400年生きた魔女ささくれに動揺する(KAC20244)

歩致

猫は悪戯好き

わし、400年くらい生きてる魔女。お肉食べたくてドラゴン倒したり、ちびとか言われてムカついたから国滅ぼしたりしてたらいつの間にか太古の魔女とかいうかっちょいい名前で呼ばれるようになってたのじゃ。今は弟子兼従僕である猫獣人のマリーと森で隠居中なのじゃ。


「従僕ー!!どこだ従僕よー!やばいのじゃ、まずいのじゃー!!」

「どうしたんですか魔女様こんな朝っぱらから大声出して。またお隣の森のエルフさんに怒られますよ。」

「うぐ、それは嫌なのじゃ……。あやつの説教は心を殺しに来るから苦手なんじゃよなぁ……。」

「それで?400年も生きた伝説的存在たる太古の魔女様がそんなに慌てふためいてどうしたんですか?」

「そ、それがゆ、ゆゆ指に、指にっ!」

「うーん?これはささくれ……ですね。これのどこに慌てる要素があるんですか?」

「ささ、くれ?いやいやいや、それくらいわしでも知ってるわ!そうじゃなくて、

ささくれができていることが問題なのじゃ!!」

「……?ちょっとよくわからないんですけど、どういうことですか?」

「従僕よ、少し勉強が足らんのではないか?わしは今よりもずっと前に自分自身に不老不死の魔法をかけたのじゃ。では弟子よ少し復習じゃ、不老不死の魔法の原理を答えてみよ。」

「えーと確か魔法をかけた地点を基準に基準から外れた瞬間に基準まで肉体を巻き戻すことで半永久的に不老不死を実現している、だったはずです。」


「うむ、よく勉強しておるが80点の解答じゃな。より正確には自分でどの程度まで基準からずれるのかを設定しなければならん。そして、基準まで肉体を巻き戻すというよりは基準にした肉体の状態を現在の自分に複写するのが不老不死の魔法じゃ。お主の説明で魔法を使うと永遠に基準にした時間に捕らわれることになるぞ。」

「なるほど、でそれがどうしたんですか?」

「まだ分からんのか?わしが自分にかけた魔法は肉体に少しでも異常があれば己に複写を行うのじゃ。つまりじゃ、わしにささくれができるという肉体への異常は起こるはずがないのじゃ!実際に魔法をかけてからささくれなんて見たことないからの。」


「へー。すごいですね。」

「もっと真剣に聞くのじゃー!!わしの完璧なはずの魔法にささくれができるという欠点があるとばれたらどんな風にバカにされることやら……。」

「そんな重要なことですか?ささくれなんて誰でもできる物じゃないですか。」

「従僕はなんにもわかってない!!わしのこの魔法は魔法史で1、2を争うとんでもない魔法なのじゃ!そんな魔法がささくれ、ささくれなんかでー!!」

「ならそのささくれ取っちゃえばいいじゃないですか。」


「はっ、それじゃ!早速……えいっと。」

「……。」

「……。」

「のう、従僕よ。」

「はい、生えましたね。ささくれ。」


「うがー!!!こうなったら風魔法で切り取ってしまうのじゃ!」


「また、生えてきましたね。」


「なら火魔法で燃やし尽くしてしまえば!」


「おーすごい指先のささくれだけ綺麗に焼いたのにまた生えてきました。」


「ぐぬぬ……。なら空間魔法でッ。」


「その黒い球体早くしまってください。私に当たったらどうするんですか。」


「また生えてきたのじゃ!しかたない……、この手だけは使いたくなかったのだがエルフに聞いてみるとするのじゃ。」

「どうやって聞くんですか。たしかエルフさんは旅行中では?」

「手紙を魔法で速達するのじゃ。」



『魔女よ、私が今旅行中と知っての手紙なのだと決めつけて返事を書く。この借りは高いと思え?早速本題だがささくれは乾燥なんかで起こりやすいものだ。だから保湿とかはしっかりして乾燥を防ぐと良い、というのが一般的な対処方法だ。しかし、お前の場合魔法の不具合のようなものが起こったのだろう。魔法についてはお前の方が知識があるだろうから、自分で何とかしろ。

p.s.ささくれ如きでこんな手紙をよこすな』



「ふーむ、保湿か。」

「え、結局魔法の問題ということでは?」

「わしは魔法のえきすぱーとじゃぞ?魔法の問題でないことなど分かっておる。じゃからとりあえず保湿してみようということじゃ。」


「保湿にいいものってなにがあるかの従僕よ?」

「水分じゃないですか?あったかくするのもいいかもしれませんね。」

「……水、それに暖かく、か。ほいっとな。」


「……。」

「……魔女様?遺言はありますか?」

「ま、待つのじゃ従僕よ!確かに水分だから水でいいかと水球を召喚してこの部屋水浸しにした後、暖かくということでサラマンダー召喚して部屋中の水を蒸発させるくらいの熱を解き放ったのは事実じゃが殺されるまでのことはしておらん!!」

「魔女様、私のプリンを台無しにした罪は重いですよ?」

「わ、わかった!プリン1週間分今すぐ用意するから許してくれ!」

「なら許します。次は無いですからね?」

「このささくれのせいで従僕をキレさせてしまったではないか!?やはりこれは諸悪の根源……。どうにかして取らなければ。」

「……、えいっ。」

「あ、従僕!急に取らないでくれるかの!?結構びっくりしてしm」

「取れましたね。」

「取れた、のじゃ。やったー!取れたのじゃ!!これで安心して眠れるのじゃ。ありがとうなのじゃ従僕よ!」

「ええ、よく眠れると良いですね。」











「まさか幻覚魔法がここまで魔女様に効くとは……。あそこまで取り乱すとは思ってませんでした。ん?これは。」


『楽しかったかの?』


「ふふ、魔女様はちゃんとわかっていたのですか。明日の朝食は魔女様の好物のパンケーキにしましょう。」

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400年生きた魔女ささくれに動揺する(KAC20244) 歩致 @azidaka-ha

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