第16話 捜索の班別け
夜、見張りの交代隊員以外がそろった夕食時。
折り畳みのテーブルに夕食を並べて、みんなで食べながら報告会が始まる。
「それじゃあ、村人からの聞き込みの結果を聞きましょうか?
その間、みんなは食べていていいわよ~」
「それじゃあ、食べながらでいいので聞いてください」
シャーリーさんが、村人からの聞き込みの結果を報告する。
本来なら、こんなことはしないのだが今回は時間がなく、明日からゴブリンの討伐をするため、こんな報告をさせることになったらしい。
「まず、村人の大半がこの村の東側のゴブリン襲撃のことを知っていました。
ただ、ゴブリンの姿を確認したものはいませんでした」
「え? ゴブリンを見た者はいなかったの?」
「はい、ゴブリン襲撃時は家に隠れていたそうです。
家に隠れられなかったものは、避難場所の村長の家に隠れたそうです」
「……ねぇ、村人はどうやってゴブリンの襲撃を知ったの?」
「ホーゲンという村人が、ゴブリン襲撃が始まる前に村長をはじめ、村人にふれ回るそうです。ゴブリンが襲ってきたぞ~っと」
なるほど、ゴブリン襲撃時はみんな隠れていたと。
しかも、襲撃はホーゲンという村人の知らせでそれぞれ隠れるというわけか。
「ホーゲンに聞き取りは?」
「したわよ。そのホーゲンは、村の外で堀や塀の管理をしているようで、それで最初にゴブリンが襲ってくるのが分かるとのことです」
「なるほど、最初に見かけるからふれ回るのがホーゲンになるわけか……」
「それで、どの方向からゴブリンが来るかは言ってなかったか?」
「ホーゲンの話では、東側から来るそうよ」
「東側……」
ということは、俺たちが野営をしているこっち方面から、ゴブリンが襲ってくるってことか。
ならば、この先にゴブリンの集落があるのか?
そんな考えにみんなが至ったのか、ほぼ全員が東側の村の外を見た。
高い塀で外を見られなかったが、方向は分かったな……。
「そういえば村に来るとき、ゴブリンに襲われましたよね?」
「村の南側から私たちは来たけど、確かにゴブリンに襲われたわね。
しかも街道沿いだったわね……」
しかも、かなりのゴブリンの数だったな。
セシリア騎士隊の隊員が押されていたらしいし、対応できるんだろうか?
「とにかく、明日からは班に分かれてゴブリンの集落の発見よ!
どこにゴブリンが集まっているか分からないと、対処のしようがないわ」
「では、私ことシャーリーの班とレオンの班、それとオルブランの班の三つに分けて探索します」
「いいわ、それでお願い。
いい? まずは集落の発見! ゴブリン討伐は、隊の全員で対応します!」
「「「了解しました!」」」
隊の方針が決まり、夕食を食べ終えると解散となった。
あとはそれぞれで過ごし、明日の朝を迎えるようになる。
俺は、野営のためのテントで寝ることになる。
キャンピングカーは、佐藤さんたちが使うことになってしまった。
……まあ、しょうがないと諦める。
とりあえず、テントが大型なのでベッドだけでも召喚して快適に寝るか。
▽ ▽ ▽
『起床ー! 起床ー!』
誰かの大声で目が覚める。どうやら、テントの外からのようだ。
全員を起こすために、これをしているのだろうか?
眠い目をこすりながら、ベッドの横のテーブルに置かれたスマホを確認する。
そこには、午前五時の数字が表示されていた。
異世界で、スマホに表示される時間が正確かどうかは分からないが、とりあえず朝が早いことには違いない。
眠いながらも、服を着てテントの外に出た。
服も召喚すればいいのだが、みんなは召喚された時のままだ。
俺だけ、違う服を着るのも、ね……。
テントの外に出ると、他のみんなも起きてきていた。
「高坂君、おはよう……」
「おはようございます、水澤さん」
「おはよう、高坂」
「片山さん、おはようございます」
水澤さんと片山が、もう一つのテントの前で挨拶を交わす。
そして、佐藤さんと熊谷さんに武内さんが、キャンピングカーの前で挨拶してくる。
出てきたところで、少し体を動かしていたらしい。
「おはようございます」
「おはよう~」
「おはよう」
挨拶を交わし終えたとき、マリーさんが近づいてくる。
そして、一礼して俺たちを朝食に案内してくれた。
「おはよう!」
「おはよう、よく眠れたかい?」
「おはよう」
昨日夕食を食べた、折り畳みのテーブルに交代の隊員以外の全員がそろっている。
朝食は、パンにスープに飲み物の三種だ。
それに、それぞれで何かしら加えて食べている。
「では、朝食食べながらでいいから聞いて。
異世界人のみんなは、シャーリーと一緒の班に入って探索を。
レオンとオルブランの班は、それぞれいつも通りの班別けでお願いね」
「分かりました」
「了解、任せてくれ」
「了解だ」
ということは、俺たちはシャーリーさんと一緒にゴブリン探索に参加すればいいのか。
ゴブリンとの戦闘がメインじゃないし、シャーリーさんがいれば大丈夫だろう。
それに、一応戦う手段はあるわけだしな……。
「他のみんなは、ここのことをお願いね」
「お任せください。
それで、セシリア様は?」
「私は、シャーリーの班について行くわよ」
「分かりました」
セシリア隊長も、俺たちと一緒にゴブリンの探索か。
ここには交代で休んでいる隊員もいるし、マリーさんたちも大丈夫だろう。
そういえば、ゴブリンの数が多ければ上位種がいる可能性があるらしい。
ホブゴブリンやジェネラルゴブリンにゴブリンキング、そしてゴブリンロードだったか。
ドローンの映像でゴブリンを見たが、結構醜かったな。
魔物となると、あそこまで怖くなるものなのか……。
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