第34話 初めての報酬を貰って
王都の隊舎に戻ってきてから二日目、ようやく騎士団から報酬が隊に支払われてセシリア隊長から隊員へ払われた。
今回は緊急依頼であること、ゴブリン討伐依頼なのに、ゴブリン以外の魔物もいたこと、さらに魔物すべてを討伐したことなどを考慮に入れての報酬額となった。
「これが、コウサカに支払う報酬だよ。
遠慮なく受け取ってね」
「ありがとうございます!」
セシリア隊長から、直接お金の入った袋を受け取りお礼を言った。
俺以外の異世界人のみんなも、報酬を受け取りセシリア隊長の執務室を後にする。
隊舎の廊下を歩きながら、水澤さんが俺たちに聞いてきた。
「で、みんなはこれからどうするんだい?
この世界で使えるお金が入ったことだし……」
そうだ。俺たちは初めて、この異世界で使えるお金を手にした。
今までは、俺の召喚魔法で出したもので生活していたし、食事は隊舎の食堂で済ませていた。
でも、ようやく好きなことに仕えるお金が手に入ったのだ。
「私は、こっちの服を見てみたいかな」
「あ~、そういえばこの世界の服って、どんなものか知らないわね。
今着ている服は、高坂君の召喚魔法で出してもらったものだし……」
「……私は、本がほしい。
錬金術に関する本を読んで、道具とか素材とか揃えたいし……」
熊谷さんは、王都の服屋を回りたいようで、佐藤さんも同じ意見だ。
ただ、武内さんは自身の錬金術に関しての本がほしいのか。
確かに、俺たち異世界人の中でスキルを使っていないのは武内さんだけだしな……。
焦りが、あるのかもしれないか。
「俺は、王都を散歩してみたい。
俺の地図が、どれほど正確か確かめておきたいしな」
「高坂君は?」
「俺は、本屋か図書館に行きたいですね。
この世界の英雄や偉人とか知りたいですし、歴史を知るだけでも召喚魔法の参考になりますから」
「なるほど……」
「水澤さんは、どこか行きたいところはないんですか?」
「そうだね。行ってみたいところはあるんだけど、どこにあるのか分からないからね。
片山君について行って、王都のことを知りたいかな」
「どこに行きたいんですか?」
片山は、王都と自分のスキルの地図を見比べたいみたいだし、水澤さんは行きたい場所があるけど場所が分からないから片山について行って探そうとしているか。
で俺は、本を読みたいんだよな。
俺の召喚魔法は、ある程度知っていないと召喚できないからまずは知ること。
そんなことをみんなで話していると、シャーリーさんが声をかけてきた。
「シャーリーさん。
それぞれで、行先が違うんですよ」
「行き先?」
「ええ、熊谷さんと佐藤さんは服屋、片山さんと水澤さんは王都を調べる。
で、俺と武内さんは本を読みたいってところです」
「それなら、王都の案内は俺がしよう」
そう言って話に加わってきたのが、弓兵のビリーさんだ。
「俺は王都の生まれだから、案内は任せてくれ。
いろんなところに案内できるぞ」
「では、お願いします」
「よろしく」
「それじゃあ、服屋は私が案内するわね。
行きつけの服屋とか、値段のリーズナブルな服屋とか知っているわよ」
そう言ったのは、シャーリーさんだ。
熊谷さんと佐藤さんは、うれしそうにお願いしている。
「小春にも、似合いそうな服を探してくるね~」
「了解。楽しんできなよ、舞。佐藤さんも」
「ええ、任せて」
「じゃあ、本屋への案内は私がするわ」
そこへ加わってきたのが、魔術師のエミリーさんだ。
いつも着ているローブ姿ではなく、軽装のカジュアルな服を着て立っていた。
「……エミリーさん?」
「そうよ、コウサカ。何かおかしい?」
「い、いえ、いつもと違う格好だったので……」
「いつも、あんなローブを着ているわけないでしょ?
あれは、戦闘用の装備よ。普段は、こんなものよ?」
それはそうか、魔術師だからローブを着ないといけないってことはないんだよな。
所謂、ユニホームみたいなものか。
今は、カジュアルな軽装で短い杖を腰に差して、動きやすそうだ。
ローブに隠れていた髪形も、短めで似合っている。
「ではエミリーさん、よろしくお願いします」
「よろしくね、タケウチ」
「よろしくお願いします」
「ええ、よろしくね、コウサカ」
こうして俺と武内さんは、エミリーさんに本が読めるところに案内してもらうこととなった。
必要な本があれば、購入も考えてもいいな……。
▽ ▽ ▽
出かける準備を整えて、俺たちは隊舎を出て王都の中心を目指した。
「二人は、本があるところがいいんだよね?」
「はい」
「読めるところでもいいですけど、できれば購入できるところをお願いします」
「あら、コウサカは購入したいの?」
「はい、俺が読みたいのは歴史の本や、英雄や偉人などが書かれた本ですから」
「なるほど、読むにしてもじっくり読みたいのね……」
「それなら、私も錬金術の本がほしいです」
武内さんは、錬金術を学びたいんだな。
錬金術師として、みんなの力になりたいんだろうか?
「フム、それなら本の購入を考えたほうがいいね。
じゃあまずは、本屋に案内してあげるわ」
「「ありがとうございます」」
「お礼を言うのは、まだ早いわよ?」
エミリーさんは、笑顔でそう言ってくる。
何かあるのか?
俺と武内さんは、少し不振がりながらもエミリーさんについて行き、一軒のお店に案内された。
商店街の本屋さんといった大きさの店で、そんなに多く本を置いてなさそうだった。
ガラスがまだ普及していないのか、店の中は分からなかったが本屋だと分かる看板が出ている。
「……ここ、ですか?」
「そうだよ~。入るよ?」
「はい」
エミリーさんは、扉を開けて中に入る。
ドアベルが、カランカランと鳴り雰囲気を醸し出していた。
俺と武内さんも、エミリーさんに続き店の中へ。
そして、中に入って驚いた……。
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