第26話 悪役令嬢と主人公の二人きりデート その二

日が沈み、辺りも程よく暗くなってきた頃。

本格的に私達が知る祭りになってきた。

リアリティの高いこのゲームは当然屋台も超リアルだ。その為、並んでいる屋台も前世の様な、わたあめ、りんご飴、チョコバナナに唐揚げや焼きそば等。やっぱりどれもこれも美味しそう。


「うんうん!やっぱりお祭りは夜の方が賑やかだよね!」

「リリーはよくお祭りに行くの?」

「うん!私お祭り好きなんだ!沢山の人が笑ってるし、美味しいご飯も沢山食べれるし!ローズは?」

「私はどうだろ、ん~……好きと苦手で半分半分かな?確かに、お祭りってとても楽しいし、出てるご飯とかも全部美味しいし。でも、私ちょっと人混み苦手なんだよね~……よくはぐれちゃうし。」

「だったらそうだなぁ……よし!じゃあ私の手を離さないで!そうすればきっとはぐれないはずだから!」

「ありがとう、リリー。それじゃあ、いっぱい楽しもっか!」

「うん!そうだね!」


私はリリーの手を取って、祭りを心のままに楽しんだ。まずは、射的。


「嬢ちゃん、魔法は使えるかい?」

「はい、ある程度魔族が退治できる程度には使えます」

「私も同じくですわ」

「……あ思い出した!そいやぁ嬢ちゃん……っていうか貴方はリリー様じゃないですか!そちらのお方は?」

「おじさん、いつも通りで構いませんわよ。」

「初めまして。私、ローズ・コフィールと申します。どうぞ、以後お見知り置きを。」

「いやぁ驚いた驚いた。こんな普通の街にまさかローズ様とリリー様が来るとはなぁ。」

「それで、とりあえず一回ほどやらせてもらっても?」

「おう、もちろんだとも。さぁ、この中の的を狙って魔法をうってくれ。どちらが先でも構わないぜ」

「じゃあ私から行かせてもらいますわ。おじさん、危ないから少し離れてもらっても?」

「ん?あぁ、わかった」


と、屋台のおじさんが少し横に出る。……あれ?そういえばリリーって攻撃魔法ダメなんじゃ……


「……風よ!」

「うおっ!?」

「……まぁ、やっぱりそうだよね」


リリーは風魔法の略唱をただ叫んだだけで、実際は何も魔法はでていない。ゲームでやってて私も訳が分からなかったのだが、どうやらリリーは謎に風圧をコントロールできるらしい。なのでリリーは風よ、と叫び高速で一本指を前に突き出してその風圧を一つに絞って的目掛けてぶつけた訳だ。……自分でも何言ってるのかよく分からない。


「と、とりあえず……あい、リリー様。景品のぬいぐるみだ」

「ありがとうございます」

「さ、次はローズ様だな」


……どうしよう。私が欲しかったのはさっきリリーが倒した可愛くアレンジされたスライムのぬいぐるみだったから欲しいものが無くなっちゃったんだけど……そういえばリリーは猫が好きだったな。だからまぁ……リリーにあげるためだけに猫のぬいぐるみを狙ってみるか。


「……水よ」


私は、いつものように手のひらに一個ちっちゃな水玉を浮かび上がらせて、それを狙いのぬいぐるみ目掛けて放つ。水玉は物凄い速度でぬいぐるみに当たり、ぬいぐるみは勢いよく落ちる。


「ローズ様もリリー様もすげぇなぁ。今まで見てきた奴らよりも遥かに格が違ぇや。……あい、ローズ様。」

「ありがとうございます!」

「まさか今日は有名な二人のご令嬢様に来てもらえるなんてよ。俺もついてるな」


……私達って、そんな有名なの?いやまぁ……コフィール公爵もクレスアドル男爵も確かに凄い有名っちゃ有名だけど……


「あ、そうだ。ローズ、はいこれ」

「え、いいの?」

「うん!ローズが凄い欲しそうにしてたからちょっと先に取りたくなっちゃって。」

「実は……私も、リリーにあげたいからこれ取ったんだ。貰ってくれる?」

「……うん!ありがとう、ローズ!こんなにも可愛い猫のぬいぐるみ、凄い嬉しいよ!」


……あれ?今ほんの少しだけリリーの顔が赤くなった気がしたんだけど……まぁ気のせいかな。

にしてもまさか、リリーも私に渡したいが故にスライムのぬいぐるみを取ってたなんて。……私凄い顔に出ちゃってたかな。

そして、リリーからぬいぐるみを貰った時、ぐぅ~……と私のお腹がなった。


「あ……」

「ちょうど私もお腹すいてたし、何か食べよっか!」

「……うん」


ちょっと恥ずかしいです、はい。特にリリーだと尚更。ここに転生して、魔法学校に入学してから大体二週間ほど過ごす中でリリーは私の中の揺るぎない最推しになっていた。私がたまにリリーに対してすごいドキドキするのも、きっとリリーが最推しなんだからだと思う。もちろん今もローズ様は推しだけど、私が転生してしまったので最ではなくなった……というか転生したからこそゲームでは知らないリリーを知り、リリーが最になった。


「うーんと、色々あるね。ローズは何が食べたい?」

「えっと……唐揚げかな?」

「唐揚げか……いいね!それじゃあ私も唐揚げにしよっかな!きっとそのほうがお腹も膨れるし。よし、それじゃあ買いに行こー!」

「おー!」


ちょっと驚くことに、本当に気づいてないんだな、みんな。まぁわかる人はすぐわかるんだろうけど。

仕方ないと言えば仕方ないのかな。クロッセオから少し離れた場所だしね。そんな感じで誰にも気付かれずにちゃちゃっと唐揚げを買って、屋台から少し離れたところに座って食べる。


「……あふっ」

「出来たてだから熱いのは当然だよ、もう。大丈夫?舌やけどしてない?」

「う、うん、なんとか。リリーは熱いの平気なの?」

「どちらかと言えば苦手だよ?だからちゃんとふーふーしてるの。……にしても、すごい美味しいね」

「うん、凄い美味しい。」

「あ……ローズ、もうちょっとで花火の時間だよ。私、花火が見やすいところ知ってるからさ、そこに行こ?」

「え、もうそんな時間なんだ!それじゃあ早く行こっか!」

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