悪役令嬢16歳(一年生)
第12話 悪役令嬢はいよいよ入学する
それから驚くほどあっという間に四年が経ち、いよいよ魔法学校入学の日がやってきた。この四年でマイやイリア、ラーベル、アベルとはとても仲良くなった。イリアはもう敬語すら要らないという話になり、普通にお互い話すようになった。イリアの方は相変わらずのですわ口調だ。
ラーベルも私に敬語は使わなくなった。だから普通に私の事はローズと呼んでる。そして私は相変わらずラーベル様と呼んでいる。次にマイ。マイはとっても明るくなった。その腕の傷も全て消えて、出かける時だろうとどんな時だろうともう自分の髪を隠すことは無くなった。ただちょっと様子が変になった。
「ローズ様は私だけのもの……」だとかこれに似たような事を
ずっと言ってる。ちょっと怖い。
アベルは、以前に増して笑うようになった。あの遊園地デートの甲斐あってか、もうメイドの仕事には慣れたようだ。そして以前よりも全ての所作に無駄がなくなってきてる。所詮噂に聞いた程度だけどアキ様にメイドとして弟子入りしたみたいだからそれも関係あるのかも?
後これが個人的に一番大きなことかもしれない。やはりところどころボロが出てしまい、話し方が変になってしまうためイリアやマイから折角だから無理に令嬢らしくしなくていいと言ってもらえた。だからこれからは変にローズ・コフィールの口調で話すのではなく茨 峰華の口調で話せる。なんだかんだで結構気を使ってたから本当助かる。
「……ついに来た!この日が!かかってこい!魔法学校!」
「一人で何を言っているのですか、お嬢様。もう準備の方は大丈夫ですか?」
「もちろん!いつでも行けるよ!」
「そうですか。でしたら、気をつけて行ってらっしゃいませ。」
「ありがとう、アベル。それじゃあ、行ってくるね!」
「はい。」
と、私は玄関から外へと出る。多分前までなら学校なんて飛行魔法でパパっと行っていたことだろう。だけど、今は違う。なぜならば……
「おはようございます、ローズ。今日はいつもよりいい朝ですね」
「ええ!私達の新しい門出にとてもふさわしい朝ですわね!」
「おはようございます、ローズ様!いよいよ魔法学校……緊張しますね!」
「イリア、マイ、ラーベル様、おはよう。うん!今日はとってもいい朝だね!」
私の家の前で待ってくれている三人がいる。
この四年間でみんながみんな凄い仲良くなり、少し前に行われた私の誕生日パーティーにて、「せっかくなのだから、皆で集まって登校しましょう!きっとその方が楽しいわ!」
というイリアの提案で、おそらく私はこれからみんなとずっと登校する。というかきっと多分もっと増えるけど……
「ローズ様!手を繋ぎましょう!転んだら危ないですからね!」
「あっ!マイだけずるいですわ!私も!」
「本当にイリアもマイもローズの事が好きなのですね。」
「もちろんです!ローズ様は私を救ってくれましたから!」
「私もですわ!私も、ローズ様に救われましたから!」
これからが本番なんだけど……それでも、こうやって彼女達が笑えていてるなら、頑張った甲斐があったな。
左手にはイリア、右手にはマイ。……やはりもうほぼ慣れかけてきてるんだけど両手に花がすぎる。けど……ここからが本番。今まで以上に気を引き締めて、全てのバッドエンドの種を潰さないと。
「さて、着いた……ってうわ、大きい……!」
「……本当に大きいですね……!」
色々話してるうちに私達は魔法学校に着いた。
ゲームでも薄々大きいと思っていたけどまさかここまでとは……!
「あ、ローズ!クラス名簿ありましたわよ!」
「あ、ほんと?ありがとう、イリア。……ローズ・コフィールは……えっと……あった!1-c組だ!」
「奇遇ですね!ローズ様!私もc組です!」
「私もc組ですわ!」
「皆さんもそうなんですか。私もc組ですね。」
小中高と、知り合いがそばにいないと不安でしょうがない私からしたらこの上ない奇跡だ。
少し神に感謝するようにクラス名簿を見ていると、まぁ案の定というかなんというか。ひとつの名前が目に入る。
「……これはやっぱり変わらない、か。リリー・クレスアドル……」
ローズ・コフィールの五つ上くらいに書かれていた、リリー・クレスアドル。上を見れば、リアン・ムースの名前も書いてあった。そういえばこの時期ってもう婚約してたんだっけ。
「久しぶりですね、ローズ様。」
「はい、久しぶりですね。リリー様」
「まさか同じクラスになれるなんて思いませんでしたわ。」
「私もです。同じクラスになったのですから、是非仲良くやっていきましょう」
「ええ、そうですね。」
「はぁ……はぁ……全く……目を離した隙にすぐどっか行って……リリー、お前って奴は……」
私達の元に、水色の髪のツーブロックに、雫のイヤリングをしてる男が走ってきた。
「すいません、ちょっと久しぶりに再会をしたものでついはしゃいでしまいましたわ」
「そういえば、兄様も同じクラスでしたね。」
「ん?あぁ、ラーベルも同じクラスだったのか。」
「お初にお目にかかります、リアン様。私、ローズ・コフィールと申します。」
「おぉ!お前があのローズ・コフィールか!ラーベルからよく話は聞いてたぜ!俺はリアン・ムースだ、よろしくな。」
男の名はリアン・ムース。我が国……ムース王国の第一王子であり、ラーベルの兄。そしてリリーの婚約者。性格は本当にラーベルと真反対だ。とても元気があり、誰とでも直ぐに打ち解ける、クラスに一人はいる異常なまでに話しやすい人みたいな感じだ。
「……ラーベル様から私の事を?」
「おう!一緒に遊んだ事とか、イリアの事とか色々聞いててなかなかに面白い奴だと思ってたが……まさか同じクラスになれるとはな。楽しい学校生活が送れそうだぜ!」
「それじゃあ、クラス名簿の確認も終わった事だしそろそろ教室に行きましょう?」
「それもそうだね、早く行こっか」
ある程度クラス等々の確認が終わり次第教室に行くように、と書いてあるのでその通りにパパっと確認を済ませた私達は、1-cと書かれた教室へと入った。
「やりました!ローズ様のお隣の席です!」
「私もですわ!よろしくお願いします、ローズ様!」
席は色んなゲームでもよく見た3つくっついてるタイプで、真ん中に私、左にマイ、右にリリーとなっている。
私達は一番前で、後ろにはイリア、その横にラーベル、更にその横にリアンとなっている。
「おっ、ラーベルの隣か。よろしくな!」
「ええ、よろしくお願いします、兄様。それと、イリアも。」
「ローズの隣が良かったのですけれど……ラーベル様が隣で良かったですわ。それに、ローズは前の席ですしね。」
「……そろそろ先生来るかな?」
「お、噂をすればなんとやら、ですね!にしても……凄い美しいですね、先生……」
「やっぱりいつ見ても美しいな……」
「生で見るとこんなにも美しいなんて……目が焼ける……」
「?ローズ様、今何か言いました?」
「いえ?私は特に何も言ってませんが……リリー様も何か言ってませんでした?」
「いえ、私も特に何も言ってませんけど……」
「え?」
「え?」
危ない危ない、素を出してしまったけど……聞き取られてなくてよかった。そういえば……リリーも何か言ってたような?まぁ本人は違うって言ってたし違うのかも。
それより、だ。
私達の担任であり、誰もが認める絶世の美女……ノープ・スロード先生。白いスーパーロングヘアーに、深紅の瞳。口元の黒子に、全ての男性を虜にする少し大きい胸。それからメガネに少しおっとりとした喋り方。制作陣のありとあらゆる性癖を詰め込まれたキャラクターだ。思わずボロが出るほどに美しく、マイもその美しさに驚いていたほどだ。
そして黒板に魔力で文字を映し、先生は話す。
「皆さん初めましてぇ。私はこの1-cの担任の、ノープ・スロードでぇす。良ければ、スロード先生って呼んでくださぁい。」
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