第15話 悪役令嬢は勝負をする
それからとりあえず授業を終えて放課後になり、私達は校舎裏に来ていた。ラーベルは帰った。そして結局私もマイも落ち着いた。
「……よし、多分ここらなら精一杯暴れても問題ないだろ。」
「アミュスの木ならすぐに回復もするだろうし……辺りに人気もない。まぁ……校舎が近くにあるけど……」
「なら、私に任せてください。私、結界魔法は得意なんですの。」
といい、リリーは私達の周りに縦長のキューブ状の結界を展開する。
「私の魔力の半分を強度に費やしました。ですから、三発までなら柱魔法も耐えるはずですわ。」
「三発ね。おっけー……ねぇイリア、少しだけ本気でやってもいいかな?」
「……結界があるんでしたらまぁ……でも、程よく加減はしてくださいね?」
「もちろん!それでいいよね、リアン?」
「俺としては本気のお前と戦いたいが……まぁそれでもいいか。俺はもちろん、本気で行かせてもらうぜ!」
「それじゃあ、私が合図をしますので……そのタイミングで始めてください。」
「うん!ありがとう、マイ!」
「助かるぜ!」
……さてさて。どのくらい加減しようか?きっと私の場合であれば柱魔法一発で結界は壊れる。だからまぁ……防戦一方にしてリアンの消耗を狙うか?……いや、私も攻めよう。せっかくリリーが結界を貼ってくれたんだ。なら私も多少暴れても問題は無いはず。完全詠唱二発……なら多分行ける。よし、これで行こう!
「それじゃあお互い位置についてください。」
マイがそう指示をして、私達はお互いに離れる。
そしてマイは手を降ろす。
「それでは……用意、始め!」
マイは手を上げる。同時に、私とリアンは互いに動き始めていた。……あれ?思ったより遅いな。もっと早いと思ってたんだけど……まぁ私の期待のしすぎか。
それでリアンの魔法は……
「水よ、打ち砕け!」
水か。水属性の魔法というのは苦手属性がイリアの使う雷魔法以外にないので対処が厄介なんだけど……まぁ、これは風魔法でいいか。
「風よ!」
「おぉ!さっきマイからローズは三属性使えると聞いたが……どうやらマジっぽいな!にしてもまさかそれで俺の普通詠唱を防ぐとは……」
私に向かって飛んできた水の魔法を、風の魔法で簡単な盾を作って防ぐ。……中々に強いな、リアン。いくら略唱とはいえ、私の風魔法が若干押されるとは……。けど、それだけで判断するのもあれなのでもうちょっと試させてもらおう。
「それじゃあ、私も攻めさせてもらうよ!……炎よ!」
「炎魔法か……大体、俺を測ってるってとこか?」
「もうちょっと気づくの遅くても良かったんだけどね」
「なら、付き合ってやる。こっちもお前の実力を測りたいからな!……水よ!」
私はリアンに向かって少し大きな火球を放つ。そして、それをリアンは、手に水を纏わせて手刀で切り裂く。案の定、火球は真っ二つに割れた。……流石に不利属性だし略唱は防がれるか。私が思ってるよりなかなか強いみたいだ。
「ふふっ、いくら略唱の不利属性魔法とはいえ防ぎ切るなんて、中々やるね。」
「お前の方こそな。さっきの火球はかなり手応えは感じたぞ。」
「でも、あらかたわかってきたよ。それじゃあもう測るのはやめよっかな!」
「俺もさっきのでお前の実力はだいたいわかったぜ。まぁなに、ゆっくりと遊ぼうぜ!……水よ、打ち砕け!」
「さっきよりちょっと強そうだな……なら、私も普通詠唱で行こうかな!……風よ、切り刻め!」
私が唱えると、私の前にビュゥゥゥゥンっと風が吹き、私に向かってくる水玉を全てバシュンっと切り裂いた。本来、風魔法というのは相手を吹き飛ばしたり敵の攻撃を受け流す盾にするのが本来の使用用途なのだが……ローズ様の風魔法は特別で、風魔法で相手を攻撃することが出来る。前世の知識で名前をつけるならば、そのまま安直に鎌鼬かな。
「……なっ!?風魔法で俺の水魔法を切り裂いただと!?」
「ふふっ。私の風魔法はちょっと特殊なんだよね。……リアン、君がこれに対応できるか分からないけど……私ももうちょっと強めの行こうかな!……水よ。はぁぁぁぁぁ!」
私はマイを助けた時と同じように大量の水玉を出して、それをひとつに凝縮させて、槍にする。そしてそれを投げる。
「うおっ!?あっぶな!今の、水魔法なのか!?」
リアンはそれをギリギリで避ける。……面白い、面白い!ちょっと手を抜いていたとはいえ私の水槍が躱されるなんて!
「おぉ~!私の水槍を避けるなんて……!なら、これはどうかな!水よ!打ち砕け!」
今度は普通詠唱で、さっきより多い水玉を出して、凝縮させる。やがてそれは15本の剣となり、私の頭上で停止した。
「槍の次は剣かよ……しかも15本って……。」
「全然行けるでしょ?さぁさぁ、突撃!」
「うわっ早っ!避けさせる気ねぇだろこれ!」
「……ローズってあんなに楽しそうに戦うんですのね」
「何気にローズ様、ちゃんとした相手との勝負は初めてじゃないですか?」
「え?そうなんですか?」
「言われてみれば確かにそうでしたわね。私達が知ってる限りだと相手がすぐに逃げてくか倒されるかのどちらかしかなかったですもの。」
「……やっぱり流石ローズ様!このルートでもその強さは健在なんだ。」
「……リリー様?何か言いましたか?」
「え?いえ、特に何も。」
「ちっ、拉致があかねぇ!そろそろ一発行かせてもらうか!……水よ!我が命に応じ全てを打ち砕きたまえ!……はぁっ!」
「おっ、完全詠唱。なら私も。……風よ、我が命に応じ全てを切り裂きたまえ!……てやっ!」
リアンは完全詠唱で水の魔法を行使し、今まで飛んできた水玉はとてつもなく大きな球体となり、私に向かって迫ってきた。それを、同じく完全詠唱の風魔法で、斬撃の間隔を短くした鎌鼬をそれにぶつける。まぁ、私の魔力が跳ね上がるんだ。少し押された後、その水の球体は切り裂かれた。
「完全詠唱でもダメか。なら……一か八かだ!食らってみろ!俺の全力だ!……水よ、その力を解き放て!」
「あー……これはちょっとまずいかも?」
私の周りに円が描かれ、そこにうっすらと水が溜まっていた。
いやーうん。まぁやっぱリアンなら柱魔法なんて使えるよね。
どうしたらいいものか。……そうだ。手加減の練習も兼ねてやっぱり私も柱魔法を使おう。……よし、風でいいや。
「……〈水の柱〉アクア・ピラー!」
そうリアンが唱えると、私の足元からドバァァァァァっと水が溢れ出す。水の柱アクア・ピラーは、中に居る者に対し絶えず水玉で攻撃し続ける技。塵も積もれば山となる、ということわざがあるようにいくら私と言えどもずっと喰らい続けるのも面倒だからな……。
「……風よ!我が命に応じ全てを切り裂きたまえ!……はあぁぁぁぁぁっ!」
「……なっ!?俺の水の柱アクア・ピラーを風魔法の完全詠唱で抜け出しやがった!?」
「……それじゃあ私もお返ししなきゃね!いくよ、リアン!……風よ、その力を解き放て!」
と私が唱えた瞬間だった。キューブ状の結界がミシミシと音を立ててヒビが入り、割れる寸前だった。アミュスの木も何本かが真っ二つに割れて倒れていた。
「……あー……へっ、俺の負けだな。こりゃ。完全にやられたわ。」
「でも、リアンもすっごい強かったよ?」
「そう言って貰えて嬉しい限りだ。……今度は絶対勝つからな」
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