第21話 対ゴブリンジェネラル



洞窟の入り口前に陣取るゴブリンジェネラル。

その目は、俺たちを見渡しながら次第にニヤッと笑い始めた。


『ギャフ』


俺たちを弱い人間たちだと、見当をつけたんだろう。

そして、このまま戦っても勝てると考えたからこその余裕か……。


今も苦しそうにしている、武内さんと佐藤さんを後ろに下げてセシリア隊長とシャーリーさんが前に立つ。

だが、二人が構えている剣では頼りない感じがするな。


「小春、大丈夫?」

「な、何とか……ね」

「佐藤さんも……」

「だ、大丈夫よ……」


俺たちの後ろに下がって熊谷さんが声をかけるが、まだ苦しそうだ。

片山と水澤さんが、俺の側に近寄ってきた。


「高坂、どうする?」

「高坂君、何か手はないかな?」


何か手はないか、と言われてもな……。

目の前にいるゴブリンジェネラルは、デカいし大きいし金属鎧着ているしで、今持っている銃では傷一つ付きそうになりな。


肌が出ている顔なら傷つくかもしれないが、ガンナーでもない俺たちでは当てる前に殴られて終わりそうだ……。


「高坂、対戦車ライフルとかバズーカとか出せないか?」

「それなら、戦車を召喚すれば……」

「水澤さん、戦車なんて誰が操縦するんですか?!」

「そ、それは……」

「熊谷さん、対物ライフルって召喚できないか?」

「対物ライフル? ちょっと待って……」


熊谷さんが、空中で指を滑られているところを見るとログボードを呼び出して、召喚できるかどうかを確認しているか。

ゴブリンジェネラルの着ている、金属鎧の装甲を撃ち抜けるといったら対物ライフルしかないだろう。


それも、ガンナーの使う対物ライフルの弾丸なら撃ち抜いてくれるはず。


「高坂、何故対物ライフルなんだ?

対戦車ライフルの方が、貫通力とか威力とかありそうじゃねぇか?」

「対戦車ライフルは、対物ライフルの前身となった存在なんです。

つまり、対物ライフルの方が新しいんですよ」

「へぇ~、それは知らなかったな……」

「高坂さん、あったよ!」


そう知らせて、すぐに召喚した。

すると、熊谷さんの足元に魔法陣が出現し、対物ライフルが出現した。


「バレットМ82だね。アメリカで開発された、大口径のセミオート式の狙撃銃だよ」

「その通りです、水澤さん。詳しいんですね~」

「まあね」


本当に、よく知っているよな水澤さん。

でも、これならゴブリンジェネラルを倒すことができるだろう。


対物ライフルを持ち上げて、ボルト・ハンドルを後方に引いて弾薬装填をする。

……しかし軽々と持ち上げているけど、これもガンナーの職種補正なのか?


「でも、それで狙うにしても……」


そう言ってゴブリンジェネラルの方を見ると、セシリア隊長とシャーリーさんが睨み合っている。

二人の持つ剣が、ゴブリンジェネラルの持つ棍棒に対して貧弱だ。


このままでは、対物ライフルの弾丸が当たる前にセシリア隊長とシャーリーさんが倒されてしまいそうだな。


俺は、ある武器を思いつきそれを思い出しながら召喚魔法を使った。


【召喚!】


そう唱えると、俺の足元に魔法陣が出現しある武器が現れた。


「高坂、それって……」

「モーニングスターだ。セシリア隊長やシャーリーさんに渡して、ゴブリンジェネラルの動きを封じようと思ってな。

セシリア隊長! シャーリーさん!」


片山の質問に答えた後、大声でセシリア隊長とシャーリーさんを呼ぶ。

二人は、ゴブリンジェネラルを睨みながら返事をしてくれる。


「何?!」

「どうしたの?!」

「片山さん、これを二人に渡してくれ」

「わ、分かった!」


片山は、足元にあるモーニングスターを持ち上げると、二人のもとに走る。

そして、まずセシリア隊長に近づいた。


「セシリア隊長! これを!」

「な、何?!」

「シャーリーさんも!」

「こ、これは……」


片山から手渡されたモーニングスターに驚き、ゴブリンジェネラルから目をそらしてしまう。

その時、ゴブリンジェネラルが襲いかかろうとするが、大きな銃声が響くとゴブリンジェネラルが後方に吹き飛んだ。


『ギャッ!!』

「キャッ!」

「っ!」


熊谷さんが、ゴブリンジェネラルが動いた瞬間に対物ライフルの引き金を引いたのだ。

そのため、対物ライフルから発射された弾丸がゴブリンジェネラルの胸の鎧に命中したものの角度があったために防がれ、威力だけでジェネラルを後方に飛ばしたのだ。


さすが対物ライフル、威力が半端ないな……。

ただ、鎧に当たった音がすごかったため、セシリア隊長とシャーリーさんが驚いたようだが……。


「セシリア隊長、シャーリーさん、大丈夫ですか?」

「え、ええ、大丈夫よカタヤマ」

「わ、私も、大丈夫よカタヤマ」

「セシリア隊長! シャーリーさん! その武器で、ゴブリンジェネラルの足を潰してください!」

「足を?」

「そうですシャーリーさん。

ゴブリンジェネラルの、足を止めるんですよ」

「……分かったわ」


俺の指示と、側にいた片山に聞いて、セシリア隊長もシャーリーさんも了承してくれた。

そこへ怒りの表情で、ゆっくりと立ち上がってきたゴブリンジェネラル。

胸のあたりの鎧がかなりへこんでいるが、穴は開いていない。


だが、ゴブリンジェネラルの顔は真っ赤だ。


『グブフォ……』

「セシリア!」

「シャーリー!」

「お願いします!」


そう言って、二人の元から後方に逃げるカタヤマ。

そして、俺たちのもとに片山が戻ったタイミングで、ゴブリンジェネラルが大声で吠える。


『ギャオオオォォォ!!!!』


叫びながら、突進を始めるゴブリンジェネラル。

それを迎え撃つために、モーニングスターを構えるセシリア隊長とシャーリーさん。

そして、俺たちの側で対物ライフルを構える熊谷さん。


決着は、一瞬でつきそうだ……。







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