第30話 戦い
「レオがマーブルシティを去ったあの後、
街中の冒険者がレオを探した。
手配書も配られ始めて、レオのことがすごく
心配してたんだけど、意外にも街中の
その熱は直ぐに冷めた。
だって、あの後、紛争が起こったからね」
「紛争だと……?」
俺はフェアリンの言葉に驚いてしまった。
だが、ここにいる俺とアルテミス以外は
本当に何も知らなかったのかと
俺の反応に驚いていた。
「一体なんで」
「亡くなったグレイスの座を狙った抗争」
その一言がまるで頭の中でこだまするように、
脳に刻み込まれていく気がした。
「誰と……誰が……」
「そんなの数えたらきりがないよ。
アブソリュート・ルーラーズの
メンバーだけじゃなくて、
他のギルドの冒険者たちも
アブソルート・ルーラーズの
ギルドマスターの座を狙っていたんだから。
けど、ほとんどの冒険者たちが脱落していった。
そして、最終的に残ったのは二人。
レオと同じパーティーメンバーだった
餓狼とローズだよ」
餓狼。
その名を聞くだけで怒りが湧き上がってくる。
グレイスさんとハンターさん。
そして、エリシアさんを殺し、
その罪を俺になすりつけた張本人。
こいつが……すべてを狂わした。
こいつがすべての元凶。
そんな餓狼がもしもローズに勝ってしまったら。
「それで……どっちが勝ったんだ?」
「餓狼」
最悪の答えが返ってきた。
「最後に残ったのは餓狼とローズだったけど、
他の冒険者やギルドも自分に
利がある方についたんだ。
その戦力差でローズとローズ派は負けた。
ちなみに、僕たちホーリー・ガーディアンズは
ローズ派だったよ」
「なのに……敗北したのか?」
「うん。グレイスが亡くなったあの事件で
ホーリー・ガーディアンズのメンバーも
たくさん戦死してた。
それに加えて、餓狼には誰も死人が
出ていない雲隠れ衆がついたからね。
まるで、計画していたみたいだろ?」
フェアリンは暗い顔をしながら
苦笑してそう言った。
「つまり……グレイスさんを
殺した餓狼の目的は……」
「アブソリュート・ルーラーズの座を奪うこと」
怒りが限界に達した。
「……ざけんな……」
「え?」
「あの野郎!! 長年世話になっておいて!
グレイスさんとエリシアさんに
あんなに信頼されておいて!
なのに!! なのになのになのに!
なんでそんなことができるんだ!!
屑が!!! ゴミが!!!!」
こんなにも憤慨してしまうのは
久しぶりだった。
怒りが収まらない。
許せない。
「……それで……その後どうなったんだ……」
湧き上がる怒りを必死に抑えながら
フェアリンに問う。
「餓狼がアブソリュート・ルーラーズの
ギルドマスターになった後、ローズは
マーブルシティを去った。
ほかのメンバーはギルドに残ったよ。
グレイスが築き上げてきたものを守るために。
けど、餓狼はこれまでグレイスが定めてきた
ギルドの方針を大きく変更した。
その一つがエルフィアのような管理下に置いていた
国や地域の治安維持の放棄だよ。
つまり、平和を守ることをやめてしまったんだ」
「……は? な、なんで」
「僕が知るわけないでしょ……
餓狼がそうしてしまったんだから」
フェアリンが不満気に答える。
「これがきっかけで世界は混乱に満ちていった。
保護されていた側が脅威に怯え、
アブソリュート・ルーラーズによって抑止されていた
闇ギルドが犯罪に力を入れ始めた。
そんな方針をしてしまった餓狼に、
他のギルドメンバーが賛同するはずもなく、
彼らは餓狼に歯向かった。
けど、餓狼に勝てずに、次々とギルドの
メンバーは脱退していった。
例えば、黒衣のベルニアとかね。
次第にアブソリュート・ルーラーズの戦力は低下し、
ホーリー・ガーディアンズが
ギルド序列1位になったんだ。
だから、これを機にグレイスがやってきた
平和の維持を僕たちが引き継ごうと思った。
その矢先だった」
「何が起こったんだ?」
「餓狼と青焔が手を組んでギルドを
合併したんだ」
「は!?」
「二つのギルドは狼牙震撼(ろうがしんかん)と
名前のギルドとなって、再びギルド1位に戻った。
アブソリュート・ルーラーズの四分の一のメンバーは
残ったままだったからね。
そこに雲隠れの衆が加わったんだ。
もうホーリー・ガーディアンズじゃ敵わないよ」
「……それってつまり……もうどのギルドも
太刀打ちできないってことじゃねーか」
「うん……その通りだよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます