ナイフ
図工室にて探している最中だ。
不死川命は手頃な道具と言うものを探していたのだが、それが中々見つからなかった。
「ペンチとかノコギリとかハンマーとか、拷問器具でしかないだろ」
そんな事を呟きながら不死川命は道具を探している。
ある程度の道具であれば、武器としては十分だろう。
ノコギリやハンマーも、使い方を間違えれば人を死に至らしめるものだ。
だが、日常に近い道具を使う事に不死川命は忌避感を覚えている。
カッターナイフが典型的だ。
工具として使用されるカッターナイフ。
これを人殺しの道具として使ってしまえば、最早その道具は日常の一部として扱う事は出来ない。
柄を握る度に、生物を殺した感触が蘇ってくるのだ。
そう考えると、他の道具もまた、殺しの道具として使うには適していないだろう。
「…はぁ、どうするか」
不死川命は困まり果てていた。
直に、生徒会長から呼ばれるだろう。
そうなると、不死川命は探索隊として向かわなければならない。
その間に、戦闘用の武器が無いと言うのは、何とも不味い状況だった。
「…なんとか、しねぇとな」
図工室から出る。
不死川命は、脳内で多くの武器の事を考えていた。
「…ナイフ、何処かに、ナイフがあればなぁ…」
そう呟きながら廊下を歩く。
物騒な事を呟いていた。
その時だった。
「…ん?」
目の前に、一人の生徒が立っていた。
異国の出で立ちなのだろう、顔の作りからして西洋の雰囲気を醸し出している。
髪の毛が肩元まで切り整えられた生徒は、不死川命の方を見ていた。
「…なんだよ?」
不死川命はそう言った。
彼は何も言わなかった。
そしてゆっくりと、不死川命に近付いていくと…。
腰に携えたものを、不死川命に渡した。
それは、軍用で使用されるナイフだった。
それを受け取って、不死川命は呆然とナイフを見ている。
ナイフが偽物では無く、本物である事を察すると不死川命は振り向いた。
「いや、これ、なんだよ…って!?」
振り向くが、其処に生徒の姿は無かった。
ただ、不死川命は、ナイフを持ちながら、その場に立ち尽くしている。
一体、なんだったのだろうか。
不死川命はそう思いながら、与えられたナイフを握り締めた。
「…」
少なくとも、このナイフがあれば戦う準備が出来た、と言うものだろう。
誰が渡したかは分からないが、それでも不死川命はそのナイフを有難く使う事にするのだった。
そして…ナイフを渡した生徒とは、また逢う事になる。
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