第15話 使い続けた結果



セシリア隊の隊員たちが、野営のためのテントを組み立てているところでマリーさんが声をかけてきた。


「皆さんも、野営のためのテントを組み立てましょうか。

テントもここにありますし……」


マリーさんの足元には、俺たちのためのテントが二組置かれていた。

俺たちは、そのテントを受け取って組み立て始める。


パーツごとに分けながら、テントを広げて組み立てていく。

あ~でもない、こ~でもないと、みんなで相談し、マリーさんに教えてもらいながら立てていく。


大きなテントが二つ立ったところで、片山が俺に聞いてくる。


「なあ高坂、キャンピングカーとか召喚できないか?」

「最初の野営の時に召喚しようとやってみたけど、魔力が足りないって召喚できなかったんだよ。

たぶん召喚できる魔力ってのが決まっていて、今の俺のステータスの魔力だと召喚できないってことなんだと思う」

「それって、レベル上げみたいなものか?

魔物とか倒して、ステータスが増える的な……」

「おそらくは、ね」


俺と片山の会話を聞いていた水澤さんが、話に加わってくる。


「それじゃあ、今はどうです?

ここまでで、何度も召喚を繰り返したようですし……」

「え~と……」


俺は、自分のステータスを確認するためにカードを取り出した。

そして、カードを見ると召喚魔法(劣)の後ろに、増という文字が表示されていた。


「……これって、召喚の種類が増えたってことか?」

「何かあったの?」

「いえ、スキルの召喚魔法の後ろに『増』という文字があったので……」

「そういう時は、詳細を見たらいいんじゃないかな?」

「あ、そうですね」


水澤さんのアドバイスを受けて、俺はスキルを指で触れる。

すると、詳しい内容が表示される。

そしてそこには、召喚可能になったものが増えたと表示されていた。


「……召喚可能になったものが、増えていますね」

「なら、キャンピングカーが召喚できるんじゃないかな?」

「早速、召喚してみます」


俺はキャンピングカーを思い浮かべながら、召喚魔法を唱えた。


【召喚!】


すると、テントの前のひらけた場所にトラックのキャンピングカーが現れた。

所謂、キャブコンと言われるタイプだ。

トラックを改装して、キャンピングカーにしてあるヤツだ。


だが、そんなモノが突如として現れれば、騒ぎにならないはずがなく、野営の準備をしていた全員が集まってきてしまった。


「な、何ですか! これは!」

「マリー! 何ですか、これは!」

「ちょっと、ちょっと! 何よこれ?!」

「おいおい、何だぁ?! これは!」

「高坂さん! 何を召喚したんですか?!」

「高坂!?」


集まってきた人たちが、近づいてきた順に質問してくる。

最初はマリーさんが質問してきたかと思えば、マリーさんの姿を見た隊員がマリーさんに質問したりと、混乱しているようだ。

そして、佐藤さんが近づいて来て驚き、熊谷さんと武内さんが俺に詰め寄ってきた。



混乱を納めるために俺の召喚魔法だと話すと、脅かすなよと隊員たちは離れていった。

だが、佐藤さんと熊谷さんに武内さんは、キャンピングカーが何か分かっているため、周りをじっくり眺めていた。


「ね、高坂君。これキャンピングカーよね?」

「はい、佐藤さん。そのつもりで召喚しましたけど……」

「中を見てもいいかな?」

「車内ですか? 構いませんよ」

「じゃあ、失礼して……」


そう言うと、扉を開けて車内に入っていく。

佐藤さんの後に続くのは、熊谷さんと武内さんだ。

どんな施設があるか、気になるらしい。


……それにしても、鍵はかかってなかったな。

何でだ?


『舞! トイレがあったぞ!』

『え?! じゃあ、外で隠れてする必要がないんだ~』

『良かった~』

『熊谷さん、武内さん、シャワーもあるわよ?!』

『あ、ホントだ~』

『ボディーソープも、シャンプーも付いているわね』


そして、外に声が漏れながら中を一通り見た後で、外に出ると、俺にお願いしてきた。


「高坂君! このキャンピングカーだけど……」

「私たちにも、使わせてもらえないかな~」

「お願いします!」


佐藤さんと熊谷さんは、お願いと俺を見てくるが、武内さんは頭を下げてストレートにお願いしてきた。

まあ、独り占めする考えはないのでみんなで使おうと許可した。


「ありがとう!」

「ありがとう! 高坂君」

「サンキュ~、高坂!」


次々にお礼を言った後、キャンピングカーの中に入っていった。

もしかして、キャンピングカーの中に泊まるつもりなのかな?

みんなで使おうと、許可したんだが……。


「高坂君……」


俺の肩を叩いて、慰めてくれる水澤さん。

そして、片山の方を見ると、顔を左右に振って諦めろと。


俺は二人の反応に、肩を落としてしょうがないと諦めることにした……。

そこに、マリーさんが近づいてきた。


「あのコウサカさん? これ、この場所から移動できませんか?」

「えっと、邪魔、になりますよね……」

「ちょっと、邪魔になりますね……」

「分かりました。テントの外に、移動させますね」

「お願いします」


そういって、マリーさんは離れていく。

早速移動させようと思うが、俺、免許ないんだよね。

運転も経験ないし……。


ならばと、水澤さんにお願いしてみる。

年齢的に、水澤さんなら免許持っているかもしれないしトラックの運転もできるかもしれないから……。


「キャンピングカーを移動させてほしい?」

「はい、ここにあると邪魔になるみたいで……」

「いいけど、私トラック運転したことないんだよな~」

「それなら、俺が運転しますよ」

「片山君、トラックの免許あるの?」

「ありますよ」


そういって、キャンピングカーの運転席に座り、エンジンを始動させる……。







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