第30話 いきなりの決着
残り一体となったゴブリンマスターと、俺が召喚した戦乙女のヘルムヴィーゲと一騎打ちをしていたが、一発の銃弾が戦闘を終わらせた。
女性型のゴブリンマスターが振るう両手剣と、戦乙女のヘルムヴィーゲの操る三叉戟の槍が何度も打ちあい戦っていた所へ、ゴブリンマスターの額を一発の弾丸が撃ち抜いた。
撃ち抜いたのは、ガンナーの熊谷さんだ。
ゴブリンマスターたちに、ずっと狙いを付けていてチャンスが来るのを待っていたのか?
それにしても、それはないだろうという目でみんなが熊谷さんを見ているが、熊谷さんは倒せてご満悦のようだ。
笑顔で、対物ライフルを持って立ち上がる。
「……召喚主様、ご命令通りゴブリンマスターを殲滅してまいりました」
「ありがとう、ワルキューレたち。
それよりも、その傷は大丈夫か?」
「ご心配いただきありがとうございます。
ですが、ご心配には及びません。私たちを送還してもらえれば、すぐにでも回復いたしますので……」
「そうなのか……」
ゴブリンマスターを殲滅した後、戦乙女たちは、俺の側で跪いて報告する。
痛々しいブリュンヒルデを心配したが、送還すれば問題ないと答える。
そうなのか?
というわけで、俺は半信半疑だがとりあえず送還することにした。
「とりあえず、今回はありがとう。
また、君たちを呼ぶかもしれないが、その時はよろしく頼む」
「はい、お任せくださいませ」
【送還!】
そう唱えると、跪いたままの戦乙女たちの足元に魔法陣が出現し、光とともに戦乙女たちは消えた。
そして、魔法陣も消える……。
「やったよ~、小春。
ゴブリンマスターとかいうゴブリンを、倒したよ~」
「舞……。ちょっと、空気読んだ方が良かったかな~……」
「ん?」
「……いや、舞らしいかな~」
「何よ、それ~」
友人の武内さんが、少し呆れているが、あれが平常運転なのか。
でもまあ、ゴブリンマスターを討伐して洞窟内にはもう、敵はいないだろう。
「水澤さん」
「おお、高坂君。
すごい召喚魔法だったよ!
それに、あの戦乙女たちの強さ!
あれは、アニメ化された時の戦闘を見てああいう戦い方に?」
「ええ、劇場版だと全員の武器が剣に変更されていましたから……」
「そうなんだよね~、戦乙女たち全員が槍で戦うからこそ、勇ましいのに剣に変更されるなんてね~」
水澤さんは、武器が変更されているところが納得いってないようだったが、剣は剣でいいんだけどと、認めているところもあるらしい。
周りを見渡せば、セシリア隊長とシャーリーさんに誘導されながら、佐藤さんが倒したゴブリンマスターの死体を片っ端から収納している。
オルブランさんたちは、片山に洞窟内のことを聞いて相談している。
まだ洞窟内に、捕らわれている人がいないか確かめているのだろう。
もしいれば、助けに行かないといけないから……。
「お~い、セシリア隊長~」
そこへ、レオンさんの班が到着する。
ゴブリン戦が終わってからの合流に、セシリア隊長たちが白い目で睨んで困っていたな……。
とにかく、全員無事で生還できて良かったよ……。
▽ ▽ ▽
「あの……」
オルブランさんとレオンさんの班が、洞窟内へ探索に進んだ後、セシリア隊長とシャーリーさんが洞窟内で助けた女性の一人が声をかけてきた。
声をかけたのは、冒険者らしい女性で革鎧に手袋やブーツを履いたままで、まだゴブリンに何かされたような感じではなかった。
青っぽい髪色をした女性で、もう一人の冒険者のような女性は銀髪だ。
「助けてくれて、ありがとうございます!」
そう言って、頭を下げる。
それに続いて、後ろにいた他の女性たちも一緒に頭を下げた。
「あ~、とりあえず、助かってよかったですね……」
「サラやミリーラも、ゴブリンに捕まってどうなるかと不安で不安で……。
あ、サラというのは私と一緒に出てきたその髪の長い人で、ミリーラはそこの端にいるリボンの娘です。
あ、それと、私はコニーと言います」
コニーさんが紹介した、サラさんとミリーラさんは洞窟から走って出てきた女性だ。
俺たちに、逃げろと大声で言ってくれていたな……。
「私は、ジェシカ。私と一緒に助けてもらったのが…」
「メリーです」
「ルーニと言います。こっちは妹の、ルースです」
ジェシカさんは、銀髪の冒険者の服装した女性で、メリーさんは村娘といった姿だ。
ルーニさんとルースさんは、同い年のような姉妹だ。
容姿も服装も、よく似てはいるがルースさんの方が幼さがあるかな……。
「セシリア騎士隊所属の高坂と言います。
こっちは、水澤さんです」
「水澤です。それで、何か質問でもあるのですか?」
「ああ、はい。
私たちの処遇について、お聞きしたいなと……」
なるほど、今後どうなるのかということか。
助けてもらったけど、なかなか声をかけてもらえずに困っていたといった感じかな。
「それは失礼しました。
みなさんの今後は、セシリア隊長が決めると思いますが、おそらくそれぞれの町や村へ帰れると思います。
ただ、まだ洞窟内に残っている人がいるようなので、その人たちを救出して事情などを聞いた後、私たちがそれぞれの村や町に送る形になるかと」
「そうですか……」
水澤さんが説明すると、何やら女性たちで話している。
小声でちょっと聞こえないが、お腹が空いたという言葉だけが聞こえた。
「あの、何か……」
「いえ、あの……、実は、ゴブリンに捕まって、牢に入れられてから……」
そう言いながら口ごもり、右手をお腹にあてる。
「何も口にしていなかったので……」
「ああ、お腹が空いたんですね?」
「……」
「水澤さん」
女性たちが全員、顔を赤くしてしまった。
デリカシーが無いぞ、水澤さん!
でもまあ、こういう時の俺の召喚魔法かもしれないな。
俺は、捕まっていた人たちへ出す軽食を召喚することに。
飲み物も一緒に出すとしたら、何がいいかな?
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