第165話 町の冒険者ギルド
Side オルブラン・コルレン
セシリア隊長の命令で、キールの村から一番近い町『オスディス』に来た。
町に入ってすぐに冒険者ギルドの場所を聞き、そこを目指す。
この町の様子は、どこにでもある町のようで、人口が多いのかそれなりの賑わいもあった。
村の件が解決したら、隊のみんなで立ち寄ることになるだろう。
うちの隊長は、こういう町での買い物が大好きだからな……。
それはいいとして、この町まで乗ってきた馬を連れて冒険者ギルドを目指した。
町の住人の話では、町の東側にあると言っていたが……。
「ここだな……」
町の東側の区画に入ると、目の前に大きな建物が出現する。
三階建ての大きなもので、周りにある建物とは頑丈さが違うといったところか。
俺は馬をギルドの建物の横にある厩舎に預けると、ギルドの中へと入っていった。
入り口は開け放れていて、扉の類はない。
ギルドの中に入れば、昼を少し過ぎたところだったから閑散としているかと思えば、結構な人がいた。
簡単な革防具をつけた者や金属鎧をつけた者、いろいろな装備をしている者たちがいた。
武器も、剣や槍に弓、鞭や魔導銃を持っているものもいる。
本当に多種多様だな。
これが、冒険者たちだ。
俺はそんな連中を見渡しながら、受付へと足を運んだ。
「すまない、セシリア騎士隊のオルブランというものだが……」
「あ、はい、冒険者ギルドへようこそ。
それで、どのような御用でしょうか?」
受付にいた受付嬢は、笑顔で対応してくれた。
粗野な冒険者に対しても、この笑顔で対応して和ませるらしいが……。
「ああ、実はな、キール村から出された依頼なんだが……」
「キール村……、キール村……、あ、ありました。
オークの調査と討伐の依頼が出ていますね。あれ?」
「その依頼だが、どうかしたか?」
「あ、いえ、ちょっとお待ちください?」
そう言うと、再び依頼書の束から何かを探している。
そして、ある依頼書を見つけてカウンターに置いた。
「こちらは冒険者ギルドから出た依頼ですが、これもキール村関連の依頼です。
行方不明者の捜索、調査の依頼ですが、受注されたままですね……」
「ああ、それも含めてだが、セシリア騎士隊で引き受けようと知らせに来た。
その行方不明者の捜索、調査を受けた冒険者たちが、森で行方不明になったらしくてな」
「え?! 依頼を受けた冒険者たちが、行方不明?
これ、そんなに危険な依頼でもないはずなのですが……」
「それで、騎士隊で引き受けるための手続きに来たんだが、お願いできるか?」
「えっと……、それだと、騎士隊への報酬はなくなりますがよろしいですか?」
「ああ、それは構わない」
「分かりました。
今、手続きを行います。少々お待ちください」
そう言うと、キール村関連の依頼書を持って奥へと移動していった。
基本、冒険者ギルドに出された依頼は、冒険者が解決する。
それで報酬をもらうのだから当然だ。
また、騎士隊に来る依頼は、騎士団に出された依頼が来ることになっている。
もちろん、騎士隊への依頼も報酬が設定されているが、冒険者ギルドより安くなっている。
その分、時間がかかるのが難点なのだ。
それとは別に、他のギルドに出された依頼を、騎士隊で引き受けることがある。
その時、ギルドから支払われる報酬は受け取ることができなくなる。
特に、依頼を受けている冒険者などがいる場合は、報酬を冒険者などに譲って騎士隊が依頼を受けるようになっていた。
これは横取りという行為にさせない処置なのだ。
報酬は渡すから、依頼はこちらが解決するといっているようなもの。
これに賛同するか反対するかは、依頼を受けた物が判断することだが、今回のように依頼を受けた物が行方不明の場合は、ギルドが判断する。
まあ、依頼を受けたものは大半が譲ってくれていたが……。
しばらくして、受付嬢が奥から帰ってきた。
「お待たせしました。
ギルドマスターの判断で、セシリア騎士隊への譲渡手続きが完了しました。
報酬は、依頼を受けた冒険者たちへと渡ります。
また、その冒険者たちが死亡した場合は、ご家族などへ送られることになり騎士隊へは入りませんがよろしいですか?」
「ああ、それで頼む」
「分かりました」
そう言うと、依頼書に何か書き加えてポンポンと判を押す。
「これで、手続きは完了です。
依頼の成功をお祈りしています」
「ああ、ありがとう」
一礼する受付嬢に、挨拶をして受付カウンターを離れる。
これで依頼は、無事にセシリア騎士隊が受けることができた。
すぐに冒険者ギルドを出ると、厩舎へと足を運ぶ。
「……えっと、何か用か?」
俺の前に、二人の女性が立ち塞がった。
格好から、女性冒険者と思えるが……。
「さっき、キールの村の依頼を横取りしたようだが……」
「……ああ、セシリア騎士隊で横取り受注したが?」
「理由を聞いてもいいか?」
「……構わないが、訳ありか?」
「キール村関連の依頼を十日ほど前に受けた、三人組の冒険者の関係者だ」
「……そうか。
現在、キール村にセシリア騎士隊が逗留している。
その時に村長から、森に入っていった冒険者が次々に行方不明になっていると聞いた。
で、隊長の判断で介入をすることにした」
「……そう、か」
俺から報告を聞いて、二人とも表情を曇らせる。
そして、右側の女性が俺を見てお願いしてきた。
「あの、私たちもついて行っていいですか?」
「……は?」
「あなたたちの邪魔はしません。
私たちも冒険者です。自分の身は自分で守れますので!」
「いや、まあ、隊長が許可すれば……」
「では、よろしくお願いします!」
決意した表情で、俺に一礼する二人。
まあこういう判断は、セシリア隊長に任せる方がいい。
連れて行くにしても、村に待機してもらうにしても、隊長が判断するだろう。
二人の女性は、準備を急ぎ終わらせて町の門で俺と合流後、馬でキール村へ急いだ……。
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