第16話 元気弱令嬢と元忌み子は喧嘩?する

……あれから一日が経った。結局あの後ちょっとだけ先生に怒られた。……ノープ先生、怒るの下手だから凄い可愛かった。そして美しかった。間近で見ると本当にやばかった。目が取れるかと思った。そして私達は一緒に帰ろうと話をしてた。もちろん、リアンとリリーも加わって。……ま、まずい。校門の近くらへんで急にちょっとお腹が……


「ごめんみんな!ちょっとお腹痛くなってきちゃったからお花摘んでくる!だから先行ってて!」

「いえ!ローズ様も一緒にいた方がいいですから、私は待ってます!」

「私もローズがいた方が楽しいので待ってますわ!」

「」

「ありがとう!すぐ戻るから!」


……ちょっと今日はいつもより冷え込んでたからかな?いつもは全然平気なんだけど本当に急にお腹が……。


「……トイレトイレっと。早くしなきゃ、みんなを待たせちゃう!」


……パパっとトイレを済ませて、トイレから出た……その瞬間。チュドーンという大きな音と共に軽い揺れを感じた。


「うわっ何これ地震!?とりあえずみんなのところに行こう!」


と飛行魔法に強化魔法を掛けて速攻でみんなを待たせてる校門の近くに向かう。……が、その途中でちょうど昨日見たばっかのキューブ状の結界があった。


「……何があったの?これ……」

「見てのとおり、マイとイリアがあなたの事で喧嘩をしてるんですよ、ローズ。」

「え?マイとイリアが?」

「ええ。ですからまた私が結界を作ったんですの」


少し結界の中を覗いてみると、本当にマイとイリアがいた。しかもお互いに魔法を行使している。


「……イリア様は知らないでしょうけど!私はもう二回もローズ様からキスをしてもらってるんですよ!」

「な、なんですって!?で、でしたら私は以前のお泊まり会でローズと抱き合って夜を共にしたんですのよ!」

「なっ何それ羨ましいです!はぁぁ……!」

「貴方の方が羨ましいですわ!……はぁっ!」


……ねぇ待って二人とも何話してるの!?いや確かに私の事でってラーベルも言ってたけど……それ暴露するかなぁ!?

あーやばいやばい恥ずかしい!なんかだんだん恥ずかしくなってきた!忘れようと思ってたことぜーんぶ蘇ってきた!


「ローズ、お前……中々に大胆だな」

「……それ、は……状況が状況……だったからで……本当に他意は……ないから……」

「大丈夫ですか?ローズ、顔が凄い赤いですよ」

「とりあえずもう……気にしないで……ください……」

「そこまでにしてあげましょう、ローズ様が可哀想ですわ。」

「そ、そういえば……私が来るまでに何があったの……?」

「実はですね……」


と、リリーが話し始める。

それは、私が行った直後まで遡る。


「……なぁ、そういえばお前らって本当にローズの事が好きなんだな。」

「ええ!もちろん!ローズ様には沢山助けていただきましたから!」

「私もローズ様には沢山助けていただきましたわ!それにローズ様を知っていくうちにローズ様って本当に可愛い人なんだなと思ったので!」

「ローズ様ったら、いつもはあんなに頼もしいのにお化けにはすごい弱くてとっても可愛いんですよ!」

「っ!ローズは特にお菓子が大好きで以前クッキーを振舞った際にはそれはもうとても美味しそうに食べていて世界で一番可愛かったんですの!」

「あのぉ……イリア様?以前から思ってたんですけど最近ローズ様との距離がおかしくありませんかぁ?」

「そういうマイの方こそ、以前からずうっとローズにくっついてるじゃないですか!」

「だって世界で誰よりも愛しているんですもん!だからずっとそばに居るのは当たり前の事です!」

「絶対マイよりも私の方がローズの事を愛していますわ!だから私はローズと一緒にいるんですの!愛しい人のそばにいるのは当たり前の事でしょう?」

「ふっ、ふん!いいですもん!私はローズ様と一緒に遊園地デートをした事がありますから!」

「何それ羨ましいですわ!だ、だったら私は以前ローズ様と一緒にお風呂に入りましたわ!」


「……はぁ、また始まりましたか……」

「……また?またってなんだラーベル」

「イリアとマイは丁度ローズがいない時にいつもどちらの方がローズの事が好きかで喧嘩してるんですよ……」

「……結界張った方がいいです?これ」


「「お願いします!」」


「……はぁ。わかりましたわ。」

「……今度こそ白黒はっきりさせましょう!マイ!」

「絶対に負けませんから!イリア様!」


と、リリーは昨日と同じ結界を展開した。

……ねぇあのなんで私がいないとこでどんどん私の恥ずかしいエピソードが暴露されてるの?


「ラーベル様、合図を!」

「……私ですか。ええ、わかりましたよ。それでは二人とも、位置について……」


ラーベルの合図で二人はお互いに距離をとる。そして互いに魔法を構える。


「用意、始め!」

「炎よ!」

「雷よ!」


ラーベルの開始の合図と同時にお互いに魔法を行使し、先制攻撃を仕掛ける。マイの炎とイリアの雷がぶつかり合い、お互いを膨張させ軽い爆発を起こしてチュドーンという音と揺れを発生させたらしい。


「……ということがあったんですの。」

「……ありがとうございますリリー様……何となくわかりました……はぁ。」

「まぁ俺はあの二人のことあまり知らねぇからよ、どれほどの実力があるかわかんねぇんだが……見てる限り面白そうじゃね?」

「……私もイリアとマイがこんな戦ってるのは初めて見るのでちょっと興味深いですね」

「だったらまぁもう少しだけ見るけど……流石に危なくなったら止めていいよね?」

「まぁそこは……」


「……炎よ!焼き払え!」


結界の方に目を向けると、マイは私と同じように黒い炎をひとつに集め、二本の剣とし頭の上で停止させてる。


「っ!それはローズの!」

「ローズ様は世界で一番好きな方ですがそれ以前にとても尊敬する方なので参考に出来る所はちゃんと真似させてもらってるんです!……突撃!」

「いざこうやって自分に向けられると本当に厄介ですわ……ねっ!……雷よっ!」


イリアに向かって迫ってくる黒い炎の剣を、イリアは雷のヴェールで防ぐ。……雷魔法をヴェールに使うなんて……流石はイリア。


「ローズ様にはちょっと怒られちゃうかもしれないけど……これで、私の全てでイリア様に勝ちます!」

「そっちがそう来るなら、私も全力で行かせていただきますわ!」

「炎よ!」

「雷よ!」

「その全てを解放せよ!」

「我が命に応じて降り注ぎ、全てを打ち砕きたまえ!」


柱魔法と完全詠唱のぶつかり合いで、地面が物凄い揺れている。雷と炎……なら多分軽い火事になるはず!


「うわっ!凄い揺れてる!……ねえリアン!これ止めてもいいよね!」

「さすがにこれは止めないとまずいだろ!」

「ちょっとみんな離れて!少々荒っぽく行くから!」

「おう!わかった!」


「〈炎の柱〉フレイム・ピラー!」

「はあぁっ!」


「風よ、その全てを解放せよ!〈風の柱〉ウインド・ピラー!」


「!?」

「ロ、ローズ様!?」


私は、二人の間に風の柱を発生させて炎の柱と雷の完全詠唱を打ち消す。まったくもう……まさか二人がこんな喧嘩するなんて。


「うあっ……」

「くっ……はぁ、はぁ、」


再びマイは倒れて、イリアは膝を着く。……はぁ。また魔力を分け与えないと……。


「イリア、マイ、大丈夫?怪我はない?」

「はい、私は特に……」

「私も特にはありませんわ……」

「もう、ダメだよ?喧嘩なんてしちゃ。仲良くしようよ、仲良く」

「ごめんなさい……ちょっとローズ様の事になるとどうしても気持ちを抑えれなくて……」

「……私の方がローズの事が好きだって負けられなくて……」

「私は、二人とも大好きだよ?確かに私の事で喧嘩してくれるのはほんの少しだけ嬉しいけど……私は二人が傷つけあうのは嫌だな。……とりあえず二人とも、また私の魔力を分けてあげるからぎゅってさせて。」


……ちゃんと考えた!昨日すごい赤面しながら考えた!どうやったらキスせず魔力を分け与えれるか!というか思い出した!

そう、背中から……背中に指を当ててそこから魔力を流すんだ!


「いつもいつも、ありがとうございます、ローズ様。これからもずっと、お慕いしています。」

「ありがとう、マイ。私もマイが大好きだよ。はい、ぎゅー。」


私はマイの背中に手を当てて、そこから魔力を流し込む……マイの背中暖かいな。……あれ?ていうかもっと早くこの方法に気づいていたらちょっとは喧嘩がマシになっていたのでは?


「その、ローズ……私にはその、キスをして欲しいですわ。……少しわがままかもしれませんが、平等がいいですから……」

「……イリア、平等だったらマイと喧嘩しないって約束できる?」

「……ええ、絶対にしませんわ。」

「そっか。じゃあ一回だけだよ。もちろん、その分イリアとしてきた事をこれからマイにもするから……マイはそれでいい?」

「ローズ様がそう仰るなら私もそれでいいです。それに、これからもローズ様と色々な事が出来るのですから。」

「ふふっ、ありがとう、マイ。それじゃあ……んっ。」

「……んっ。」


……うーん、やっぱり二人のこれからの喧嘩を防ぐためとはいえ……恥ずかしいな。まぁ……イリアもちょっと嬉しそうだしいっか。


「ぷはっ……はい、終わったよ。イリア」

「ありがとうございます、ローズ。」


「なぁラーベル……ってな!?いない!?」

「……あ」


あーまずいまずい!忘れてた!かんっぜんに忘れてた!

あーなんかまた顔が熱くなってきた!


「……リアン、忘れて……」

「え?お、おう……?」

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