第24話 救出成功?



ゴブリンの洞窟前で、森から出てきたオルブランさんたちの班と合流した。

挨拶もそこそこに、セシリア隊長とシャーリーさんがゴブリンが出てきた洞窟内に入って、捕まっている人たちを助け出そうとしていることを教えた。


「な、何っ?! 捕まっている人を助け出す?!」

「はい。セシリア隊長とシャーリーさんの二人で、洞窟に入っていきました」

「おいおい……」


二人の行動に驚き、洞窟を見ながら呆れた声を出すオルブランさん。

セシリア隊長とシャーリーさんの二人だけでは、危ないと心配なのか?


「オルブラン、隊長が洞窟に入っているんですか?」

「そうらしいぞ、エミリー。

まあ隊長のことだから、勝てない相手と戦うということはないだろうが、一応準備だけはしておけよ」

「了解ですわ!」


オルブランさんに話しかけてきたのは、セシリア騎士隊の魔術師であるエミリーさんだ。

王都にある魔術師学校の教師をしていたのだが、貴族の生徒ともめてクビにさせられたらしい。


肩を落として学校から出てきたところを、学校の校長と知り合いのオルブランさんに勧誘されてセシリア騎士隊に入隊したそうだ。


「オルブランさん、準備って?」

「あの洞窟から、ゴブリンジェネラルが何体も出てきたんだろ?

クマヤたちの話だと、捕まっている人たちは比較的入り口近くにいるとか」

「はい、セシリア隊長はそういっていました」

「洞窟の長さがどれくらいか分からねぇが、かなりのゴブリンがいたという話だ。

それにゴブリンジェネラルが、四体だっけ?」

「はい」

「ゴブリンメイジにアーチャーとなれば、これは確実にキングまでいるだろう。

そうなれば、見なければならないゴブリンをクマヤたちが見ていない……」

「見なければいけない、ゴブリン?」

「ホブゴブリンだ。

ゴブリンの上位種で、メイジやアーチャーよりもゴブリンの集団では必ず見かける。

なのに、見ていないとなれば……」

「なれば?」


その時、洞窟から三人の女性が姿を現した。

一人は、少しボロボロの鎧を装備した冒険者のような女性と、村に住んでいそうな服装の女性が二人だ。


三人ともに、必死の形相で俺たちを見つけて叫ぶ。


「逃げてーっ!!」

「すぐに逃げてーっ!!」

「助けて!!」


そして、俺たちの方へ向かって、走り出した。


「な、何だ?」

「……もしかして、捕まっていた人?!」

「何?!」


三人の女性が俺たちの方へ走り出すと、さらに洞窟の中から人が出てきた。

俺たちのよく知る人物だ。


「セシリア隊長?!」

「シャーリー従騎士!

……ん? 誰か抱えているぞ?」

「セシリア隊長もです!」


洞窟から出てきたセシリア隊長たちも、俺たちの方へ走り出す。

まるで、何かから逃げてきたような……。


「水澤さん!」

「あ!? 守護騎士! ガード展開!!」


セシリア隊長たちが出てきた洞窟から、大きな緑色の生物がすぐに出てきたことで、俺はこの魔物から逃げてきたのだと気がついた。

だからすぐに、水澤さんに叫んだのだ。


幸い、水澤さんもすぐに気づいてカードから展開しっぱなしだった守護騎士に、すぐに洞窟から出てきた魔物からガードするように命令する。

守護騎士は、大きな盾を構えてすぐに防御してくれた。


「何だ、あれは?!」

「水澤さんのスキルですよ、オルブランさん」

「ミズサワの?」

「それより、あの洞窟から出てきた奴って……」

「あれが、ゴブリンの上位種のホブゴブリンだ。

力はゴブリンの十倍ぐらいになるのに、知能はゴブリンのままという魔物だ!」


洞窟から出てきたホブゴブリンたちは、かなりの数がいたが水澤さんが展開した五人の守護騎士たちにガードされて、足止めされていた。


「アイラ! エミリー! 呆けていないで、攻撃だ!

ビリー! 弓兵なんだから、攻撃しろ!」

「わ、分かってるわよ!」

「詠唱を始めるわ!」

「ハッ! りょ、了解です!」


弓を弾いて、ホブゴブリンに狙いを定めると大きな射撃音が響いた。

熊谷さんの構えた、対物ライフルから弾丸が発射された音だ。

そしてすぐに、一匹のホブゴブリンの後頭部が吹き飛んだ……。


『ギャグッ!』


その音に驚くものの、弓兵のアイラもビリーも負けじとすぐに矢を何発も放ってホブゴブリンに命中させていた。


『ギャギャ!』

『グギャ!』

『ギャバ!』


セシリア隊長たちが、俺たちの近くに逃げてくると、担いでいた二人の女性を地面にゆっくりと降ろす。

シャーリーさんも同じように、担いでいた二人の女性をゆっくり地面に降ろした。


そこに、女性冒険者と二人の女性も合流する。


「ハァ、ハァ、ハァ、もう、大丈夫ですよ……」

「た、助かったんですか……」

「……」


助かったことを喜ぶ、女性冒険者。

呆然とする女性たちに、ただただ、息が荒い二人の女性。

空気が重い……。


大きな銃声が聞こえるたびに、女性たちはビクついているが、それは仕方ないだろう。

それに、ホブゴブリンたちの叫び声も聞こえているしな……。


そこに、オルブランさんと従騎士のニックさんが近づいてきた。


「セシリア隊長、洞窟内で何があったんだ?」

「オルブラン、いつの間に合流したの?」

「今はそんなことどうでもいい!

セシリア、洞窟内で、何があった!」


セシリア隊長の、とぼけた返しに少し怒るオルブランさん。

珍しい光景だな……。


「洞窟内で見つけた、ゴブリンやジェネラルなんかを外に出して倒したから、この人たちが捕まっていた牢屋に急いだのよ。

そして、ゴブリンたちの姿が無かったから助け出したんだけど……」

「洞窟の外に出ようと急いでいたところに、洞窟の奥から出てきた二体のホブゴブリンに見つかって、追いかけられたんです」

「しかし、あの数は何だ?」

「逃げる途中で、仲間を呼ばれたみたいで……」

「で、洞窟の奥からホブゴブリンの団体が追いかけてきたと?」

「はい……」


まだ、あんなにホブゴブリンがいたのか……。

俺が洞窟の方に視線を移すと、中から次々と出てくるホブゴブリンが見える。

すでに、五十体は超えているんじゃないか?


あんな数のホブゴブリンがいたとなればあの洞窟、かなりの長さがあるな。

もしかすれば、彼女たちが捕まっていたような牢屋がまだあるのかもしれないな……。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る