第24話 悪役令嬢達はダンジョン試験を終える

「さ、次行こっか!」

「はい!」

「あ、気をつけて!そこ、落とし穴になってますわ!」

「あ、ほんとだ!いよいよ階段ですらも無くなった……」

「なら私がみんなに飛行魔法をかけるよ。だから安全に降りれるはず!」

「ありがとうございます、ローズ様!」

「どんどん強くなってきてる気がする……皆、気を引き締めて!」

「はい!」

「うん!」


私は飛行魔法をみんなにかけて、第四層へと落ちていく。……ほんとにいよいよ階段ですら無くなったじゃん。そしていきなりボス部屋だし。ここは今までのボスが三体まとめて襲ってくる難関だ。……にしても広くない?凄い綺麗だし……ほんの少し古びた神殿みたい。


「……いきなりボス部屋ですか」

「今度は……巨大化した魔物が三体も……?」

「骸は私が叩くよ!ゴブリンはイリアとマイで、スライムとうじゃうじゃいる骸達はローズでお願い!」

「わかりましたわ!」

「了解です!」

「おっけー!任せて!」


リリーの指示に従い、とりあえず私達は別々の方へ走り一体一体を分断した。私は、強化魔法を使い速力に重きを置いて、守るように湧いてくる骸を次々と殴ってく。スライムにはこまめに魔法をぶつけてる。


「なんかこれ……さっきのよりも強くないですか!?」

「あきらかにおかしいですわ!私の魔法だって先程は弾かれませんでしたもの!」

「向こうにもなにか魔法がかかってるのかも!二人は尚更気をつけて!」


……まぁ、運営が仕掛けたことである。第四層のボスは他のよりも強さが三倍に設定されている。もちろん、私やリリーからしたらなんて事ないが二人からしたら少し厳しいかもしれない。


「とりあえず骸はこれでおしまい!このまま長引かせてもめんどくさいからパパっとスライムも蹴散らしちゃうよ!……右手に雷よ、左手に水よ!!」


応用をきかせて、雷も小さな球状にして使うことができる。私は、右手に小さな雷の球をおよそ20個、同じく左手に水玉を20個出して両手を合わせる。この世界でも感電の性質は変わってないので、雷魔法で相手をしびれさせながらも水魔法の物凄い勢いで攻めることが出来る。


「はあっ!」


水と雷を合わせて相手に放つ。それは、見えないような速さでスライムへとぶつかっていき見事スライムを打ち砕いた。あっちを見たら、もうリリーも終わらせていた。


「イリア、マイ、援護いる?」

「いえ、大丈夫ですわ!」

「私達もそろそろケリがつきそうですから!」


と、イリアたちのほうを見ると二人は手を繋いでいた。……なるほど、二人の魔力を合わせて炎魔法を放つんだ。やっぱり二人のことは心配するだけ杞憂みたいだ。


「上手くいくか分かりませんが……いきますよ、イリア様」

「ええ!行きますわ!マイ!」

「二つの炎よ、ひとつとなりて」

「我が眼前に映る全てを焼き滅ぼしたまえ!」


ゲーム特有のコンボ技みたいなもの。それはこのゲームにもあり、それが合体魔法。融合魔法とはまた違い、融合魔法は魔法と魔法をくっつけて放つ技。合体魔法は、使用者二人の魔力を合わせて放つ技。合体魔法は、詠唱が必要になるがその分威力も凄まじいものとなる。現に、イリアとマイが手を天にかざすと隕石のような、超巨大な火球が出現している。そしてそれはゴブリンの方へと進んでいき、ゴブリンを埋めつくして焼き滅ぼした。


「意外と、初めてでも何とかなるものですね」

「上手くいって良かったですわ!」

「凄いよふたりとも!まさか合体魔法を使うだなんて!」

「以前、図書館でマイと遭遇しまして。それで二人で本を読んでたら、合体魔法について書かれていて興味深かったのでちょっとやってみたかったんですの!」

「ありがとうございますローズ様!ちゃんと上手くいって良かったです!」

「……さぁ、恐らく次が最下層だよ。何が来るか分からないからみんな、気をつけていこう!」

「ええ!もちろんですわ!」

「はい!」

「よし、行こう!」


同じように飛行魔法を付与して、私達は最下層に到達した。そこは、とても広く、一種のパーティー会場のように綺麗だった。そして私達の目の前には……


「見てください!あれって、先生が言っていた剣じゃないですか!?」

「ほんとですわ!……あれ?あの剣、リリーに光ってません?」

「あれ、本当だ!凄いリリーに光ってる!私には全然光らないのに……」

「……もしかして、この剣がリリー様の適正具なんじゃ」

「ね、あの剣抜いてみてもいいかな?」

「いいと思うよ!適正具なんだし!」


リリーは、真ん中に突き刺さっている剣に近づき、やがてそれを引き抜いた……。さて、いざ実際に戦ってみるとどれほどの強さなのか。こちらには、剣を持ったリリーがいる。それに、私と関わっていく中で凄い強くなった二人もいる。大丈夫、負けることはない。


「うん!凄いしっくりくる!」


と、リリーが剣を天にかざした時、地面が強く揺れ始めた。……来たか。


「あの……皆さん……なんか、揺れてませんか……?」

「……みんな、飛んで!何かが来るよ!」


私達の前に飛来したのは、黒い体に赤い羽根を持つ禍々しい雰囲気のドラゴンだった。


「ド、ドラゴンですわ……!」

「私、これも本で見た事ある!アンデッド・ドラゴン……ここを守護するドラゴンだよ!このダンジョンは、こいつを倒さないと攻略した事にならないみたい!」

「……よし、やるしかないか。」

「グオオオォォォ!!!」


アンデッド・ドラゴンが私達に向けて大きく吠える。

すると、どこからともなくゴブリン、スライム、骸が出てきた。


「呼び出された魔物は私とマイで対処しますわ!イリアとリリーは、アンデッド・ドラゴンを!」

「助かるよイリア!……よし、やるよ、ローズ!」

「うん!リリー!」


本来ここはリリー一人いれば確実に攻略できる難易度だから、私とリリーなんてオーバーキルだと思うけど……まぁ、親睦を深めるためと思えばいっか。

アンデッド・ドラゴンは、特殊なバリアを纏っている。そのバリアがある限り、魔法は決して通じない。


「くっ、バリア……」

「私がバリアを壊すよ。危なくなったら援護して!」

「わかった!ありがとう、リリー」


と、リリーは強く地面を踏み込み飛んだ。身体強化の影響で、リリーの場合はただ飛んだだけでも飛行魔法に等しくなる。……いやまぁリリーも基礎魔法はあらかた使えるんだけど。

そしてアンデッド・ドラゴンはリリーに向けて口を開き、紫の光線のようなもので攻撃を仕掛ける。


「ローズ!」

「うん、わかった!……風よ!」


それはただ一直線の攻撃だったので、リリーを風魔法でちょっと横にずらす。もちろん、その直線上にイリアとマイがいないことも確認済みだ。


「今度はこっちの番だよ、はあぁっ!」


リリーはアンデッド・ドラゴンに向かって剣を振るい、バリアを壊す。


「バリア、壊れたよ!ローズ、思いっきりやっちゃって!」

「ありがとうリリー!すぐに決めるよ!……水よ、我が力の全てを解放せよ!……〈水の柱〉アクア・ピラー!!」


地面にアンデッド・ドラゴンを覆い尽くすような円を描く。そしてそこから、大量の水が溢れ出した。

……一気に決めるならやっぱり柱魔法じゃないとね。

水の柱の中に閉じ込められたアンデッド・ドラゴンは、毎秒数え切れないほどの凄まじい勢いの水玉を浴びている。……意外と通じるものなんだな。


「グアァ!」

「な……水の柱が破られ!……あ、そうか!コアだ!」


この世界のドラゴンは、死ぬ間際になると額にコアを作り、それを壊すまで絶対に倒れない。そして向こうは暴れてくるという、めんどくさい仕様なのだ。そしてもっと言うと、コアに魔法は通じない。


「私がコアを壊すから、ローズはアンデッド・ドラゴンの動きを止めて。それと、私が合図したら私に風の柱を使ってくれない?」

「え?風の柱?」

「うん。念の為に、重たい一撃をいれたいから。私を上の方まで運んで欲しいの」

「わかった、任せて。」

「ありがとうローズ、助かるよ」

「とりあえずまずは、動きを止める!……雷よ!」


雷の剣を20本生みだし、それら全てをアンデッド・ドラゴンの足元に放つ。雷の剣は、上手いこと全て足元に刺さった。そして、ここで私の魔力を多く込めて雷を体内で激しく暴れさせる!


「……よし、とりあえず足は潰した!これで行けるよね、リリー」

「うん!ありがとうローズ!」


と、私にそう言ってリリーはまた走り出した。

恐らく、身体強化の全てを力に振るつもりだ。……その分、速力とかが落ちるから私の補助が必要になってくるって事……だよね?


「よし、ローズ!今だよ!」

「……風よ、我が力の全てを解放せよ!〈風の柱〉ウィンド・ピラー!」


鎌鼬を抜いて、小さな嵐を作り、それをリリーにぶつける。リリーはどんどん上に上がっていき、コアの前まで来た。


「本当にありがとう、ローズ。……これで、おしまいっ!はぁぁぁぁっ!」


リリーは、風の柱から飛んでコア目掛けて落ちる。そして、コアに剣を突き刺す。


「グォァァァァァ……」


アンデッド・ドラゴンはそのままボロボロと崩れ落ちた。


「……よし、終わったね!」

「リリーのおかげだよ!本当にありがと!」

「凄い、大変でしたわね……」

「私はローズ様が褒めてくれたのでいっぱい頑張れました!」


向こうで湧いてきた魔物達の処理をしていたマイとイリアも私達の方に走って来た。


「どれくらいかかったんでしょう?」

「多分だけど、一時間もないよね……?」

「まぁ……早いことに越したことはないですし。」

「うん、そうだね!じゃあ、早く学校に戻ろっか!」

「うん!」

「はい!」

「ええ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る