第42話 合流、そして
Side エミリー
「……」
アルニーの魔法で吹き飛ばされた木小屋跡に現れた、地下への階段の前で貴公子が立ちつくしている。
どこかで見たことある貴公子だが、今は向かってきている人たちの相手をしなければならないだろう。
「エミリー!」
「ビリー?! それに、セシリア隊長!」
「エミリー! それに、カタヤマにミズサワ!」
「何で、セシリア隊長がここに?」
「それに、一緒にいる連中はどちら様?」
セシリア隊長が私たちと合流すると思えたとき、その後ろから来た兵士たちが隊長を抜かして、階段前で立ちつくす貴公子の後ろに集まり跪いた。
「ウィリアム様! ご無事ですか?!」
「ハッ!!」
その声を聞いて、貴公子が振り返る。
そして、後ろに跪く兵士たちに声をかけた。
「お前たち、ようやく追いついたか!」
「遅れてしまい、申し訳ございません」
「構わん! それに見よ! この下に、我が妹スフェールがいるらしい。
そうだな?! そこの者たち!!」
兵士に話していたと思ったら、今度はこっちに話が振られた。
どう言えばいいのよ?!
それに、スフェール? スフェール……、って失踪した公爵令嬢?!
「その通りです、ウィリアム様!
その階段の下に、失踪した者たちがいるそうです!」
「だ、そうだ! 我々の手で、妹のスフェールを救出に行くぞ!!」
『『『『『オオォッ!!!』』』』』
『お待ちください!! ウィリアム様!!!』
やる気満々で、階段を降りようとしていた貴公子に立ちに向けて、大声でストップが言い渡される。
その大声に立ち止まり、貴公子たちはそちらへ顔を向けた。
私たちも顔を向けると、そこには肩で息をする衛兵の人がいた。
確か、ビリーと一緒に来た衛兵の一人だったはず。
「何だ? 衛兵が私の行動を止めるのか?」
「いえ、とんでもございません。
そうではなく、私たちも一緒に行きますと言いたかったのです」
「……お前たちも?」
貴公子ウィリアム様が、私たちを見渡し考える。
ビリーと一緒に来た衛兵の三人。セシリア隊長に私とアルニーの魔術師。
カタヤマとミズサワの異世界人二人。ミズサワの守護騎士一人。
そして、貴公子ウィリアム様と連れてきた兵士十二人。
地下へ行くなら、この全員で行った方が心強いように思える。
ウィリアム様もそう考えたのだろう、私たちの動向を許した。
「いいだろう。一緒に行こうではないか!」
そう言って、階段を降りようとした時、下の方から声が聞こえた……。
『……わたくしが、許しませんわよ……』
かなり小さい声だったが、確かに女性の声が聞こえた。
そして、その声に反応したのが貴公子ウィリアム様だった。
「スフェール!!」
ウィリアム様が、階段を勢いよく降りて行ったことをきっかけに、私たちもその後を追った……。
▽ ▽ ▽
スフェールさんに連れられて、転移してきた屋敷を出て外と変わらないフィールド階層を歩いていると、遠くにあるかなり広い畑が見えてきた。
一番前を、子供たちと手を繋ぎながら歩いているスフェールさんが振り返った。
「あそこが、私たちの畑ですわ。
他にもここへ飛ばされてきた人たちがいますが、今は種まきに集中してくださいませね。
真面目にしないと、わたくしが許しませんわよ?」
美人なスフェールさんが、眼を鋭くして注意される。
その迫力に、俺たちは黙って頷くしかなかった。
美人が睨みを利かせると、迫力が増すんだな……。
「よろしい! では…『スフェール!!』あら?」
そこへ、一人の貴公子が飛び込んできた。
さらに、その後ろからは兵士や見知った顔の人たちが、いつの間には出現した扉から入ってきていた。
こんなところに、扉なんてあったのか?
「スフェール!!」
「スフェール様!!」
「コウサカ! タケウチ!」
貴公子に兵士たちが、スフェールさんの名を呼んで涙ぐむ兵士までいる。
さらにその後ろから、俺と武内さんのことを呼ぶ女性がいる。
エミリーさんだ!
「エミリーさん!」
「エミリーさん!!」
「高坂と武内さん!」
「高坂君! 武内君!」
俺と武内さんがエミリーさんの名を呼べば、片山と水澤さんが俺たちの名前を呼んだ。
何で、片山と水澤さんがいるんだ?
その後ろには、エミリーさんが友人と言っていたアルニーさんとセシリア隊長がいるし……。
もしかして、俺たちが転移して消えたから片山のスキルで探してここまで来たのかな?
だとしたら片山のスキル、本当に便利だな……。
エミリーさんは武内さんに抱きつき泣いているし、片山と水澤さんは俺に無事でよかったと声をかけてくれた。
どうやら、みんなに心配をかけてしまったようだ……。
「何だと! そいつが元凶の、ダンジョンマスターだというのか?!」
俺たちが、再会を喜んでいると後ろで叫び声が聞こえた。
すでに剣を抜き、コニーを睨みつける貴公子の前に立ちふさがり、両手を広げてスフェール様がコニーを庇っていた。
「おやめください、お兄様!!」
「マスター、この者たちはいかがいたしますか?」
さらに戦闘メイドのアニーさんは、二本のナイフを構えて、剣を抜いた兵士たちと今にも戦闘を開始しそうだった。
「……何だ?」
「高坂君、あれはいったい?」
「水澤さん、片山さん、あそこで庇われている少女がこのダンジョンのマスターなんです」
「?! 本当かい?」
「あんな子が?」
二人とも驚いているな、無理もないが事実だ。
一色触発の状況ではあるが、俺は簡単にコニーがなぜダンジョンマスターになったのかや、これまでの経緯を話した。
すると、その話を聞いていたセシリア隊長やアルニーさんが、神妙な表情でコニーを見ている。
「それじゃあ、コウサカ君はコニーちゃんの味方をするのかい?」
「まあ、そうですね。
それにあの状況を見れば、コニーが悪い奴かなんて考える必要ないでしょ?」
「……確かにね」
水澤さんは笑顔で、肯定してくれた。
そして、懐からカードを取り出す……。
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