衝動の抑え方
「いや…正確には、抑える方法を知る者を教える、と言った所かな?八百万学園にはあらゆる情報が集っているからね、その情報源からキミの事も聞いたんだ」
広報委員会から聞いたとは言わず、それだけを濁して不死川命に伝える。
「そして今のボクには、キミと同じ不死川家…その宗家となる不死原一族の血族が居る事を知っている」
その人物は、殺傷衝動を抑えているかは定かでは無い。
だが、全校生徒の名前と数値を覚えている百千万億生徒会長は、一度その生徒に出会った事を覚えている。
そして、其処からその生徒の姿を思い出して、先ず、殺傷衝動は無かった事を改めて思い出した。
「その人物は、殺傷衝動を自らの力で抑え込む事が出来ているらしい…もしもキミが参加を志願してくれるのならば…その人物を教えよう」
十分な交渉材料だ。
捜索隊に参加すればその情報を得る事が出来る。
彼が悩み続ける殺傷衝動は、今後起こる事は無い可能性が出るのだ。
そうなれば、最早、自らの血筋に悩まされる事も無いだろう。
普通の人生を歩む事も、不可能では無い。
だが、それでも尚、不死川命は首を横に振る。
「…衝動を抑える、事が出来るのなら…俺は、親父とは違う、それが証明出来る」
だが、それだけでは、ダメなのだ。
「だけど…その行為は、俺自身が衝動を抑える事を達成したワケじゃない、俺は、俺の手で親父を否定する」
誰かから教えを請い、殺傷衝動を抑える事が出来た場合。
それは、自らの力で抑えた事にはならない。
大切な肉親から得た才能、誰よりも憎い肉親から得た才能だからこそ。
誰の手にも汚さず、自分の力だけで克服したいのだ。
故に、第二のカードを切った所で、不死川命が首を縦に振る事は無かった。
「…だろうね」
当然、不死川命の成り行きを知れば、首を縦に振る事は無いだろう。
あれほど凄惨な事件を起こし、そしてその事件の詳細を情報から得た百千万億生徒会長は、彼が父親を憎んでいる事も、愛している事も知っていた。
そう…だからこそ、彼は勘違いをしていると、百千万億生徒会長は思えた。
「時に不死川くん、キミは、キミの父親が起こした事件を何処まで知っているのかな?」
決して聞き逃せない言葉だった。
事件は既に終わっている。
だが、生徒会長の言い方は、まるで嘘の話をされているかの様な口ぶりだった。
いや、そう思わせているのだろう。
今まで、情報を使って不死川命の上を取り続けていた百千万億生徒会長。
そしてその言葉は、全てをひっくり返す程のカードを持っていると思わざるを得ない。
「…どういう事だ」
当然、そう聞く他なかった。
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