第27話 悪役令嬢と主人公の二人きりデート 終

リリーについて行って、私は公園のような場所に来た。……今更ながら公園もすごいリアルだなぁ。ブランコに、シーソーに、滑り台……前世でもよく見かけた公園だ。


「さ、着いたよ!ここのベンチから見る花火ってとても綺麗なんだよね~!」

「そうなんだ!」

「うん!以前リアンが教えてくれたんだ!それですっごい綺麗だったの!」

「リアンも以前ここで見た事があるのかな?」

「ムース王って本当に花火が好きで、一回リアン達を連れてここに来たんだって!」

「……そういえばだけど、リリーって婚約してるの?」

「うん、してるよ。と言ってもまぁ仮なんだけどね」

「……仮?」

「うん、仮。私の意見で、お互い本当に心から好きな人が出来たら婚約は解消するって話になってるんだ」

「……リリーは、いる?心から好きな人……もしくは好きになれそうな人」

「心から好きな人は居ないけど……心から好きになれそうな人ならいるよ」

「あ、いるんだ。それって誰?」

「んー……内緒で!またその時が来たら話すよ。……ってあ、ローズ。花火が始まるよ」


リリーがそう言ったあと、ヒュ~~という音と共に、打ち上げられた花火玉が空へと登っていき、バァンと破裂して綺麗な花火が浮かび上がる。

……そういえば、長らく花火は見てなかったな。最後に見たのも確か紗蘭とだったし。でも……この世界の花火も、物凄い綺麗……


「凄い……綺麗……!」

「でしょ?この街の花火は、花火玉の中に目立たないように炎魔法を仕組んでいて、花火がよりくっきりと空に浮かび上がるようにしてるんだって!」

「炎魔法ってそんな使い方できたんだ……ん?花火玉の中に入れるなら途中で爆発しない?」

「そこは……どうしてるんだろう」

「ま、いっか!だってこんなにも綺麗なんだし!」

「そうだね!せっかく綺麗な花火があるんだからいっぱい花火を楽しもっか!」

「うん、そうだね!」

「今度はイリアやマイとも一緒に見たいな!」

「また次やる時は皆誘おっか!」

「ありがとう!……そろそろ冷めたかな?」

「あはは……そういえばまだ唐揚げ持ってたんだ」

「だって本当に美味しいんだもん」


なんでだろう。リリーと一緒にいるこの時間が凄い楽しくて、凄い早く感じる。それからずっと、ずっとドキドキしてる。なんだろう、この気持ち。……まだ、わかりそうにないから最推しが凄い近いからってことにしておこう、うん。


「……楽しいね、ローズ」

「うん、凄い楽しい。さっきは祭り苦手って言ってたけど……リリーや皆と行く祭りは大好きかも」

「ふふ、そっか。そう言って貰えて嬉しいよ。私で良ければいつでも行くからね」

「私の方こそ、誘ってくれればいつでも行くよ」

「ありがとう!じゃあ、これからもいっぱい色んな祭りに行こうね」

「うん、約束」


後ろの花火や今宵の満月も相まって、リリーの髪や顔が物凄い美しく見えた。……いやいつも美しいんだけど。


「……え、リリー?」

「あ、ごめん。綺麗だなって思ってたら手が勝手に動いちゃった」

「……そっ、か。じゃあ……リリーの髪も触らせて?」

「え?う、うん……?」


リリーに見惚れていたら、ついうっかりリリーの髪を触っていた。……凄いサラサラ。前世で公園の砂場にあったサラサラの砂みたいだ。……そして私の髪も触らせるんだけど……思ったより恥ずかしいんだな、これって。


「……ローズの髪、凄いサラサラで綺麗」

「リリーの方こそ物凄い綺麗だよ?」

「そっか、ありがとう」

「どういたしましてだよ」

「……ほんとに花火、綺麗だね」

「うん、ものすごい綺麗だね」

「今日誘ってくれて本当にありがとう、リリー」

「こちらこそだよ。ローズこそ、私に付き合ってくれてありがとう」

「……そういえばずっと言うの忘れてたんだけどさ」

「ん?どうしたの?」

「この前のショッピングデートの時さ、助けてくれて本当にありがとう。あの時、すごい嬉しかった」

「……そんな、お礼を言われるほどのことはしてないよ。単純にローズが凄い心配だったのと、私自身ナンパとかはほんっっとに嫌いだっただけだから」

「……そういえば前にも話してたよね」

「うん、以前にも言ったと思うけど遠い友人が、ね。ローズと同じように、手を出されててさ。その友人は、その後また少しの間私達とろくに話すら出来ないくらい怖かったみたいでさ。だから、他の誰かが苦しんでるのは嫌なんだ。それも、原因がナンパとかなら尚更ね」

「そっか。リリーって、凄いかっこいいんだね」

「ううん、全然そんなことないよ。……ってあ、見てローズ!もう終わりの大量花火だよ!」

「あ、ほんとだ!全然気づかなかった!」


リリーと話してたら、楽しすぎてあっという間に花火が終わりまで迫ってきていた。

……さっきの話もそうだけど、やっぱりあのショッピングデートの事を考えるとなんかちょっと顔が熱くなるんだよなぁ。……なんでだろ?


「……これで終わりかな?」

「そう、みたいだね」

「ローズはこの後どうしたい?このまま帰る?それとももう少しだけ屋台見てく?」

「んー、じゃあもうちょっとだけ屋台を見てこっかな」

「おっけー、わかった!」


それからまたリリーと手を繋いでわたあめやポテト、だるま落としなどを楽しんだ後私とリリーは別れた。

そして、今は私の部屋。


「……本当になんなの?この気持ちってば」

「お嬢様、どうなさいました?顔が赤いようですが」

「なんでもないよ、アベル。気にしないで。」

「……何か思い悩んでいるようでしたら、先にお風呂に行かれてはどうですか?」

「うーん……じゃあ、そうするね。ありがとう」


結局、お風呂でも疑問は残ったままで、なんだかんだでその日はすぐに寝た。

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