第25話 洞窟の奥の脅威



洞窟から次々に出てくるホブゴブリンだが、セシリア隊の遠距離攻撃のできる隊員によって次々と倒していく。

もちろん、俺も銃で攻撃したが、ホブゴブリンを倒していたのは対物ライフルで狙撃していた熊谷さんだった。


何体も何体も、洞窟から出てくるホブゴブリンを倒していって、ようやく出てこなくなった。


「……終わり、か?」

「そのようね……。

それにしても、すごい数のホブゴブリンね」

「セシリア、この洞窟が討伐依頼の場所じゃないのか?」

「ゴブリンの集落?

……確かに、ゴブリンもホブゴブリンもかなりの数いたよね……」

「やっぱり、奥を調べないといけないわね……」


倒したホブゴブリンを、佐藤さんに収納してもらって片付けていると、セシリア隊長とシャーリーさんとオルブランさんが集まって話し合っていた。


「洞窟の奥か……。

それにしても、報告のゴブリンの数は異常だぞ?

洞窟内が、一種の集落のようになっていたといったほうがいいな……」

「それだと、キングやエンペラーが存在しているんじゃないかな?」

「ゴブリンキングかゴブリンエンペラーか?

ん~、どうだろうな……」

「オルブランは、そうは思わないようね」

「ゴブリンキングが現れたとなると、一騎士隊単独で事に当たるべきじゃあないな。

少なくても、三つの騎士隊が合同で対処する存在だ。

それに、ゴブリンエンペラーとなれば十以上の騎士隊が合同で勝てるかどうかだろう。

弱小で、騎士団のお荷物騎士隊と言われているセシリア騎士隊が対処できる存在じゃないぞ」


洞窟の奥に、ゴブリンキングかゴブリンエンペラー、ね。

ゴブリンの種族ランクがどう分かれているか知らないけど、名前からしてとんでもない強さってことだろう。


洞窟の奥に、本当にそんな存在がいるのだろうか?

俺が考え事をしていると、俺の隣で休憩していた片山が声をあげた。


「あ」

「ん? どうかしたのかい、片山君」

「水澤さん、俺のスキルがとんでもないんですよ」

「片山君のスキル?」


片山のスキル? 確か、完全地図とかいうスキルだったな。

マッピングマスターという職種で、どんなところの地図でも作れるというものだったか。

でも、確か行ったことのある場所しか地図にならないとか言われていたような……。


「俺のスキルは、ただ地図を表示するスキルじゃないんですよ。

今出します……」


そう言って片山は、自分の足元に地図を表示した。


「あ!」

「おお!」


俺と水澤さんの驚いた声に反応した、他のみんなが近づいてくる。

そして、地面に表示されている地図を見て驚いていた。


「こ、これって……」

「カタヤマ、これは何の地図だ?」

「あそこに見える、洞窟の全体図ですよ。

赤い点が敵、青い点が味方、白い点が敵か味方か分からない存在ですが、生物ではあります」

「つまり、生きている存在ってことか。

……こうして見ると、あの洞窟はかなり奥まであるようだな。

それに、洞窟内の赤い点が多い。あれだけ洞窟の入り口で倒したのにもかかわらず、だ」


武内さんが驚き、オルブランさんが、片山に質問する。

片山は、地面に表示されている地図の説明をして、セシリア隊長やシャーリーさんが驚き、オルブランさんが地図を見て現状を言った。


「ねぇ、この赤い点の大きさは何を意味しているの?」

「たぶん、強さだと思います。

洞窟外に表示されている、俺たちの青い点を見たらそうとしか思えなかったんで……」

「なるほどな……。

ならこの黄色い五つの点は、あそこで盾を構えている守護騎士ってことか」

「はい」

「はぁ~、あそこの守護騎士が、俺たちより丸が大きいっていうのはどういうことなんだ?」

「それはオルブラン、言わないとダメ?」

「……いや、言わなくていいセシリア隊長……」


皮肉なことに、円の大きさが俺たちの味方で一番大きかったのが、水澤さんが設置した守護騎士五人だったとはな。

まあ、あの数のホブゴブリンや、ゴブリンジェネラルなどの攻撃から守ってくれていたんだから納得か……。


「だけど問題は、この洞窟の一番奥にいる赤い丸だ。

この周りにいる赤い丸も大きいが、こいつはひときわ大きな丸だな……」

「敵で、一番強い奴ね」

「セシリア隊長、これからどうする?

レオンの班と合流できたとしても、セシリア騎士隊では対処は難しいぞ?」

「上に報告はします。

その上でどうするか、よね……」


セシリア隊長の、上への報告は騎士団長への報告だろう。

だが、騎士団長が応援をよこしたとしても、時間がかかる。

その間に、敵が攻勢に出ることもありえるからな……。


今の俺たちでは、太刀打ちできないな。


「……コウサカ、何か戦力になりそうな者を召喚することはできないかな?」

「戦力になりそうな、人物ですか?」

「そう! ……どうかな?」

「ん~」


俺は、セシリア隊長からそう言われて、ステータスカードを確認する。

すると、俺のスキルの後ろに『増』と表示されていた文字が、『大増』に変化していた。


すぐに説明を表示すると、人物召喚が可能になったとある!

ここにきて、ナイスタイミングだ!


……しかし、俺の知っている戦力になりそうな人物がいない!?


「……どうかな?」

「それが、人物召喚は可能になったようなんですが、戦力になるかどうか……」

「誰でもいいんだよ? コウサカの知る戦力になりそうな人物で……」


セシリア隊長は、やさしくそう言ってくれるが俺が知っている戦力になりそうな人物は、全員過去の人物ばかりだ。

しかも写真があるならまだしも、ほとんどが肖像画。


さらに、俺の知る戦力になりそうな人物となると、アニメや漫画の主人公たちになってしまう。

それを察したのか、片山と水澤さんが声をかけてきた。


「高坂、アニメや漫画の登場人物はダメなのか?」

「うん、呼べるならそういう登場人物の方が桁違いに強くていいんじゃないかな?」

「ん~……」


俺も、呼べるものなら呼びたいが、アニメや漫画の登場人物を現実に呼んで大丈夫だろうか……。

ステータスカードの召喚魔法の説明を睨みながら考えていると、説明文の最後が付け足された。


「あれ……」

「ん? 高坂君、何かあったか?」

「いや、これは……」


俺が説明文に気を取られているうちに、片山の地図に動きがあった。

洞窟奥の赤い丸たちが、動き出したのだ。


「お、おい! 大変だ!」

「カタヤマ? どうした?」

「洞窟奥の赤い丸が全部、動き出した!

洞窟の外に向かっているぞ!?」

「何?!!」







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