第20話 洞窟から出てきたもの
多数のゴブリンの死体が倒れている洞窟前に移動し、洞窟内に入っていったシャーリーさんとセシリア隊長が残りのゴブリンを殲滅するまで、この場所で警戒する。
また、オルブライトさんたちが合流した場合は洞窟内へ入ってもらい、セシリア隊長たちとともに戦ってもらう。
洞窟内に、どれだけのゴブリンが残っているか分からないからだ。
「佐藤さん、このゴブリンは収納します?」
「え~っと、このゴブリンを?」
「はい」
熊谷さんが、佐藤さんに提案したがどういうことだろうか?
「舞、こんなゴブリンの死体なんかどうするの?」
「小春、ゴブリンと言えど魔物だよ?
魔物からは、魔石がとれるんだよ?」
「……なるほど、魔石確保のためか」
確かに、ゴブリンも魔石を持っていたな……。
でも、この数のゴブリンを後で解体するのか?
「……ま、まあ、それなら収納した方がいいのかしら?」
「佐藤さん、お願いできますか?」
「……わ、分かりました」
水澤さんからもお願いされて、佐藤さんは渋々ゴブリンを収納していく。
すると、十体ぐらいゴブリンを収納したところで佐藤さんの動きが止まった。
「……佐藤さん?」
「あ、ごめんなさい。
新しいスキルが開放されましたって、表示されたから」
「新しいスキルですか?」
「ええ」
「どんなスキルか、教えてもらえますか?」
水澤さんが、佐藤さんの新しいスキルに一番興味をひかれている。
もちろん俺たちも、興味はあるが水澤さんほどではない。
「えっと、収納で収納倉庫の中に入れた物を自動解体できるようになったんです」
「自動解体!」
「すごい! 佐藤さん、やって見せて!」
「お願いします!」
熊谷さんと武内さんがお願いして、佐藤さんは、自分の前に出ているであろうスキルボードを指で操作している。
傍から見ると、スキルボードが見えないから、空中で指を動かしているようにしか見えないんだよな……。
「できたわ。収納倉庫から出すわね」
そう言うとすぐに、佐藤さんの足元に解体されたゴブリンが出現する。
ただし、ゴブリンに利用部位なんてないから、魔石と死体と討伐証明部位の耳に別れて出現した。
「うわっ!」
「……」
ゴブリンの魔石は、小指の先ほどしかなく小さかった。
まあこれでも、利用価値はあるらしいんだよな……。
「佐藤さん、驚いている熊谷さんたちはほっといて、残りのゴブリンを収納しましょう。
そして、倉庫内での解体をよろしくお願いします」
「わ、分かったわ」
俺がお願いをして、佐藤さんは了承すると、転がっているゴブリンの死体を収納し始めた。
収納が終われば、解体をして魔石だけは確保できる。
「それにしても熊谷、銃撃中は助かったよ」
「へ? ああ、交換マガジンの支給?
ついでだったから、問題ないよ」
「それでも、助かった。ありがとうな」
洞窟から出てきたゴブリンを、俺たちは銃撃していったんだが、すぐに弾切れになってしまった。
何故なら、洞窟から出てきたゴブリンの数が予備のマガジンを合わせても足りなかったからだ。
銃は四丁、マガジンには十五発。予備を含めて三十発だ。
合わせて百二十発だ。
ゴブリンは、百匹以上が出てきていたと思われる。
で、そのゴブリンを全部銃撃したんだが、途中で弾が足りなくなってしまった。
原因は、ゴブリン一匹に弾丸一発で足りなかったこと。
熊谷さん以外は、ガンナーではないため百発百中とはいかない。
職種補正が、存在しているのだろう。
その補正が無かったせいで、外したり致命傷にならなかったりしたのだ。
そこで熊谷さんが自分のスキルの銃召喚で、予備のマガジンを召喚してくれたのだ。
「……全部収納したわ。解体するわね……」
「お願いします!」
洞窟の前で、周りを警戒しながらもゴブリンの死体の始末をしていると、洞窟内から大きな音が聞こえた。
ドゴンッと、少しの地響きも感じるほどだ。
「……何?」
「洞窟内から、響いてきたようだけど……」
「セシリア隊長たち、大丈夫かな?」
「ん~……」
そしてもう一度、ドゴンッと大きな音とともに、今度は大きな地響きを感じた。
俺たちが洞窟内を覗こうとした時、洞窟内から人が飛び出してきた!
「シャーリーさん!」
「セシリア隊長!」
「みんな! ここから離れるわよ!!」
「急いで!?」
セシリア隊長とシャーリーさんに大声で急かされ、俺たちも洞窟の前から急いで離れた。
すると、俺たちが離れた直ぐ後に、洞窟から大きな物体が飛び出してきた!
高さ三メートルから五メートルもある、大きなゴブリンだ。
しかも、全身を金属製の鎧で包まれていた。
「な、何ですか、あれは!」
洞窟の入り口から、ある程度距離を取ったところで、出てきた物体を確認する。
そして、シャーリーさんに質問した。あれは何? と。
「ゴブリンジェネラルよ。
例の、ゴブリンたちが運び込んだ大きな袋があったでしょ?」
「は、はい」
「あれには、女性冒険者が入っていたわ。
で、ゴブリンに捕まって洞窟の少し行った脇道の所の牢に閉じ込められていたの」
「その牢の中には、他にも多数の女性たちが捕まっていたのよ」
「それで、セシリアと一緒に開放しようとしたんだけど……」
「アレに見つかって、追いかけられて逃げてきたってわけ」
「戦う……と言う選択肢は、ないですね……」
「ないわ」
「ないわね」
どうやら洞窟の奥へ行く途中に、脇道があって女性たちが捕まっている牢があるようだ。
その牢から女性たちだけも解放しようとして、あのゴブリンジェネラルに見つかって、ここまで追いかけられたと。
で、戦うには力不足と……。
『グゥガアアアァァァァア!!!』
「「うわっ!」」
「「くっ!」」
「「「「!!」」」」
ゴブリンジェネラルが吠えると、大きな声に耳をふさぐもの、心臓が掴まれたような感覚に陥るもの、ビックリする者とそれぞれで驚いた。
俺は驚いただけだったが、武内さんと佐藤さんは、胸を押さえて苦しそうだ。
さて、どうする?!
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