第25話 悪役令嬢と主人公の二人きりデート

私達は、あの後すぐに剣を持っていき余裕の満点を貰った。そして、今日はもう休みでいい、と言われたので自由に過ごそうと思ったら、リリーに二人きりのデートに誘われた。マイは少し不満そうだったから今度また二人でデートしよう、と言ってある。

そして12時現在。私達は今、都市クロッセオから少し離れた街、アダリエに来ていた。どうやら今日ここで祭りが行われるらしい。

というか……今日のリリーは村娘のような服を着ており、いつもの制服の凛々しいイメージとは打って変わってとてつもなく可愛い。守りたくなるくらい可愛い。ずっと心臓がドキドキしてる気がする。

……以前も同じような服だったのに、何でだろう。とりあえず、頑張って平常心を保たなきゃ!


「あ、見てローズ!美味しそうなパンがあるよ!」

「ほんとだ!ちょっと買ってこっか!」

「うん!マイ達のお土産にもちょうどいいし!」

「……ん?この甘い匂いは……」


私の鼻を優しく包む甘いチョコレートのような匂い。

少し嗅いだだけで欲望が溢れそうになるこの匂いは……


「チョコマフィンだ~!!!」

「あ、そういえばローズは甘い物が大好きだったね。これも買ってく?」

「うん!買う!いっぱい買いたい!」

「ふふっ。ローズのそういう所、すごい可愛いね。子供みたい」

「だ、だって本当にお菓子には目がないんだもん!……」

「チョコマフィンとかチョコクッキーなら、今度私が作ってあげようか?私作れるけど」

「え!?いいの!?」

「ほら、そういうとこ。……うん、もちろんだよ!それに……ローズが凄い美味しそうに食べてくれるなら、私も物凄い嬉しいからさ」

「そっか!じゃあ今度、遊びに行ってもいい?」

「うん、もちろん!ローズならいつでも大歓迎だよ!」


そう言ってリリーは私に笑顔を向ける。……あやばい、本当に可愛い。最近やっとリリーの美しさに慣れたと思ったら、今度はリリーがものすごく可愛く思えてきた。そしてその矢先にこの笑顔だ。……本当に心臓がすごいことになってる。ほんとにバクバク言ってる。


「すいません!このチョコマフィン、十個ほどください!」

「あいよ!嬢ちゃんたち、運が良かったな!ちょうどこれで最後だ!おまけにもう一個、増やしとくぜ!」

「本当ですか!?ありがとうございます!」

「やったよリリー!おまけにもう一個貰えちゃった!」

「良かったねローズ!ローズさえ良かったら、私にも何個かくれない?」

「うん!いいよ!リリーも一緒に食べよ!確かあっちに丁度いい木陰があったからそこで食べよっか!」

「うん!ありがとう!」


と、私達は草原に立っている一本の木の下まで歩く。

……うーん、ものすごい絶景だね


「よし、それじゃ食べよっか!」

「うん!いただきます!」

「いただきます!」

「…………おいひぃ~♡」

「うん、これ凄い美味しい!ってこらローズ!食べるの早すぎ!」

「だって……本当に美味しいんだもん!」

「ちゃんと私の分も取っといてね!」

「わかってるわかってる!」


……結局、全部食べてしまいました。大変申し訳ございませんでした。


「やっぱりほとんど全部食べたじゃん」

「ごめん……本当に美味しすぎて、つい……。アベルにもよく怒られてるのに……」


この四年間でイリアとマイとラーベルがちょくちょく手作りお菓子を持ってきてくれることがあった。

そしてその都度私は半分以上を食べてしまい、よくアベルに怒られてた。その代わりにアベルにはいつも手作りのお菓子を渡していた。


「まぁ、食べてる時のローズの顔がとっても可愛かったからそれに免じて許してあげる」

「ありがとう……?」

「ん?ローズ、顔赤いよ?大丈夫?」


いやぁぁぁぁ恥ずかしい……!まさかリリーにずっと顔を見られていたなんて!以前アベルに好きなものが何かって聞いた時も「好きなもの……ですか。でしたら、お菓子を食べられているときのお嬢様のお顔でしょうかね。とてもかわいらしくて、ついつい守りたくなっちゃいますし、永遠に見ていられます」とかいうちょっと怖い返答が返ってきたけど……お菓子食べてる時の私ってそんなに可愛いかなぁ!?

ていうかどうしよう!まだ顔が熱い!


「う、うん……大丈夫」

「そっか、ならよかった……えいっ!」

「きゃっ!……リリー?」

「ちょっと強引にやっちゃってごめんなんだけど……ね、ローズ、気持ちよくない?これ」


私はリリーに手を取られてそのまま押し倒され、二人手をつないだまま草原に寝転んだ。

……めっっっっちゃやってみたかった奴これ!よくいろんなアニメで見ては「すごい気持ちよさそうだな」って思ってた奴!そして予想通りめっちゃ気持ちいい!


「うん!すごい気持ちいいね!これ!」

「前に一回リアンとここに来たことがあってね。一回ここで横になったことがあるんだ!まぁ、その時はちょっとリアンに怒られちゃったけど……。しかも、ここから見る空ってほんとに綺麗でさ!ローズなら絶対気に入ってくれると思ったんだよね」

「ありがとう、リリー! 確かに、この場所気に入ったよ!ふぁ~ぁ……ちょっとなんだか眠たくなってきちゃったな」

「んー……じゃあちょっとの間寝る?まだお祭りも本格的に始まるまで二時間くらいあるし」

「それじゃあちょっとだけ……すぅ、すぅ……」

「すぐ寝ちゃった……。ふふ、やっぱりローズ様は本当に可愛いな。にしても……普通のルートから外れたからなのか、このルートのローズ様は本当に先輩みたいだな」

「はぁ……久しぶりに先輩に会いたいな。茨先輩……。」

「にしても……本当に可愛いな。ちょっとだけなら……いいよね?気づかれてないし」


……凄い気持ちいい。地面の草がとても気持ちいいクッションになって、木陰がまるでカーテンみたいだ。そして何より、髪を撫でる風が涼しい。きっとリリーがいるからって安心してるのもあるんだろうな。凄いすんなり眠れちゃった。

それからどれほど寝ていたのかは分からないけどまぁ多分一時間とかだろう。して私は起きた。


「……気持ちよかった。本当によく眠れちゃったよリリー……って」

「すぅ……すぅ……」

「ふふ、リリーも寝ちゃったのかな。とても気持ちいいもんね、この木陰は。……にしても、なんなんだろう、この気持ち。リリーを見てると、ドキドキして落ち着いていられないよ。これが推しに対する気持ち……なのかな?」

「……にしても、どんな夢見てるんだろう。すっごい気持ち良さそうな寝顔してる。紗蘭みたいだな」

「……紗蘭、今何してるんだろう。学校とか、上手くやれてるのかな?」


それから少しして、太鼓の音が耳に入ったのでリリーを起こす事にした。


「さら……リリー、起きて。多分もうそろそろ始まるよ!」

「あ……えへへ、私も寝ちゃった。起こしてくれてありがとう、ローズ。それじゃあ街の方に戻ろっか」

「うん、そうだね!」


危ない危ない。間違えてリリーに対して紗蘭って言いそうになった。


「さっきよりも賑やかになってきてるね!……そういえば、今日の終わりに花火があるみたいだよ」

「そうなんだ!見てみたい!」

「うん!一緒に見よ!」

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