第13話 元忌み子は秘めた力を見せる

「さぁて、それでは皆さんには軽~く自己紹介をしてもらいましょうかぁ。お名前と、出席番号、それから何か一言だけで構わないわぁ。それでは一番さんからどうぞぉ。」




うーん可愛い。美しい。さすが制作陣のありとあらゆる性癖が詰め込まれてるだけはある。この「~~だわぁ」とかそういう話し方って前世だとぶりっ子とかのイメージがほんとに強くて私は苦手だったんだけど……不思議なことにノープ先生はこの話し方が一番しっくりくる。そして先生に言われた通りに一番の人から自己紹介を始めていく。まず最初は四番のイリア。


「出席番号四番、イリア・ミシェンスですわ。以後、お見知り置きを。」


大きくなったイリアは以前と違い髪をポニーテールにしている。あと胸が大きくなった。それとこの四年間でとても自分に自信を持つようになり、ラーベルとの仲も変わらず良好なようだ。ただ何故か私にとてつもなく懐いてる。超かわいい。


そして次は三十四番のマイだ。このクラスは四十五人のクラスであり、出席番号も五十音順という、ほとんど前世と変わらないシステムのためら行である私達はかなり後ろのほうになってる。……なぜ席だけは番号順じゃないのだろうか?


「出席番号三十四番、マイ・サヴェリスです。私の事を悪評で知ってる人が多いかもしれませんが決して私は呪われてません!どうかよろしくお願いします。」


先ほども言ったがマイも同じように自分に大きな自信を持ち、以前のアベルとのデートで言ったように、『私はこの世の誰よりも幸せだ』と思って過ごしており、今こうやって私は呪われていない、と断言できるまでになった。がまぁ結局その悪評はついて回っているようだ。けど全然気にしていない。それどころか、定期的に私と髪飾りを探しに行くくらいだ。ちなみに今は私とマイでおそろいの星のヘアピンをつけている。


次は三十六番のラーベル。




「出席番号三十六番、ラーベル・ムースです。兄ともどもよろしくお願いします。」


「きゃー!ラーベル様ー!!」




ラーベルは特に四年前からあまり変化がなく、強いて言うなら髪が少し伸びて顔が良くなったくらい。


繰り返そう、ラーベルはとても顔が良い。だからこのように少し笑うだけでこの有様だ。


実際ほんの少しだが私の心に響いた。そして次にリアンだ。




「出席番号三十七番!リアン・ムースだ!これからよろしく頼むぜ!」




と、リアンは皆に向けて笑う。うん、めっちゃキラキラした笑顔だ。擬音をつけるとしたらそう、まさににかっと笑った、みたいな感じだ。次に三十八番のリリー。




「出席番号三十八番、リリー・クレスアドルですわ。皆様、これからどうぞよろしくお願いします。」




リリーやリアンに関してはほんとに対面が一.二回ほどしかない為あまり深くは言及できない。


そして最後にこの私……出席番号四十番、ローズ・コフィールだ。




「出席番号四十番、ローズ・コフィールです。皆様、何卒よろしくお願いいたします。」




よし、特に目立つようなことも言わず、行動も起こさず、平和に自己紹介を終えることが出来た。そうして私達が終えた後は特に何も無く、そのまま四十五番まで行った。




「皆さんありがとうございまぁす。それじゃあ早速ですが、実力検査を行いまぁす。なので皆さん、外のグラウンドに行きましょう!」


「実力検査ですか……何をするのでしょう?」


「魔法だったらどうしましょう……私、魔法は苦手なんですの……」




と、マイが疑問に思い、イリアが不安そうにする。が、私はもう、この先の展開を知ってるので二人には申し訳ないけど……実は魔法試験なんだよね……。いやまぁ……マイもイリアも苦手って言う割には魔法凄いのも知ってるし……




「入学検査っていうくらいだし、きっと大丈夫なんじゃない?さ、早く行こっか!遅れちゃうよ!」


「まぁ……そうですね!早く行きましょう!」




それから私達は、グラウンドに集合した。はぁぁ……四年ぶりの体操着だ……。ちょっと胸の部分が強調されていていつもの先生よりなんというか……妖艶だ。




「はぁい、それじゃあ魔法試験を行いまぁす。この的に魔法を使ってくださぁい。そうしてくれれば正確性と威力で皆様の実力を把握しまぁす。でもそれだけじゃつまらないだろうから……ちょっとこうして面白くしましょうかぁ!……ぜーんぶ……固くなってくだ、さいっ!」


「的が……!?」


「見るからに固くなりましたわ……!」


「皆さんにレベルをあわせましたので……皆さんにはこれを壊してもらいまぁす。それじゃあ一番さんからお願いしまぁす。」




先程まではまさに木、という感じの的だったのだが、先生が魔法を行使したらその的全てが見るからに並のガラス以上の硬さを持つようになっている。


……何気にこれも私が知らない展開だ。けど……まぁ多分私なら問題ないでしょ。何せまぁ私だし。


それからとりあえず最初の三人が苦戦しながらも何とか壊して終わった。そしてまず四番のイリア。




「次、四番のイリアさぁん。」


「はい!」




イリアの魔法って……なんだっけ。単に私が覚えてないのか私が見てないだけなのか……




「あまり魔法は得意では無いのですが……やるだけやらせてもらいますわ!……雷よ!我が命に応じて降り注ぎ、全てを焼き払いたまえ!」




イリアがそう唱えると目の前の的に大量の雷が降り注ぎ、目の前の的は灰となった。……あぁそうだ。確かイリアは滅多にいない雷魔法の使い手なんだ。にしても、まさか完全詠唱でくるとは……。


この世界の魔法には、詠唱・略唱・完全詠唱の三種類がある。魔法にはそれぞれ詠唱によって威力が異なるという特徴があり、普通の詠唱……炎魔法で例えよう。炎魔法の普通の詠唱は「炎よ、焼き払え」。これが、普通の詠唱で威力はある程度の魔物……主にスライムや名前忘れたけど木の化け物とかは楽に倒せるくらい。次に完全詠唱。威力は詠唱より三倍ほど上がるのだが、その分詠唱時間が普通より長くなったり、体力が半分くらい持っていかれたりとちゃんとしたリスクもある。


最後に、主に私が使っている略唱。これは私も前に何度か使っているが、詠唱の初めの部分だけで良い。なので炎魔法だと「炎よ」だけでいい。威力は個人の魔力量に関係する。ローズ様は生まれつき桁違いな魔力量を持っているので、略唱でやっと並の人間の完全詠唱レベルだ。もちろん、無詠唱で打つことも出来るがその分威力は大きく下がる。それからマイまでの三十人は普通詠唱で苦戦したり、完全詠唱で楽々破壊したりと特に何かと面白みがなかった。




「次、三十四番のマイさぁん」


「次マイじゃん!頑張ってね、マイ!」


「は……はい!全力で頑張ります!……ローズ様が応援してくれた!」


「ちょっと……全力で行かせてもらいます!」




マイが魔法を行使しようとする……直前、的の周りの床に炎で円が書かれる。そしてそこが黒で光っている。


……あ待ってこれかなりやばいやつ!




「行けるかどうか分からないけど……とりあえず皆を空に……飛ばす!」




私はバレないようにこっそりと皆に飛行魔法を付与しておく。


マイがどんな魔法を使うのか私は知っている。


きっと、私が応援しちゃったから興奮してるんだろうな……応援しない方が良かったか……?




「炎よ……我が全てを解き放て……」




マイの目元の黒い雫がとても強く光を発して、的の周りの円から黒い炎が溢れ出す。それは、完全詠唱よりも上の魔法……




「……飛べ」


「うわっなんだこれ!?体が浮いてる!?」


「誰か元に戻して~!!」


「……見ろよあれ!なんなんだあの魔力は……!」




「〈炎の柱〉フレイム・ピラー」




完全詠唱を応用して、その力を一点に集め大きな力の柱としてぶつける魔法……そのまんまだがありとあらゆる属性の頂点に君臨すると言われている、柱魔法。……そういえばそうだ、思い出した。マイの目元の雫には大きな魔力が宿っており、そのおかげでマイも柱魔法が使えるんだ。




「はぁ……はぁ……」




まぁ……結構体への負担も大きいから言い方あれだけどマイくらいなら余裕で倒れちゃうけど……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る