第22話 発動する水澤さんのスキル



ゴブリンジェネラルは、セシリア隊長とシャーリーさんを無視して真っ直ぐ熊谷さん目掛けて襲いかかってきた。

どうやら怒りで、熊谷さん以外視界に入っていないようだ。


それに気づいたセシリア隊長とシャーリーさんは、ゴブリンジェネラルの左右に除け、手に持ったモーニングスターを思いっきり振り回した。


すると、遠心力をえたモーニングスターの鉄球が、向かってくるゴブリンジェネラルの左右の膝に前から命中!

ゴブリンジェネラルの膝の砕ける音とともに、鉄球がめり込んでしまい、セシリア隊長とシャーリーさんは放してしまう。


そして、その遠心力の勢いで前のめりに転んでしまった。


『ギギャッ!!!』

「って!」

「キャッ!」


膝の砕けたゴブリンジェネラルも前のめりに転び、地面に顔を思いっきり叩きつけてしまう。

呻き声をあげて苦しむゴブリンジェネラルに、熊谷さんが狙いを定めた。


「バーカ」

『!!!』


熊谷さんの声に反応したゴブリンジェネラルが顔をあげると、対物ライフルの銃口が目にはいった。

と同時に、熊谷さんは引き金を引き発射!


大きな発射音とともに、ゴブリンジェネラルの頭の後ろが吹き飛んだ!!

そして、残った頭が地面に落ちるとゴブリンジェネラルは絶命した。


「よしっ!」

「すごい威力だな、対物ライフルは……」

「……ふぅ」


片山がガッツポーズで喜び、水澤さんは対物ライフルの威力に感心する。

熊谷さんが一息つくと、武内さんと佐藤さんに抱き着かれた。


「舞、すごい!」

「熊谷さん!」

「い、痛いよ小春、佐藤さん」


武内さんと佐藤さんが、あんなに喜ぶのも無理はない。

二人とも、ゴブリンジェネラルの方向に少しやられていたからな。

そのゴブリンジェネラルを倒してくれた熊谷さんには、本当に感謝しているのだろう。


喜んでいる俺たちの所へ、ゴブリンジェネラルを足止めしてくれたセシリア隊長とシャーリーさんが帰ってきた。


「みんな、お疲れ!

それにしても、クマヤはすごいね! 一撃でジェネラルの頭を吹き飛ばすなんて!」

「確かにすごかった。

その手に持つ、魔導銃を大きく長くした物の威力か……」


セシリア隊長とシャーリーさんは、熊谷さんが持つ対物ライフルを見ながら褒めていた。

そして、片山に謝ってきた。


「それと済まない、片山」

「え? 何がです?」

「カタヤマに渡された武器だが、ジェネラルの足に食い込んでしまってな。

外すことができなかったんだ……」


そう言われて俺たちの視線は、自然と倒れて死んでいるゴブリンジェネラルの足へと向けられる。

そこには、ジェネラルの膝に食い込んでいるモーニングスターの鉄球部分が見える。


そして、鉄球から鎖が伸びて繋がっている持ち手の部分が確認できた。


「……ああ、それなら心配いらないな。高坂」

「ああ」


【送還!】


片山が心配いらないと二人を安心させるようなことを言った後、俺に声を掛けてくる。

ゴブリンジェネラルから、はがす手間はいらないとモーニングスターを意識して送還する。

すると、ジェネラルの膝に食い込んでいたモーニングスターが消え、膝から緑の血が地面に噴き出した。


「消えた?!」

「……そうか、召喚した物だったのか」

「ああ、だから心配いらないよ」


片山が応対して、セシリア隊長とシャーリーさんを安心させる。

そしてすぐに二人は、俺にもお礼を言ってくれた。


「ありがとう、コウサカ」

「ありがとう!」

「……お礼よりも、洞窟の中に捕らわれている人たちを助けに行かなくていいんですか?」

「あ、そうね! すぐにでも助けに行かないと……」

「セシリア!」


洞窟前で騒ぎ過ぎたのか、洞窟の中からあんなに苦労したゴブリンジェネラルが三体も姿を現してきた。

さらに、ローブを被ったゴブリンメイジに、弓を持ったゴブリンアーチャーの姿も確認できた。


「マ、マジかよ……」

「ま、まだあんなに?」

「……どうするの? セシリア隊長……」

「うう……」

「クッ」


片山が顔色を悪くし、佐藤さんがその迫力と数に絶望し、シャーリーさんが睨みながら隊長に確認する。

武内さんが胸を押さえて苦しみ、セシリア隊長は絶体絶命のピンチって表情だ。


「カード解放! 守護騎士!!」

「え?!」


みんなが絶望する中、水澤さんが大声で叫んだ。

すると、俺たちとゴブリンジェネラルたちとの間に、大きな盾を持って構える全身鎧の騎士五人が出現した!


これは、俺の召喚術とは違うまったくの別物。

もしかして、これが水澤さんのカードマスターの力か!


「水澤さん?!」

「片山君、みんな、ようやく私の力を見せる時が来たね!

この騎士たちは、私がカードドロップして貯めた守護騎士カードの盾騎士だ!

どんな攻撃からも、守ってくれる盾を持つ騎士だよ」

「水澤さん……」

「す、すごい!」

「これが……」

「ミズサワのスキル……」

「魔法攻撃からも物理攻撃からも、あの盾でみんなを守ってくれる!

今のうちに、体勢を立て直すんだ!」

「あ、ありがとう!」

「了解!」


水澤さんが全員の前に立ち、ゴブリンジェネラルたちを睨んでいる。

その手には、何枚ものカードを扇状に広げていた。

まるで、某カード何とかだな!


ゴブリンジェネラルの三体が、大剣を構えてこちらを睨み、ゴブリンアーチャーが弓を構えている。

ゴブリンメイジは、杖を前に出して何か唱えている?

どうやら、こちらを攻撃しようとしていたようだ……。


水澤さんの左右に、セシリア隊長とシャーリーさんが剣を構えて敵を睨みつけ、その後ろには、対物ライフルを構える熊谷さん。

その後ろに、武内さんと佐藤さんがいる。

片山は、自分のスキルで何かできないか考えている。


水澤さんがスキルを使ったんだ、片山も何かできないか考えるのも無理はない。

そして俺も、何を召喚すればいいか考える。


この状況をひっくり返すには……。






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