研ぎ約束
「ボクが此処に来たのは一つだけ、これを研いで欲しいんだ」
模造刀を彼女に差し出した。
それを受け取った彼女は、最初は呆けていたが、阿久刀壱心の言葉を理解した様子で驚いた。
「これって…えぇ!?に、にほんちょうッ、をですか!?」
驚きのあまり、舌を噛んでしまう喰代日和子。
彼女の反応を見て、不死川命は苦言を漏らした。
「なあ阿久刀先輩、幾ら料理部でも、それは難しいんじゃねぇのか?」
不死川命の言葉にまたしても首を傾げる阿久刀壱心。
「え?どうしてだい?」
不可解なことを言う、と言った様子だ。
「いや…だって、日本刀と包丁は別ものだろ」
食材を捌くのが包丁。
人を斬るのが日本刀。
生きている物体を斬るのが刀であり、動かない材料を切るのが包丁。
どちらも同じ刃物だが、本質は別物だ。
「うーん、そうかな?だけど、百千万億生徒会長は、彼女は研ぐことが出来ると言っていたしね」
その言葉に同調するが如く、高らかに声を荒げる料理部の部員。
「おいテメェ!ウチの部長をあまり舐めないで貰おうか!!」
声量が大きく、耳を押さえる不死川命。
「(筋肉料理人が話に入って来やがった…)」
二の腕の筋肉を奮わせながら彼は激怒の如く喰代日和子を語り出す。
「ウチの料理長は料理の腕は勿論、全ての調理器具は料理長が管理、手入れをしてんだ!刃毀れ一つすらしてねぇ最強の包丁だって作れるぜ!!」
余程、彼女の事を高く評価をしている。
その尊敬の意を込めて、部長では無く料理長と呼ばれていた。
「え、いや…あの、そ、そこまで言わなくても…私は、好きでしてる、だけだから…」
恥ずかしそうに、視線を逸らす喰代日和子。
人差し指と人差し指を合わせながら、手遊びをしていた。
そして恥ずかしさを紛らわす為に、阿久刀壱心の持ってきた模造刀を抱えたまま言う。
「え、えぇと…阿久刀さん、どちらにしても、初めてだから、完全に研げるかどうかは分からないけど…やってみるね?」
気合は入っている様子だった。
彼女の言葉に、阿久刀壱心は微笑む。
「うん、ありがとう、喰代さん」
これで、阿久刀壱心の戦力は強化された事が約束された。
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