第17話 悪役令嬢達はショッピングデートをする

……あれから、特に面白いこともなく一週間が経過した。とりあえずリアンともリリーとも凄い仲良くなった。そして本当にマイとイリアは喧嘩をしなくなった。……まぁそもそもにラーベルが言うには私がいない時に限ってするからどうなのか分からない……けど多分もう絶対してないだろう。何故なら、私の聞き間違いであって欲しいのだが先日イリアとマイが「どうやったらローズ様を私たちだけのものに……」やら「ならもういっそ監禁してみてはどうでしょう?」やら話してたのが聞こえたからだ。……前世の知識がある私だからわかる。私が本来のルートをぶっ壊してマイとイリアと深く関わりすぎたが故に二人がヤンデレと化してしまったということに。よく鈍感系主人公とかそんな話は聞くが、私は決して鈍感では無いと思う。何故ならマイとイリアの気持ちは普通にわかるしマイとイリアがなにかしてもある程度の理由は「私の事が好きだから」で片付けれてしまう自信がある。それに、ふっつーに怖い。

……本当に私そういった怖いものは無理なんだけど……でも不思議なことに二人にならいいかもと思ってしまっている自分もいる。


「……そういえば今更ですけどローズ、私もローズとお揃いの髪飾りが欲しいですわ!」

「あぁそう言えばイリアとはまだ一緒に買い物したこと無かったね。ちょうど私も新しいアクセサリ見ようと思ってたし、次の休日行く?折角なら、マイもリリー様も一緒にみんなでデートしたいな!」

「ショッピングデート……いいですわね!私は是非行きたいです!何よりローズとのデートですもの!」

「私も行きたいです!ローズ様と一緒にお出かけしたいです!」

「私も以前から皆で何処かに行きたいとは思っていましたの。楽しみですわ!」

「よーしそれじゃあ決まりね!えへへ、皆でデートだ!」


本当に色々頑張った甲斐があった!まさか推し達と一緒にデートができるなんて!……まぁ、マイ達の時もそうだったんだけどね。

そして、その晩。私はアベルと一緒に服をどうしたらいいか色々考えてた。やっぱり皆揃ってのデートっていうのは初めてだから……折角なら気合い入れたいじゃん?


「あ、これとかいかがでしょうか!この白いワンピースなら、とてもお嬢様に似合うと思いますよ!」

「ほんと?じゃあ一回着てみるね!アベル、ちょうだい!」

「はいどうぞ、お嬢様」


アベルが手に取ってくれたのは、無地の白いワンピース。

とってもシンプルだけど、だからこそとても可愛い。

そうして私は一回着替える。もう、長年の慣れなのか私もアベルもアベルの前で着替えることに対してそんな抵抗を感じない。最初の頃は一回一回アベルには部屋の前で待機してもらってたっけな。


「……よし、サイズはピッタリ!どう、アベル。似合ってるかな?」

「はい、大変似合っておりますお嬢様!……本当にずっと、死ぬまで見ていたいくらいです」


……うーん。なんだろうね。アベルが以前に比べて笑えるようになったのが嬉しいんだけど……言い方あれだけどなんかどんどんアベルもマイに毒されてきてるんだよね。いやまぁなんとなくゲームをプレイしてた時点でマイが重い事は薄々理解してた。……けどまさかね?メイドにまで感染するなんて思わないじゃん。まぁ……アベルの場合はきっと無害型ヤンデレに分類されるんだろうな。にしても……多分聞こえてないと思ってるの可愛いな。……とりあえず、似合ってるみたいでよかった。

よし、それじゃあめいっぱいデートを楽しむぞ!


「あ、いた!ごめんね、待たせちゃったよね」


そして翌日。私は……寝坊をした。前世から引き継いで私は朝がかなり弱いため、いつもアベルに起こしてもらってるんだけど……アベル曰く「本日のお嬢様の寝顔はいつもより凄い可愛かったものですからつい……」だって。


「全然大丈夫ですよ!……それにしても、寝坊なんてローズ様にしては珍しいですね……って、どうしたんですかそのワンピース!とーってもお似合いじゃないですか!可愛すぎますローズ様!」

「おはよう、ローズ。あなたも寝坊をするのですね。それにしても……これからもそのワンピースできてくださいよ、ほんっとーに似合ってますわ!世界で一番美しいですわ!」

「マイもイリアもありがとう!折角皆でお出かけするからさ……ちょっと、気合い入れていこうかなって。……あれ?そういえばマイ、イヤリングしたんだ!凄い似合ってるね!」

「ありがとうございます、ローズ様!実は……私もちょっと気合い入れちゃいました♪」


いつもは何もしてないマイだけど、今日は三日月のイヤリングをしている。ほんと、その白黒の髪と相まってとてつもない程に似合っている。イリアにも言えることだけどほんっとうに美貌だなぁ。


「……ところで、リリー様は?」

「リリー様なら先程ネックレスのお店に走って行っちゃいましたわ。リリー様ってネックレスが好きなのでしょうか?凄い目を輝かせていましたし……」

「……申し訳ありません!ちょっとはしゃぎすぎてしまいましたわ!ってローズ、来てたのですね!おはようございます!」

「おはようございます、リリー様!」

「さぁ!それでは皆で合流できたことですしショッピングを始めましょう!」

「おー!」

「おー!」

「おー……?」


まず、私とイリアが最初に向かったのはネックレスのお店だ。

リリーとマイは指輪とかを見たいらしいので別行動になった。

私もよく忘れるけどもなんだかんだで私達は令嬢な訳で、もちろんお金ならばたんまりとあるので思う存分買える。

が私の金銭感覚は余裕で平民なままなのであまり高いものは買いたくない。……いやまぁ前世でバイトしてたけども。


「見てくださいローズ!このネックレス、とても綺麗ですわ!」

「どれどれ……っておぉ!綺麗だし真ん中の花弁も可愛い!絶対イリアに似合うよ!」


イリアが目をつけたのは、花弁のネックレスだ。

花弁にはルビーのような赤い宝石が埋め込まれていた。

まさにイリアに似合うような、そんな立派なネックレスだ。


「でしたら私はこれにしますわ!ローズに似合うって言われましたもの!」

「……イリアは本当になんでも似合うと思うんだけどな。……っていないし」

「そうだ何で魔具について忘れてたんだろう。……ここにあるネックレス全部魔具で魔力あるのに……」


……魔力が籠った道具、通称魔具。その通り、アクセサリーや色んな道具などの幅広いものが該当する。その効果は様々で、魔力を倍増させるものや属性を付与するものなどがある。

ネックレスやイヤホン等ははめ込まれた宝石……いや、この世界では魔晶石というべきか。の色によってどんな効果があるのかはわかる。赤色なら火属性に関係するもの、青色なら水属性、緑色なら風属性、白色なら無属性。……普通に忘れてた。そうだここ異世界なんだ。というかなんで魔法が使えるのに魔具を忘れてたんだろう。バカか私は。


「どうです?似合ってます?」

「うん!とっても似合ってるよ!イリア!……そういえばその魔具って効果わかる?」

「確か……火属性の付与でした。これで私も炎魔法が使えますわ!」

「炎魔法ならマイに教えて貰うのがいいかもね!マイも成長途中だし!」

「マイですか……確かに彼女の実力は確かなものですわ。今度、お願いしてみますわね!」

「うん!」

「そういえば、このネックレスはローズが見つけてくださいましたよね。だから今度は私がローズに似合うものを見つけてきますわ!」

「え、いいの?」

「ええ!もちろんですわ!」

「ありがとう!イリア!」

「それじゃあ……少し外で待ってて貰えますか?楽しみにしてて欲しいですから」

「じゃあ、そういうことなら待ってるね!」


……そうして、イリアを待っている最中、事件は起きた。

後ろから、誰かに肩を掴まれたのだ。


「そこの嬢ちゃん、物凄い可愛いじゃん。この後俺とお茶でもどう?」

「……え?い、いやです……」

「……ん?聞こえないな。喜んで、だって?」

「ち、が……い、ま……」

「そっか、嬉しいよ。それじゃあちょっとこっち行こうか。」


……怖い。どうしようもないくらいに怖い。力が入らない。魔法も使えない。声が出せない。

これは……私の前世でのトラウマ……ナンパだ。

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