第44話 その後と、奴隷商



王都を騒がせていた失踪事件は、片山のスキルであっさりと解決に導かれた。

また、コニーのダンジョンが見つかってから十日が過ぎたが、この間に目まぐるしく情勢は変わっていた。


まず、王都に出現したコニーのダンジョンは、スフェール様の尽力のおかげで公爵家が管理することで落ち着いた。

そして、スフェール様が責任者となり管理、運営をするようになるそうだ。


それと、スフェール様失踪した件で発見者などに出される報奨金は、事件解決をしたとして片山にではなくセシリア騎士隊に出された。

そのおかげで、王様からも感謝のためにセシリア隊長が呼ばれて、謁見の間で王様直々に感謝されたそうだ。


セシリア隊長が呼ばれたのは、貴族だったのと騎士隊の隊長だったからだろう。

そんな訳で、報奨金を隊のみんなで分けて各々です気に使っているらしい。


まあ俺は、使い道がないので今日も図書館へ向かっているのだが……。


そうそう、俺と武内さんは本の購入をあきらめた。

それは、あの騒動の後で連れて行ってもらった図書館を見たからだ。

保証金金貨一枚で、図書館の本読み放題が良かった。


保証金の金貨も、図書館を出る際には返却してくれるしな……。


コニーは、今もあのダンジョンにいる。

というか、ダンジョンマスターになった弊害でダンジョンから出られなくなったんだからしょうがないのだろう。

でも、コニー本人は、あまり気にしてなかったな。


それと、コニーと同じスラムの子供たちやスラムに住む一部の人もダンジョンに引っ越したらしい。

で、ダンジョン内に孤児院が造られたそうだ。


ダンジョン内には、公爵家指導の下、村が造られ人々が暮らし始めている。

スフェール様とコニーが一緒になって、いろいろな作物を作るらしい。


熊谷さんと佐藤さんは、あの時シャーリーさんと一緒に買い物を楽しんでいたそうで、一連の失踪事件のことは知らなかったそうだ。

隊舎に帰ってきてから、武内さんが一時期失踪してしまったことを知って慌てていた。


武内さんに抱きついて心配したり、佐藤さんも一緒に抱き着いて心配したりと三人で騒いでいた。

その後、失踪事件の真相やダンジョンのことを聞いて興味をひかれていたな。


そうそう片山だけど、失踪者をすぐに探し出したことが発覚して大騒ぎになったんだよ。

いろんな人から捜索の依頼があったり、衛兵の詰所からも捜索の協力が依頼されたりと忙しい十日間だったようだ。


毎日へとへとになって、帰宅する姿を見ていて気の毒に思えたな……。

まあもっと大変だったのは、その片山について行ったビリーさんかもしれないな。


異世界人である片山を、守るために一緒に行動したらしいからな……。

あ、そう言えば、水澤さんの様子がこのところおかしかったな。


食事も上の空だったと気があるし、毎日どこかに出かけているようだ。

変なことに、巻き込まれてなければいいのだが……。




▽    ▽    ▽




Side 水澤大輔


公爵家のお嬢様を見つけて報奨金を貰い、セシリア隊長がセシリア隊のみんなで山分けした。

山分けしたお金を貯めて、私は購入したいものがある。


それは、奴隷だ!


異世界に召喚されたあの時から、ずっと考えていたのだ。


異世界物の小説や漫画、アニメなどを見て私も異世界に行ったらと考えていた。

実際に行けるなんて今でも信じられないが、実際こうして異世界にいるのだから信じるしかない。


ならば私は、今こそ実行に移すしかないだろう。


私は報奨金の分け前を貰った後、話の分かるオルブランさんに相談してみた。


「ん? ミズサワは、奴隷を買いたいのか? 何のために?」

「……身の回りの世話?」

「フッ、何のために買いたいのか考えていないのに、奴隷を買うのか?

ミズサワ、まずは何のために奴隷を買うのか考えたほうがいいぞ?」

「……分かりました、考えてみます」

「おう、頑張れよ」


そう言って、肩を叩かれる。

でも確かに、何のために奴隷を買うのか考えてなかったな……。


隊舎の部屋は、片山君と高坂君との三人部屋だ。

ここに、私の奴隷を加えて四人で暮らす?


「……ないな」


うん、ない。ありえない。

逆に、片山君と高坂君が気を使いそうで、休まらないな……。


隊舎を出て、王都の中心に向かって散歩をしながら考える。


そう言えば、高坂君について図書館に行ったとき、この国の奴隷についての本を読んだことがある。

それによれば、奴隷には何種類かあるらしい。


まずは、借金奴隷。

これはその名の通り、借金が返せなくなって奴隷となった人だ。

借金奴隷の解放条件は、借金を返済すること。


また、法律でも安全は保障されていて風俗や性を目的とした扱いは違法となっている。

つまり、それで借金を返済することは禁止されているということだ。


次が、犯罪奴隷か。

犯罪奴隷は、犯した罪の重さで奴隷期間があるらしい。

また、就ける仕事も重労働を主にしていてかなり体を酷使して罪を償うらしい。


ただ、これも風俗や性を目的とした扱いは違法となっている。

自身の体を酷使して、罪を償えということだろう。


それから、裏奴隷だったか。

又は、闇奴隷というらしい。

この奴隷は、犯罪によって奴隷にされた者たちのことだ。


詳しいことは記載されていなかったから分からないが、犯罪などに巻き込まれて奴隷になった人たちのことらしい。

例えば、盗賊などに攫われて売られたとか、か。


真っ当な奴隷商では扱われていないらしく、購入するのは難しいらしい。


「……そういえば、奴隷の相場ってどれくらいでしょうか?

購入することばかりを考えていて、目的も金額も調べていませんでしたね……」


異世界で奴隷を購入する。

これが目標になってしまって、肝心なことを忘れていたな。


「今度、ビリーさんにでも奴隷商に連れて行ってもらいましょうか」


そう言った後、足を止めるとどこかの店の前だった。

ただ、店名が書いていない。


「……ここは、何のお店かな?」

「奴隷商ですよ、お客様」

「え?」


入り口の扉の前に、いつの間にか執事のような服を着た初老の男性が立っていた。

そして、私を見て笑顔で質問に答えてくれたらしい。


それはともかく、ここが奴隷商?

……ご都合主義ですか?







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