第12話 空からの偵察



馬車で街道を走り続け、最初の野営場所でマリーさんが心配したように、セシリア隊長にクッションのことを羨ましがられ、隊全員分のクッションを召喚する羽目に。


そして初めての野営では、テントの張り方や食事の準備、見張りの仕方など、いろいろと教えられた……。

これから騎士隊に所属するなら、覚えておいた方がいいと言われてな。


もちろん俺は、大型のキャンピングカーでも召喚できないかやってみたんだが、魔力が足りず召喚できませんとログボードが出てしまった。


大量のクッションは召喚できたのに、キャンピングカーは無理って、どうなってんだ?


俺は、自分の召喚魔法の制限に首を傾げるばかりだ。

どこまでが良くて、どこからができないのか、これからも使い続けて実験しないとな……。




そして、馬車で街道を進むこと三日目。

何事もなく、最大限の速度で急いだから、今日中にルーマスの村に到着するはずだ。


「シャーリーさん、もうすぐ目的地のルーマスの村ですよね?」

「ええ、この三日間、馬車で走りっぱなしだから、もうすぐ到着するはずですよ」

「どうしたの? 舞さん、緊張しているの?」

「違いますよ、佐藤さん。

村に付いたら、すぐに戦闘になるのかなと思って……」

「そうなの? 私たち、すぐに戦わされるの?」

「いえ、それはないと思います。

ゴブリンたちも、ずっと襲っているわけではないでしょうし、それに、村にも防衛のために戦う人たちもいるはずです」

「そうです。

それに、ルーマスの村の村長は、元高ランク冒険者です。

ゴブリンとの戦い方は、分かっているはずですし……」


すぐに戦わされるのではという熊谷さんの心配から、シャーリーさんが戦いはないと否定する。

そして、マリーさんが村の村長が元高ランク冒険者ということを教えてくれた。


高ランク冒険者か~。

ラノベや漫画では、冒険者と言えばすごい連中がいるというイメージだが、この世界の冒険者ってどうなんだろうな……。


「ほう、冒険者ですか? マリーさん」

「はい。ルーマス村の村長は、元高ランク冒険者。

ですから戦い慣れていますので、大丈夫だとは思います」


……もしかして、村長が元高ランク冒険者だからこそ、弱小騎士隊のセシリア隊に依頼が来たのか?

まさかな。



「! 前の馬車からの合図だ!」


そう言って御者のおじさんが、馬車を緊急停止させたため、俺たちは馬車の中で転んでしまった。


「うわ!」

「ちょっと!」

「うお!!」


マリーさんに抱き着くように、熊谷さんと武内さんがぶつかり、シャーリーさんには佐藤さんがぶつかる。

佐藤さんが使っていたクッションを片山が背中で押しつぶし、武内さんの使っていたクッションを水澤さんが押しつぶすことに。

俺は馬車の端だったため、幌を掴んで転ばずに済んだ。


「ててて……。何があったんだ?」

「う、うう……」

「御者のおじさん、どうしたんですか?」

「前の馬車が止まったんですよ。

それで、こっちも止まるしかなくて……」


外を見ると、隊の馬車がすべて停止していた。

そして、前の馬車から武器を手に持った隊の兵士たちが飛び降りて前に走って行く。


「!? もしかして、襲撃?!」

「シャーリー様!?」


シャーリーさんはすぐに立ち上がり、前から馬車を降りて自分の武器を構える。

馬車での移動の間も自分の側に置いてあったから、すぐに用意できたのか。


「みんなはここで待機!

マリー、あとはお願い! 私は様子を見てきます!」

「分かりました」


そう言うと、前の方へ走って行った。

シャーリーさんが走って行く先から、金属音が何度も聞こえてくる。

もしかして、戦っているのか?


「ど、どうするの?

私たちは、どうすればいいの?」

「落ち着いてください、サトウさま。

戦いは、シャーリー様たちに任せて、私たちは周囲の警戒をしましょう」

「わ、分かったわ……」


周囲の警戒か。

つまり、偵察ってことだよな……。


俺は考え、あるモノを召喚することにした。

そのあるモノのことを考え、詳細をイメージする。

そして、召喚した。


【召喚!】


すると、地面に魔法陣が表れ、そのあるモノが召喚される。

そのあるモノとは……。


「高坂君! それは、ドローンかい?!」

「はい、これで周辺の偵察をしようかと……」

「なるほど、空からの偵察なら分かりやすいか」


俺は、ドローンを起動させてコントローラーで操作する。

すると、ドローンはすぐに上空にあがり、周辺の映像をコントローラーについているモニターに映し出した。


「……小さいな」

「今はこれで。

それで、高坂君。前方の戦いはどうなんだい?」

「ちょっと待ってください……。

あ、戦っていますね。

相手は、たぶんゴブリンだと思います……」


モニターに映し出された映像を、みんなに見てもらい確かめてもらう。

みんな戦っている魔物の姿を見て、表情を渋くした。


「……これ、ゴブリンに間違いないだろう」

「リアルのゴブリン、初めて見た……」

「本物は、ものすごく気持ち悪い姿ね……」

「ゲームとビジュアルが、全然違うな……」

「これは、なまはげの方がまだかわいげがありますね……」


武内さん、熊谷さん、佐藤さんと見て感想を言っていく。

片山はゲームのゴブリンと比べて感想を言ってるし、水澤さんはなまはげと比べていた。

というか、何故なまはげと比べたのか……。


「……ここにいるのはゴブリンです。

でも、何でこんな小さな板に?」

「まあそれは、今はいいとして……。

俺たちは、どうするのかって話だな……」


俺は、異世界人のみんなを見渡し、これからどうするか意見を求めた。

周辺の偵察はしないといけないが、一応戦うための力はある。

前方のゴブリンとの戦いは、ドローン越しだったが、苦戦しているみたいだった。


これから騎士隊でお世話にならないといけないのなら、どう行動するべきか……。







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