第39話 二人の居場所



Side エミリー


「高坂と、武内さん、ですね……出ました!」


カタヤマの力で二人を探してもらうと、すぐに結果が出た。

やっぱり、カタヤマのスキルはかなり使えるものだった!


「今はどこにいる?!」

「えっと、王都周辺で検索しましたが、これ、城壁の近くですね……」

「城壁近く?! 私たち、本屋にいたのに?!」

「え? どういうことなんです?」


カタヤマの足元に王都周辺の地図が表示され、そこに赤い点でコウサカとタケウチの位置が表示される。

一応カタヤマのスキルを見られないように路地裏に移動していたが、こう正確な地図が表示されたらかなりの騒ぎになってしまっていた所だ。


それにしても、城壁近くに表示されるってどういうことだろうか?

私たちは、王都の中心に近い本屋にいたはずなのだ。

この後、図書館に移動するために図書館に近い本屋を選んで行ったのだから。


それが城壁近くに移動しているって……。


「私たち、王都の中心に近い本屋へ行ったの。

そのあとすぐに、図書館へ移動するためにね。でもそれなのに……」

「王都の中心に移動したのに、城壁近くに……。

エミリー、本屋で二人はいなくなったんだよな?」

「ええ、そうよ。

本屋にはドアベルがあるし、出入りすればわかるわ。

それに私たちは、入り口近くにいたから出ていけばすぐに分かるはずよ」

「私たち?」

「ローズ騎士隊のアルニーに、本屋で会ったの。

それで、最近の話を聞いていたら失踪事件のことを聞いてね」

「失踪事件?」

「知らないの? ビリー。

最近王都で起こっている、連続失踪事件よ。

一緒にいた人が、いつの間にかいなくなるらしいの」

「……なるほど、それでカタヤマのスキルを使って失踪事件を解決しようと考えたら、一緒にいたコウサカとタケウチがいなくなってしまったと」

「……はい」


私はビリーに指摘されて、何も言えなかった。

アルニーとの情報交換に夢中になり、カタヤマのスキルで失踪事件をどうにかできると考えて動こうとして、コウサカたちが消えてしまったのだ。


「とにかく、これからどうするかですね。

エミリーさんの言われていた失踪事件に関係するなら、衛兵の詰所に知らせに行くべきでしょう」

「ミズサワ、それはダメだ」

「え、何故ですか?」

「それだと、カタヤマが危険にさらされてしまう。

ここは、セシリア騎士隊から衛兵の詰所に報告しよう」

「それじゃあ、これからどうします?」

「俺は隊舎に戻って、このことをセシリア隊長たちに知らせる。

エミリーたちは、カタヤマの地図に出ていた場所に向かってくれ」


コウサカとタケウチがいなくなったことはまだ、衛兵の詰所に届け出を出していない。

出しに行く前に、ビリーたちに出会ったからだ。


それに、カタヤマの能力を知れば失踪事件どころか犯罪者の捜索も簡単だろう。

そんなカタヤマが、危険にさらされることなく力を使うには後ろ盾が必要だ。

だからこそ、ビリーは騎士隊で動こうと提案したのだろう。


私たちにこれからのことを指示すると、すぐに行動に移した。


「じゃあエミリーさん、行きましょう」

「ええ、行きましょう」


カタヤマの地図に表示された場所を目指して、私たちも移動した……。




▽    ▽    ▽




Side アルニー


本屋で、失踪事件に遭遇するとは思わなかった。

それも、知り合いの連れが失踪するなんてね……。


一応、詰所に届け出を出しておけば捜索はしてくれるらしいし、大丈夫だとは思うけど……。


「あんなに取り乱したエミリーさん、初めて見たな……」


王都内を走る乗合馬車に乗りながら、少し考える。

それだけ、大切な仲間なのだろうな……。


私の所属するローズ騎士隊は、少数精鋭の騎士隊だから仲間意識は薄い。

その人の実力ばかりが注目されるから、依頼のたびにリーダーが変わるのだ。


隊の中でもっても依頼に適した人がリーダーに選ばれ、依頼達成を目指す。

目指すというより、確実に達成するために動く、か。


だから、失敗しようものならローズ隊長から厳しい罰を受けたりもする、らしい。

らしいというのは、私の知る限り、隊長から罰を受けた隊員はいないから。


「……あれ?」


ふと馬車の外を見たとき、走っているエミリーさんを見つけた。

他に二人の男が走っていたが、あれがセシリア騎士隊の隊員なのかもしれない。


見えなくなるまで見ていたが、ふと二人の着ている服に見覚えがあった。


「……あの服確か、消えた二人も同じようなのを着ていたわね……」


そうなるともしかして、さっきの二人の男はあの消えた二人と同じ異世界人?

となれば、特殊なスキルで消えた二人の居場所を見つけた?


「もしかして、あの時言いそびれていた力を持ったものが二人のどちらか?

なら、このまま帰っている場合じゃないわね! 御者さん! ここで降ります!」

「え?」

「降ります! 止めてください!」

「ええ?!」


私は無理矢理、乗合馬車を降りると、エミリーさんたちの走って行った方向へ向かった。

この先は、王都の城壁近くだ。

それに、スラムの中へ向かっているように思える。


まさか、目的の場所はスラムの中にあるというのかな?

エミリーさんたちがいくら強いといっても、王都のスラムは無法地帯に近い場所もあるらしい。


そんな心配をしながら走っているとすぐにエミリーさんたちを見つけた。

後は、慎重に後を追うようについて行く。


このまま異世界人たちと一緒に、スラムを進むのかと思ったら方向を変えて、スラムを回避して東門を目指し始める。


東門を目指すということは、王都の外に出るのか?






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