第19話 ゴブリン討伐戦



ゴブリンの集団を追うこと十分ほどで、大きな洞窟に到着した。

ゴブリンたちはその洞窟の中に入っていき、見張りのゴブリン一匹を残していった。


「シャーリーさん、あそこですか?」


先頭で追いかけていたシャーリーさんの側に移動して、小声で聞いてみる。

すると、洞窟から少し離れた小陰に隠れて見張る、シャーリーさんが答えてくれた。


「ええ、大きな袋を持ったゴブリンたちは、あの洞窟の中よ。

セシリア隊長、どうしますか? 援軍を呼びますか?」


いつの間にか、俺の後ろにいたセシリア隊長に指示を求める。


「……そうね、オルブランやレオンたちを呼びたいけど、気になるのはあの袋の中身よね」

「そうですね。もし人が入っていた場合は……」

「おそらく、女性でしょうね」


セシリア隊長とシャーリーは、二人で考えこむ。

二人の話しぶりから、この世界のゴブリンも小説などの世界にあるゴブリンのイメージそのもので合っているようだ。


洞窟の奥で、ゴブリンたちが袋に入っていたであろう女性をどう扱うかなんてのは、想像するまでもないだろう。

ならば、すぐにでも助けに行かなければならないんだが……。


今の俺たちで、助けるけることができるのか?

オルブランたちを呼んでいて、助けることができるのか?

セシリア隊長たちは、どう行動するべきなのか……。


「なあ、高坂」


そこへ、片山が側によって来て質問する。


「なあ、催眠ガスみたいなものはないか?

手榴弾みたいなものに入れてあって、ピンを抜いて部屋の中へ転がすと催眠ガスが出て部屋の中の人たちを眠らせる、みたいなものがあるだろ?

そういうのないか?」

「そういうのはないな」

「そ、そうか……」

「それに片山君、そういうのは映画ドラマだけの話だぞ?

現実にそんな催眠ガスを吸って眠った人は、そのまま死んでしまうと思うぞ」


片山の質問に詳しく答えてくれたのは、水澤さんだった。

いつの間にか側によってきていて、質問に答えてくれた。


なるほど、睡眠ガスはフィクションのものだったのか……。


「ね、高坂君」

「ん?」

「洞窟の前で、大きな音を出して中のゴブリンをおびき出せないかな?」

「おびき出す?」

「今いる見張りのゴブリンを始末して、洞窟の前で大きな音を出せば、何があったのか出て来るんじゃない?

少しは中に残るかもしれないけど、出てきたところを始末していけば……」

「シャーリーさん、セシリア隊長、今の作戦どうです?」


熊谷さんが話してきた作戦を、シャーリーさんとセシリア隊長が聞いていたから二人に聞いてみる。

すると、二人は少し考えた後、了承してくれた。


「クマヤ、見張りのゴブリンをお願い。

コウサカ、見張りを始末したら洞窟前で大きな音をお願いできる?」

「分かりました」

「じゃあ、音に驚いて、出てきたゴブリンをみんなで始末して。

始末した後で、私とシャーリーで洞窟内に入るわ」

「了解です、隊長」

「私たちが入った後は、洞窟前で警戒をお願い。

おそらくコウサカが出した大きな音で、オルブランたちにも聞こえると思うから……」


音で、オルブランさんたちを呼ぶってことか。

それじゃあ、準備をしようか。


今回は、映画でよく出てくるものだから想像しやすい。


【召喚】


そう唱えると地面に魔法陣が出現し、M84スタングレネードが現れた。

170~180デシベルの爆発音と閃光を放つ兵器だ。

俺たちがいる場所と、洞窟は距離があるから影響はないと思う。


「高坂君、スタングレネードだね?」

「ええ、大きな音となるとこれが一番だと思いますので」

「確かに……」

「じゃあ、始めるよ?」

「いいわ、クマヤ。お願い」

「はい」


木陰から、姿を隠しながらサプレッサー付の銃で入り口の見張りをしているゴブリンを狙う。

そして、プシュッという音を出すと、洞窟入り口のゴブリンの頭から緑の血しぶきが飛んだ。

さらに、ゴブリンは仰向けに倒れ動かなくなった。


「コウサカ!」


セシリア隊長の合図とともに、グレネードのピンを抜いて洞窟に向かって投げる。

すると、洞窟の入り口のすぐ手前に落ちて転がった。


「伏せて!」


俺が、注意すると全員がその場に伏せる。

俺も地面に伏せると、洞窟から閃光が走った後、耳がキーンとした。


「う~、少し耳がキーンとした……」

「すごい閃光だったわね……」

「セシリア隊長、大丈夫ですか?」

「な、何とか、ね。

それにしてもコウサカ、すごいものねアレは……」

「……それよりも、出てきたよ……」


俺の指摘に、全員が洞窟を見るとわらわらとゴブリンが洞窟から出てきた。

しかも、少しフラフラしているゴブリンもいた。

ただ、数が多い。


「みんな、構えて!」

「舞、このまま撃てばいいのか?」

「よく狙ってね。特に、頭を狙って仕留めるといいよ」

「頭、ね……」

「片山君、狙えるかい?」

「大丈夫だと思います。水澤さんはどうです?」

「僕は、ハワイで練習したことがあるからね。大丈夫だよ!」


熊谷さん、武内さん、片山に水澤さんは、小陰から銃を構え洞窟から出てきたゴブリンを狙う。

そして俺もまた、銃を構えてゴブリンに狙いを定める。


「撃て!」


熊谷さんの合図とともに、引き金を引き、ゴブリンを倒していく。

洞窟から出てきたゴブリンは、数は多いが普通のゴブリンだ。

鎧も盾も持っておらず、弓も魔法も使わない普通のゴブリンが、次々俺たちに撃たれその場に倒れていく。


当のゴブリンたちは、何が起きているのか分からず右往左往していた。



そして三十分もかからず、洞窟から出てきたゴブリンを全滅させた……。


「シャーリー、行くよ!」

「はい! セシリア隊長!」


二人は、ゴブリン全滅を待って隠れていた茂みから出て洞窟の中へ入っていく。

俺たちも茂みから出ると、洞窟の前に移動する。






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