第27話 召喚した戦乙女たち
ステータスカードに見つけた、召喚魔法に関する説明の一文。
ここに、人物召喚に関することが書かれている。
これはどうやら、召喚魔法のレベルが上がったものと思われる。
とにかく今は、自分の召喚魔法に頼るしかない!
俺は、今ここに呼ぶべき人物たちを思い浮かべて呪文を唱えた。
【召喚!】
すると、俺を中心にした巨大な魔法陣が地面に表示され、一瞬光った。
そしてすぐに、魔法陣が消える。
これは、何かを召喚し終わったということだ……。
俺は視線を地面から、襲いかかってきているであろうゴブリンマスターたちを見ようと視線をあげると、その場に止まり驚愕の表情を浮かべていた。
恐ろしいものを見て、動けなくなったように……。
「あらら? 人型のゴブリンがいるわよ」
「オルト姉、まずはすることがあるでしょ!」
「フフフ、オルトリンデ? 私の顔に、泥を塗る気かしら?」
「ブ、ブリュン姉様の顔に、泥御塗るなんて……」
「そうよねぇ~」
「こ、こわッ……」
そんな会話が、俺の頭上から聞こえてきたかと思うと、九人の翼が生えた女性たちが俺の前に降り立ち、跪いて頭を下げた。
「この度は、我らワルキューレを召喚してくださりありがとうございます。
我らオーディンの娘たちは、召喚主様の槍となり盾となることを誓います。
何なりと、ご命令くださいませ」
彼女たちは、劇場版『ヴァルキューレ』に登場する戦乙女たちだ。
最近公開されたばかりで、俺もこの間見に行ったばかり。
だからこそ、鮮明に覚えていたし姿形も、設定も覚えていた。
召喚魔法の一文に、人物召喚は、実在の人物でなくても召喚できるとあった。
だが、召喚する人物の姿を確りと思い浮かべなければできなかったのだが、そこは最近見た映画。
内容も好きで、設定もしっかりと覚えていたので助かった。
「ワルキューレに命じる、俺たちの目の前にいる緑肌のゴブリンたちを殲滅せよ!」
「「「「「「「「「ハハッ!!!」」」」」」」」」
九人の戦乙女たち全員が返事をすると、翼を広げて空へ飛びあがった。
そして、それぞれの獲物を出現させると、いまだ呆然としているゴブリンマスターたちに襲いかかった!
『! お前ら! しっかりしろっ!!!』
洞窟入り口前にいる、女性型のゴブリンマスターが叫ぶ。
その叫びで、我に返ったゴブリンマスターたち。
「ゲルヒルデ、ヘルムヴィーゲ、オルトリンデ、ヴァルトラウテ、ジークルーネ、あなたたちは、近づいてきているゴブリンたちを相手しなさい。
入り口のゴブリンは、私が相手します。
ロスヴァイセ、シュヴェルトライテ、グリムゲルデは、召喚主様の仲間をお守りするのです!」
「了解! それじゃあ、私はあのゴブリンを貰うよ」
「ゲル姉様、早い! じゃあ私は、あのメスゴブリンー!」
「では私は、あそこのゴブリンと戦いましょう」
「じゃあ、私はアレで」
「召喚主様を狙っているゴブリンは、私が相手をするのか……」
それぞれ分かれて、ゴブリンマスターの元へ飛んで行く。
さらに、残りの戦乙女たちが仲間たちを守るために別れた……。
▽ ▽ ▽
銀色の鎧に身を包み、銀色の長い槍ハルバードを持ってゴブリンマスターの前に降り立った。
銀色の長い髪を靡かせ、ジークルーネは召喚主を狙うメスゴブリンを睨む。
「あなたは、私がお相手します」
『……フッ、フフフ。貴様らの姿に驚いたが、大して強くなさそうねぇ~。
警戒して、損したわ~』
「それは、申し訳ない」
『……嫌味も通じないのかしら~』
睨み返すゴブリンマスターのベ―ニ。
俺を狙っていた、スタイルが滅茶苦茶良いメスゴブリンだ。
今も、大きな胸を腕で持ち上げるように組んで挑発している。
ジークルーネも、そのわざとらしいしぐさに気づいたが気にしていないようだ。
『チッ! 小さいくせに、私の前に立ちふさがるんじゃないわよ!!』
「召喚主を守るのは、私たちの使命!」
そう言って、ハルバードを軽々と振り回す。
そして、槍の穂先をゴブリンマスターに向けて構えた……。
ゴブリンマスターも、手を細めて爪を出して鋭くする。
そして、睨み合うこと十数秒。
『ガッ!!』
「フッ!!!」
両方同時に動き、目にも止まらぬ速さで両方の立ち位置が入れ替わった。
周りで見ていた者たちは、目を見開き勝負の行方を見守る。
先に動いたのは、ゴブリンマスターの女の方だ。
ゆっくりと姿勢を戻し、ジークルーネの方を振り返ると、胸に大きな穴が開いていた・・・・・。
『ゴブッ、……強い女は、嫌い……よ……』
「……」
その言葉を聞いて、ジークルーネが姿勢を戻して振り返ると、口から緑の血を垂らして笑うメスゴブリンが見ていた。
すでに、目に光はない。
そのまま崩れ落ちるように倒れて、地面に緑の血だまりを作った……。
ジークルーネは、持っていたハルバードを振って緑の血を落とすと、召喚主の俺に笑顔を見せた。
そしてすぐに一礼して、他の戦っている戦乙女たちに視線を移す。
「つ、強ぇ~……」
「これが、コウサカの召喚魔法か……」
みんなが驚く中、水澤さんは反応が少し違う。
目をキラキラと輝かせながら、俺に質問してきた。
「高坂君! あれはもしかして、劇場版『ヴァルキューレ』に登場する戦乙女たちじゃないか?!
それも、アニメの方じゃない! 実写版の方の戦乙女を召喚したんだろう?!」
「せ、正解です水澤さん、よくご存じですね……」
「私も、『ヴァルキューレ』の大ファンだからねぇ!
小説からコミカライズされ、アニメで一気に人気となり実写版が登場する。
実写版は、評価が分かれるところだけど、私は評価しているよ!
ストーリーも、よく練られていて面白いよねぇ~」
「水澤さん……」
「片山君も、ぜひ見たほうがいいよ~。
今の私の一押しだからさ~」
「は、はぁ……」
水澤さん、片山が引いてますよ~。
そして、周りの人たちも……。
とりあえず、これでピンチは脱したかな……。
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