第13話 ゴブリンの襲撃



「熊谷さん、狙撃銃って召喚できる?」

「狙撃銃? ちょっと待って……」


俺は、ガンナーの職種を持つ熊谷さんに、狙撃銃でここからゴブリンを狙撃してもらおうと考えた。

その考えを、熊谷さんが銃召喚のリストから探している時にみんなに説明する。


「ここから、ゴブリンを狙撃できればいいと考えたんだけど……」

「そうね、隊の人たちを助けるならいいと思うわ」

「俺も賛成するが、できるのか?」

「片山君の言う通り、この場所から狙撃するといっても……」


水澤さんは、その場で周囲を見渡すが、高い建物など存在しない。

狙撃は、高所からしなければ効果がないだろう。


「そうね、こんな開けた街道だと……」

「あったわ。

М700という狙撃銃が、召喚可能だよ」

「あとは、高所があれば……」

「高所、ね……」


そう言いながら、武内さんと佐藤さんが俺を見てくる。

大きい物って召喚できなかったような気がするんだが、一応考えながら召喚する。


【召喚!】


地面に魔法陣が出現し、三階くらいの高さの飛び込み台が出現した。

階段がついていて、飛込板もちゃんとある。


「……なぜ飛び込み台?」

「いや、高い建物と考えて、飛び込み台が浮かんだので……」

「と、とにかく、登って狙撃してみてはどうです?」

「ちょっと、行ってくるわね」


水澤さんに促され、熊谷さんは軽く階段を上って頂上へ上がる。

そして、ゴブリンとタイの人たちが戦っている方向を見た。


『……見えた! ゴブリンと戦っているのが見えたよ!』

「舞―! ゴブリンだけ狙えるー?!」

『ちょっと待ってー!』


熊谷さんは、飛び込み台の頂上で蹲ると、М700を構えてスコープから覗いた。

そして、大声でその様子を答えてくれた。


『見えた! 狙えるよー!』

「それじゃあ、ゴブリンだけを狙撃して!」

『了解!!』


そう返事をしてきた直後、ダーンと銃声が聞こえた。

そして、ボルトアクションをして弾丸を装填し、再びダーンと銃声が続く。


俺たちは、飛び込み台の下で待つことしかできない。

そのため、飛び込み台の下に集まって話をするだけとなった。


「それにしても熊谷さん、躊躇なく撃っているな」

「そういえばそうね。

ゴブリンとはいえ、生き物を狙撃なんて、普通に生活していたらありえないことだし……」

「たぶん、舞はゲーム感覚なのかもね」

「ゲーム感覚ですか。

まあ、スコープから覗いて撃つだけですからね……」


俺が提案した隊への協力だったが、これでよかったのか……。

俺自身は、ゴブリンと戦ってもいないし殺してもいない。

戦っているのは、熊谷さんだけだ。


今も俺は、ドローンからの映像で、ゴブリンが倒されていく様子を確認している。

その様子から、セシリア隊長たち隊の戦っている人たちの助けとなっているようだ。


「あ、戦闘が終わったみたいだな……」

「終わった? どうなの? 被害状況は?」

「ん~、けが人は多数いるみたいだけど、死んだ人はいないみたい。

後、倒したゴブリンを集め始めてる」

「ゴブリンの死体を?」

「そんなもの、どうするんだ?」


ドローンの映像から、戦いが終わったことを話すと、佐藤さんが質問してくる。

かなり心配していたようだ。

ドローンの映像から詳しくは分からないが、人の死体はなかったからケガ人だけと思う。


後、動ける人たちでゴブリンの死体を集めているのに驚いた。

武内さんも片山も、不思議に思ったようだ。


『終わったよー!』


飛び込み台の上から、熊谷さんの声が聞こえた。

戦闘終了が分かって、声をかけてくれたんだろう。


「舞ー! 降りて来てー!」

『了解ー!』


上からの返事を聞いた後、マリーさんが話に加わってきた。

ゴブリンを集めることの説明をしてくれた。


「先ほどの、ゴブリンを集めているということですが……」

「マリーさんは、知っているんですか?」

「はい。ゴブリンを集めるのは、魔石を回収するためと死体を焼くためです。

ゴブリンの死体で使える素材は魔石以外ありません。

ですから、魔石以外は処分するのです」

「でも、何故焼くんですか?

処分するなら、土に埋めるだけでもいいんじゃ?」

「それは、アンデットになるのを防ぐためです。

死んだ魔物は、そのままで放置すると、何日かでアンデットとしてよみがえるのです」

「うへぇ~」

「それ、異世界物だとよくある話だよな……」


確かに、異世界物の小説や漫画などではよくある話だ。

でも現実も同じように、アンデットになるとはね。


そんな話をしていると、上から熊谷さんが降りてきた。

ただいまーと声をかけて、武内さんがお帰りと笑顔で迎えていた。

二人は、かなり親しい友人のようだ。


そんな二人を見ながら、飛び込み台を送還し、呼び戻したドローンも送還する。

そこへ、セシリア隊長たちが帰ってきた。


かなり苦戦をしたと思えるような感じなのは、服や鎧の汚れが目立つためだろう。

服が破れていたり、鎧がへこんだりしている人もいた。


「はぁ~、ゴブリンが多かった~」

「街道にいた、ゴブリンの討伐は終わりました。

死体処理も任せてきたので、もう大丈夫だと思います」

「でも村に着く前に、こんな大量のゴブリンに襲われるなんてね……」

「隊長、これは気を引きして進みましょう」

「そうね、みんなに伝えておくわ」


そう話して別れ、シャーリーさんは俺たちの方へ歩いてくる。

そして、俺たちにゴブリンとの戦闘を簡単に説明しながら馬車へ乗り込んだ。

俺たちが馬車に乗りこみ終わると、馬車が動き出した。


馬車が進んで行くと、ゴブリンと戦った街道を通る。

そこは、あちこちに緑の液体が飛び散っていて、気持ち悪かったな……。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る