刀が欲しい
相応の対応を終えた後。
阿久刀壱心は百千万億生徒会長の方に言伝をする。
「あぁ、それと、百千万億生徒会長、弦弓は参加は表明したけど、応援団長の方は参加を拒否したみたいだ」
人間音響兵器と言う異名を持つ轟鬼響鬼応援団長は今回の捜索隊は不参加である事を伝える。
それを聞いた百千万億生徒会長は仕方が無いと頷いた。
「…成程、それなら仕方が無い、キミだけでも、参加してくれて助かるよ」
そう言われた事で、阿久刀壱心は謙遜していた。
だが、彼の本題は此処からだった。
「良いんだ、と言っても、後付けで悪いが、一つだけ条件がある」
その条件、それを聞いた事で百千万億生徒会長は彼の顔を見て帽子のツバに触れて整える。
「聞こうか」
姿勢を整えた後に、阿久刀壱心は自らの木刀を腰から引き抜いた。
そして、その木刀の切っ先と柄を握ると、力を加える。
軽い力である筈なのだが、木刀の中心が歪んだ。
どうやら、戦闘によって使い過ぎたらしく、折れかかっている。
「出来れば太刀が欲しい、本物の太刀がね、今の僕だと木刀しか使えない、これで斬れなくも無いが…本物が欲しい」
本物。
真剣を欲している阿久刀壱心。
学園に真剣があるのかどうか不明ではあるが。
彼は、日ごろから目に付けていた武器があった。
「キミの生徒会にある軍刀…それを使わせて貰えないだろうか?」
元々、寺子屋から塾、学園へと転化し続けながら存命し続けていた八百万学園。
その変革の途中で、軍人学校になった経歴もある。
生徒会が結成された時期は軍人学校時代であり、その時に初代生徒会長が使用していた軍刀が、生徒会に飾られていた。
当然、真剣であり、手入れもされているので切れる。
真剣を使えば、阿久刀壱心は多大な強化を得る事が出来るのだが…
「…あれは生徒会に就任する際、旧生徒会長から新生徒会長へと引き継がれる儀式用の道具だよ、悪いけれど、貸し出しは出来ない」
その様に断った。
貸し出せば良いのだろう。
だが、その軍刀はまた別の役割があった。
迂闊に、人に貸し出す事は出来ない。
それを聞いて落胆する所か平然とした表情を浮かべる阿久刀壱心。
「そうか、いや、良いんだ、言ってみただけだからね」
ダメならば仕方が無い。
潔く自ら引いた。
しかし、百千万億生徒会長も彼が真剣を使えば強い事を知っている。
代わりの条件を彼に提示した。
「その代わりだけど…剣道部の道場に置かれている模造刀、あれは実際の日本刀と同じ鍛錬工程を行い、刃だけを削った代物だそうだね」
剣道部にも刀が飾られている。
だがそれは、あくまでも模造刀である。
「身なりは刀だけど、使えるとは限らないよ」
刀を実際に振った事があるのだろう。
しかし、あまり使い勝手が悪い、と言いたそうな口調だった。
「模造刀を研げば日本刀として使える…だからと言って、素人が研いでも刀身の削れ具合で刃先が滅茶苦茶になってしまう」
だが、逆を言えば、きちんと研ぐ事が出来れば日本刀として使える、と言う事だ。
「刀匠顔負けの研ぎ師を紹介しようじゃないか」
その様に、百千万億生徒会長は言うのだった。
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