手頃な武器


料理部で試しに小鬼の肉を食べた不死川命。

案外味は悪く無かったが、これは喰代日和子の腕が良かったのだろう。

満腹感を感じる不死川の隣で、阿久刀壱心が話しかけて来た。


「ところで、不死川くん、キミは一体、武器には何を使う気なのかな?」


その台詞に、不死川命は唐突だと感じた。

いや、最初から聞く機会を伺っていたのかも知れない。

不死川命は、彼がこの話題に興味津々である事を察した。


「なんですか、阿久刀先輩、藪から棒に」


不死川命は、食器に置かれたナイフに目を向ける。

本日の料理は、小鬼の脹脛のステーキだった。

その際に使われたナイフに視線を落とした。


「気になるじゃないか、キミ…殺しを本業とする者が、何を使うのかを」


そう言われて不死川命は否定する。


「別に…俺は一人も殺した事なんて無いですけど…」


渋々と不死川命は皿に置かれたナイフを取る。


「これで良いんじゃないっすかね?」


ナイフを握り締めながら不死川命は言う。

軽く手を動かしながら、ナイフを投げては掴むと繰り返すと。

背後から小さな手がニュッと伸びて来て、彼の持っているナイフを奪った。

後ろを振り向くと、其処には喰代日和子がいた。


「料理用のカトラリーで遊んじゃダメですよ」


笑っているが、目が笑っていない。

怖ろしい人物を相手にした気がした。

周囲の空間も、重苦しくなっている。

筋肉で出来た料理人たちが拳に怒りを貯めていた。


「…取り合えず、図工室で手頃な道具でも見つけようじゃないか」


「そ、そうっすね」


不死川命は見てはいけないものを見てしまった様な気分に陥った。

そして、不死川命は共に図工室へと向かう。

阿久刀壱心は、一先ず刀が研ぎ終わるまで、料理室で待機する事に決めた。

なので、一先ず彼と別れて、不死川命は一人で図工室で殺す為の道具を探すのだった。

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