カードを切る

誰かの為に生きるなど、尤も無意味な行為であり、それを強要する百千万億生徒会長は、彼にとっての敵に該当する存在だろう。

彼の本心を垣間見た事で、百千万億生徒会長は目を細める。

彼の目に見える不死川命と言う存在、その負の感情を数値として読み取る。


「(…尤もな台詞だ、彼は誰彼助ける偽善者ではない、常に彼は自分の為に動くのだろう)」


冷静に分析した。

普通に頼んでも、お願いしたとしても、それでも不死川命は頑として首を縦に振る事は無いだろう。

だが、それで話を終わらせる気など無い。


「(だからと言って此方も引き下がるワケには行かない…此方には此方としての大義がある)」


生徒会長として、全生徒を守る役目がある。

例え、掌から無数の命を取り零したとしても、それでやる気を無くして、全てを投げだすなどと言う事は出来ない。

例えどれ程の決断と行動が間違えだったとしても、生徒会長と言う役割を得た以上、最後まで生徒を見捨てるワケには行かない。

それが、百千万億天満生徒会長が掲げるマニフェスト。

指を鳴らす、喉を鳴らす、相手を見定めて、腕を鳴らした。


「(ここからは交渉の時間だ)」


百千万億生徒会長には複数のカードがある。

それは、不死川命と言う存在を知った事で得た情報。

そしてその情報は、不死川命張本人ですら知らない事が描かれている。

それを使えば…不死川命を攻略する事が出来ると考えている。


「では、聞くが不死川くん、キミは何故、小鬼たちが襲撃した時に、彼女を…柊麗を助けたのかい?」


広報委員会の最新の情報を切り出した。

他者に興味が無い不死川命が、柊麗を助ける事など、有り得ない話だ。

その話を切り出された時、他人など興味が無いと言った手前、それを無理に否定する事等出来ない。

同時に、何故彼女を助けたのか、その理由を百千万億生徒会長に答える事を渋ったが、口を濁しても、指摘される可能性があった。

だから、仕方なく本当の事を不死川命は言う事にした。

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