情報を手繰る


「…それは、…俺は、人を助けたんじゃない、自分の為にやったんだ」


自分が誰かを救わなければ、この穢れた血を浄化出来ない。

その部分だけを不鮮明にして、大雑把に答える。

百千万億生徒会長は含み笑みを浮かべる、不死川命は見透かされている気分になった。


「そうだろうね、それが、不死川家の血だからね」


含みのある言い方だった。

不死川家の血、それは即ち、不死原一族の事を指しているのだと、不死川命は悟った。


「…あんた、俺の何を知ってるんだ?」


不死川命は、自らの全てが晒されているようで気分が悪かった。

彼の答えに対して、百千万億生徒会長は出会い頭に困った事を当てる占い師の様に彼に告げた。


「一通りは理解しているつもりだよ、不死川くん、キミは自分の血を呪っている、それは父親が殺人鬼であり、自分もまた殺しの才能を宿っているからだろう?」


殺しの才能を持つ。

同時に、殺傷衝動と言う不死原家特有の天性を持つ事も言い当てる。


「不死川家には、能動的な殺傷衝動と呼ばれる殺しの感性が極端に尖る状況になる事がある、けれどキミは、その衝動に抗う事で、殺傷衝動とは違う感性…救済行動に奔る様になった」


更に其処から、何故不死川命が他人を助けたかにまで繋げる。

洞察力では到達出来ない事であり、心の中を完全に見透かされた様に思えた。

こればかりは、不死川命は生徒会長が不気味に思えた。

自分の心は知られているのに、相手の心はまるで読めないのだから、仕方が無いだろう。


「それがどうした…正解だって、言って欲しいのか?」


だが、例えどれ程、心の内を見透かされたとしても。

彼が、捜索隊へと参加したいと願える程では無い。

此処から、どの様に話を展開させるのか。

そして、この話に意味があり、終着点は何処になるのか。

無論、百千万億生徒会長はその終点を用意している。


「捜索隊へ参加した場合…キミの殺傷衝動を抑える方法を知っている」


驚きの内容だった。


「…!?」


第二のカードを切った。

それは、不死川命の出生、家系図である。

一見、なんら関係の無い情報を、広報委員会は提示したかと思えるだろう。

だが、家系図を遡り、不死原家の血統から、別の分家へと視線を移して見ると…この学園に、見覚えのある名前が書かれていた。

これは十分に、不死川命が欲しがる情報だろう。

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