第40話 発見情報



Side ???


「失礼します!」

「おう、ご苦労さん」


今日も王都内での捜索状況が知らされてきたが、変わり無しとある。

それどころかまた一人、いなくなっているらしい。

もしかしたら、報告されていない失踪者もいるのかもしれないな。


「はぁ~」


報告書を読んでいると、ため息が出てしまう。

こんな報告を聞くために、衛兵に志願したわけではないんだがな……。


報告書を机の上に置き、立ち上がって後ろの窓の前に立つ。

外を見れば、王都の街並みが見えてくるし、下を見れば人々が行きかう姿が見える。

衛兵は、この王都の治安を守る兵士だ。


王都に住む人々を守り、人々の営みを守らなければならない。

それが今では、連続失踪事件に頭を痛めることになるとはな……。


そこへ、ドアをノックする音が聞こえた。


「入れ!」


私がそう言うと、すぐに扉が開き衛兵の一人が一歩だけ入ってきた。


「失礼します!

セシリア騎士隊より、失踪者の居場所を見つけたとの報告が入りました!」

「何っ?! 本当に、失踪者の居場所を見つけたのか?!!」


私はかなり驚いた。だがそれも仕方ないだろう。

今の今まで、何の手掛かりすらも見つからなかったというのにいきなり失踪者の居場所を見つけたときた。


「現在確認のために、報告してきたセシリア騎士隊の者と衛兵を三人付けて向かわせています! 確認でき次第、本隊が向かう予定で準備中です!」

「よし! 念のために、見回りも予定通り行わせろ!

本隊には、私も同行する」

「ハッ! そのように準備いたします!」


そう言うと、すぐに準備のために扉を閉めた。

私はすぐに、準備をするために掛けている上着を羽織り、部屋を出ようと扉の前までに移動する。

そして、ノアノブを握ると無言で気合を入れて、扉を開けて外に出た。


今日中に、私の頭を悩ませていた失踪事件を解決してくれる!




▽    ▽    ▽




Side ???


「準備はできたか?!」

「ハッ! ウィリアム様、先行部隊十二名、全員揃いました!」

「ではセシリア様、案内をよろしくお願いします」

「わ、分かりました」


セシリア騎士隊の報告で、今王都内で起きている失踪事件の失踪者の居場所が分かったと衛兵の詰所に知らせがあったと衛兵の知り合いから報告があった。


というより、妹のスフェールが失踪してからいつでも知らせてくれるように内通者を買収しておいたのだ。

それだけ、妹のことが心配なのだ。


妹が失踪してから、父も母もかなり落ち込まれている。

父にいたっては、公務に支障をきたすほどだ。


失踪時から、かなりの人を使って捜索したが手掛かりの一つもなかった。

ギルドにも協力を要請しておいたが、ギルドに寄せられる情報は怪しい物ばかりだ。

おそらく報奨金目当てと思われる。


やはり、自身で何とか探し出そうと躍起になっていたが、見つけることはできなかった……。

そこに、衛兵の内通者からの情報だ。


私はすぐに、セシリア騎士隊の隊舎に人をやり、隊舎にいたセシリア隊長を呼びだしたのだ。

セシリア殿も貴族の娘なのだから、礼儀に反した呼び出しなのは分かる。

分かるが、妹のためだ。


謝罪は、妹を見つけてからということで我慢してもらおう。


とにかく呼び出し、失踪者発見のことを聞けば、今まさに隊員の者たちが向かっているとか。

こうしてはいられないと、私も案内してくれとお願いし案内してもらうことになった。


先行部隊の十二名とともに、私たちは公爵邸を出発。

馬をゆっくりではあるが走らせ、失踪者がいると言われる場所に急ぐ。


待っていろスフェール、今兄が助けに行くぞ!




▽    ▽    ▽




Side 片山 亨(とおる)


王都を東門から出て、城壁沿いに南へ向かう。

城壁の外は、一応魔物もいるとのことなので、水澤さんが守護騎士のカードを使って護衛をしてくれる。


カードの仕組みで、守護騎士が一人しか出せなかったが十分だろう。

四人で走りながら、城壁沿いを走っていると粗末な木小屋を発見した。


「あれだ! あの木小屋の中に二人の反応がある!」

「あれですか? 片山君?!」

「小さすぎない?!」


水澤さんとエミリーさんは、驚いたり信じられないようだが俺のスキル『完全地図』には、高坂と武内さんの反応があの木小屋の中にあるんだよ。


俺のスキル『完全地図』は、知りたい地図情報を完全に表示してくれる。

それは、無くした物でさえも見つけ出すとんでもないスキルだった。


ただし、人物捜索は知っている人でなければ表示されないし、物の捜索は、その物のことを知らないと捜索できない。

魔物も名前と姿を知らなければ表示されないが、魔物がいるという表示はできる。


たぶん俺自身が、ゴブリンという魔物を知っているからだろう。


魔物と違って、人というものを知っているのに表示されないのは、表示してしまうと白い丸で地図を埋め尽くしてしまうからだろう。

チートスキルだとは思えるが、ちゃんと理解して使わないと悪用することも可能だな……。


そうこう考えている間、木小屋に到着した。


「……城壁に、引っ付けて造られているわね」

「扉はあるが……、鍵がかかっているか……」


水澤さんが、木小屋の扉のノブを握ってガチャガチャと回そうとしたり、引っ張ったり押したりしたが開くことはなかった。


「カタヤマ、二人の位置はこの中で間違いない?」

「はい、間違いありません」

「ねぇ、どの辺にいるか分からない?」


そう後ろから声をかけられ、手にしていたタブレットサイズの地図を手で触って動かしてみる。

すると、二次元の地図が三次元の地図に変わり、表示位置が変わった。


「えっと………、あれ?! 地下にいる?」

「「え?」」


俺の前で木小屋の側にいた、エミリーさんと水澤さんが振り返る。

あれ? じゃあ、俺に後ろから声をかけてきたのは?


「地下なら、その小屋は壊してもいいよね~」


……誰? この女性。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る