第21話 悪役令嬢達はショッピングデートをする 終

昼を食べ終えた私達はまた少し歩いていた。

……どうやらこの様子だと雨にも気づいてないみたい。

みんな傘持ってるのかな……?とりあえず一回聞いてみようかな。


「あのさ、みんな」

「はい、どうしました?リリー様」

「さっきちらっと雨降ってるのが見えたんだけど……みんな傘って持ってるのかなって」

「雨……ですか。私は傘は無いですね」

「私も無いですわ」

「私は持って来たよ、家出るときに雲見てたから!」

「え、リリーって雲わかるの?」

「うん!以前ちょっと勉強してたから!」


……流石リリー。そういえば、紗蘭も雲について詳しかったな。……いや、さすがに何でもかんでも紗蘭と結び付けすぎか。


「ローズ様とリリー様はとても仲が良いのですね」

「さっきの件で少し話してたのと……ローズにはどこか懐かしさを感じるからね……ってあぁそう言えばまだローズにしか言ってなかった!本当に今更だけど私の事は好きに呼んで!私も私の楽なように話すから!」

「でしたら……改めてよろしくお願いしますわ、リリー」

「私の事も気軽にマイとお呼びください、リリー様!」

「うん、改めてよろしくね!マイ、イリア!」


……うーん?何かがおかしいぞ?確かリリーって話し方は本来は変えないはずじゃ……?

やっぱり私が転生した事によってどんどんルートが歪んでいってるのかな……


「でもそうですね……雨が降ってるならおそらく時期に強くなるので早めに帰った方がいいでしょうし……」

「雲の流れ的にもあと1.2時間すればもっと強くなるから……残念だけど早めに切り上げた方がいいかもね」

「でしたら……最後に髪飾りを見たいですわ!髪飾りが本来の目的ですし」

「うん、私も髪飾り見たいな!みんなでお揃いのやつが欲しい!」

「みんなでお揃いの髪飾り……うん、凄くいいね!それじゃあ髪飾りだけ買っていこっか!」

「はい!」


っていう感じで私達は髪飾りが売っている店へと歩く。

髪飾り……というか主にヘアピン。せっかくみんなとお揃いのを付けるんだから可愛いものでないと。髪飾りには魔具なんてないんだから。

そうして歩いていると、私達は花の看板がある店を見つけた。

やっぱりゲームの名前が花なだけあって、色んな所で花が出てくる。店の看板とかも花だし、このゲームに登場するキャラクターもほとんど名前が花に由来しているものだし。私やリリーのようなそのまま英訳したものから、リアンのようなアナグラムされてる名前まで色々ある。


「あ、あったよ!」

「やっぱりお店の中は広いですわね……!物凄いいっぱい並んでますわ!」

「ヘアピンに……シュシュに……リボン。凄い、かんざしまであるんだ!」

「あ、見てくださいローズ様!以前言っていたヘアピンです!」

「おぉ!どれどれ……って凄い可愛い!」


以前にマイから凄い可愛い髪飾りが売っていた、と聞いた。

その時は一個しか売ってなく、私と一緒に買いたいから断念したらしいけど。

マイが教えてくれたその先にあったのは、水色のハート柄のヘアピン。

……うーん凄い可愛い。私は、そもそもに一番好きな色が水色なので水色のものは基本可愛く思えてしまう。それに加えて私が思う可愛いを象徴するハート。もちろん、可愛くないわけが無い……そして今残ってるのはちょうど二つ。……欲しい。


「……二人には内緒で買っちゃう?」

「……!はい!」


私がマイにそう言うと、マイの顔がニパっと明るくなる。

……この子もすごい可愛いな。うん。本当にマイは妹みたいだ。……マイには失礼かもしれないけどマイが持ってる可愛さは本当に同い年のそれじゃない。というか知らず知らずのうちに妹と思って接してる節まである。


「え、ローズ様!?」

「あ、ごめん!ちょっと無意識に!」


……危ない危ない。いや、まぁアウトなんだけど……

無意識のうちにマイの頭を撫でてしまった。

本当に可愛いな、マイは。凄い髪もサラサラで綺麗だし。


「あ、いた!ローズ、マイ、ちょっと来て!可愛いヘアピン見つけたの!」

「うん、わかった!すぐ行くね!」

「はい!すぐに行きます!」


少しルートが歪んでる証なんだけど……でもはしゃいでるリリーも凄い可愛いなぁ。さっき助けてくれた時はあんなかっこよかったのに……ギャップが堪らない!

それにしても……なんなんだろう、この気持ち。リリーだけ他の人と少し違う気がする……リリーといる時だけ凄い心が……心臓が跳ね上がるような、そんな気がする。多分きっと、これは推してる気持ち……と違うんだよね。


「……あ!見てくださいローズ!この桜のヘアピン、とても可愛いと思いませんか?」

「ほんとだ!凄い可愛いし……綺麗!……よし、私はこれがいいな!この桜のヘアピンをみんなで買いたい!」


イリアが指さしたのはピンクの桜のヘアピン。やっぱり全てが綺麗なんだけど花がモチーフのゲームなだけあって花や花に関するものは他よりも多く手を入れられており、どれも言葉を失うくらいに綺麗。そしてこれを見た瞬間私の頭にはこれを頭に着けた三人の姿が思い浮かんできた。……うん、可愛い。

可愛い×美しいは超可愛い。超美しい。それはもう、語彙力を失うほどに。そして私は超がつくほどのヲタクなのでもっちろん見たいに決まっている!だから私はみんなで買うヘアピンはこの桜のヘアピンに一票!


「私もこれがいいです!とっても美しいですし……もっと美しいローズ様を見れますから」

「よし、それじゃあみんなでこれを買おっか!」

「ええ!早速明日からつけて行きますわ!」

「……ふふ、皆でお揃いだとなんかちょっと嬉しいね」

「はい、そうですよね!」

「なんて言えばいいんだろうね……『友情の証』?って感じがする!」

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