたことは無い。というか私はバカだからいまいち何がそんなに違うのかがわかってない。


「そう言って貰えて嬉しいです。ありがとうございます、ローズ様」

「……あ、そうだ!折角なら放課後、私が案内してあげよっか?」

「え、いいのですか?」

「うん!いいよ!」

「じゃあ私も一緒していいかな?」

「私はいいけど……いいかな、ジーク」

「もちろんです!ありがとうございます、ローズ様、リリー様!」

「どういたしまして!ってあ!もう授業始まるよ!」

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