第11話 馬車での移動



王都を出て街道を走る馬車のその車内で俺たちは、お尻の痛みを感じることなく過ごしていた。


「……痛くないわね」

「街道はほとんど整備されていないから、慣れている私達でも結構痛いのに……」

「本当に、高坂君の召喚魔法はチートだね~」


俺と一緒に乗っている人たち限定ではあるが、衝撃吸収に優れたクッションを人数分召喚して渡したのだ。

そのため、馬車に乗る全員が快適に過ごしていた。


武内さんも、クッションがあることでお尻が痛くならなくなったと驚いている。

またシャーリーは、街道での馬車の乗り心地の悪さを覚悟していたが、俺の渡したクッションでの快適さに驚いたようだ。


そして水澤さんは、俺の召喚魔法をチートだと称えていた。


「でもこれだけ快適だと、次の野営場所では、隊の人数分のクッションを召喚しなければいけなくなるでしょうね……」

「大丈夫? 高坂君」

「……たぶん、大丈夫だと思いますよ。佐藤さん。

同じ物を召喚するのは、魔力を最小限で済むみたいですので」

「へぇ~、便利なんですね。召喚魔法とは」

「それより、お腹空いたな……」

「そう言えば、夕食前に出てきたんでしたね。

でも次の野営場所まで少しありますし、今は我慢していただくしか……」


マリーさんが、次の野営場所でのことを心配すると、佐藤さんが同じように心配してくれた。

そして、俺が問題ないというと、熊谷さんが感心する。


その後、お腹を鳴らした片山が言うと、マリーさんが夕食を抜いていたことに気づき、次の野営地まで我慢するように言ってくる。


「あ、そうだ」


片山は何かに気づいたように、ズボンのポケットから俺が召喚したコンビニのおにぎりを二個、取り出した。

それを見ていた水澤さんも、制服のポケットから同じようにおにぎりを取り出す。


「それ、コンビニのおにぎりですか?」

「コンビニ店員が、何故ポケットにおにぎりを?」

「このおにぎり、高坂君の召喚魔法で召喚した物なんですよ。

みなさんも食べますか?」

「あ~、私はサンドイッチの方がいいかな……」

「あ、私も……」

「どうかな? 高坂君……」


片山と水澤さんの取りだしたおにぎりを見て、熊谷さんと武内さん、それに佐藤さんが俺にサンドイッチを出してほしそうに見てくる。


「……コンビニのサンドイッチでいいの?」

「出してくれる?」

「なら、東岸亭の卵サンドイッチが食べたいかな~」

「あ、あそこの美味しいよねぇ~。私もそのサンドイッチがいいな~」

「わ、私も、お願いします……」


俺が三人の視線に負けて、召喚を了承すると、東岸亭の卵サンドイッチと指定してきた。

そういえば、東岸亭って駅近くにある、テレビでも紹介された有名な店だよな。

確かに、あそこの卵サンドイッチは美味しそうだったが……。


果たして、召喚できるのかどうか、いい実験だ。


俺は、テレビで紹介されていたところを思い出し、卵サンドイッチの食レポも思い出した。

そして俺は、召喚魔法を唱えた。


【召喚!】


すると、馬車の床に魔法陣が浮かび上がり、お持ち帰り用の東岸亭の卵サンドイッチが八個出現した。


「出たわ!?」

「これこれ! 東岸亭のお持ち帰り用の箱!」

「……すげぇな、本当に出たよ」


シャーリーが驚き、武内さんが東岸亭の箱が現れたことで喜ぶ。

そして片山が、改めて俺の召喚魔法を驚いていた。


この後全員に配り、みんなで美味しくいただきました。

確かに、東岸亭の卵サンドイッチが箱に詰まっていました。


どうなっているんだ? 俺の召喚魔法。




▽    ▽    ▽




みんなで卵サンドイッチを食べてお腹が満たされたところで、シャーリーが今回の騎士団からの緊急依頼に関して話してくれた。


「さて、それでは皆さんに、今回の緊急依頼に関して話しておきます」


そう真面目な表情で、俺たちに話始めた。


「今回の依頼は、ルーマスの村を襲っているゴブリンの集団の退治です。

依頼書には、襲撃したゴブリンは軽く百匹を超えていたと書かれてありました。

となるとゴブリンには、上位の存在がいる可能性があります」

「上位、ですか?」

「ええ、そうよクマヤさん。

ホブゴブリン、ジェネラルゴブリン、ゴブリンキングにゴブリンロード。

ゴブリンの上位の種がいる可能性があります」

「ただ、ロードを発見した場合は、騎士団に報告して応援を要請する必要がありますね」

「ええ、マリーの言う通り。

ただ、私たちの隊は弱小だから、ジェネラルがいた時点で危ないんですが……」


セシリア騎士隊は、そんなに弱いのか?

護衛騎士のオルブランさんは、強そうに見えたけどな……。

レオンは、顔だけかもしれないがな。


「それなら、私たちが戦えるかどうかにかかっているというわけですか?」

「ミズサワさん、そうなんですが、みなさんの職種を考えると……」

「ん~、私はポーターでしたね」

「私が錬金術士で、舞がガンナーだっけ?」

「うん、私ガンナーだった」


そう言うと、どこからか両手に拳銃を出現させた。

それに驚いたのが、俺と片山と水澤さんだ。他の女性たちは全員驚いてなかった。


「く、熊谷さん、その銃は……」

「これ? 私のスキル『銃召喚』で呼び出したの!」

「銃召喚?! そんなスキルが?」


水澤さんと片山が、クマヤさんの召喚スキルに驚いている。

銃召喚というだけあって、銃限定の召喚術ということか。

それで、職種がガンナーか……。


でもそうなると、魔導銃でも召喚できそうだけど、俺と同じで知識が無いと無理なんだろうな……。


「何か、異世界人のスキルってすべてチート仕様のような気がしてきたな……」

「確かにそうだね、高坂君。

召喚魔法に銃召喚、片山君の完全地図に私のカードドロップと、使い方次第で完全にチート仕様だね!」

「……それなら、私のスキルも?」

「私の錬金術も、か?」

「佐藤さんも武内さんも、おそらくそうなっていると思いますよ?」

「はぁ……」

「へぇ~」


佐藤さんは、チートでもたいしたことないだろうと思い、武内さんは、すごいものが作れるかもしれないと期待する。


確かに、俺たちのスキルがチート仕様ならば、弱小隊の助っ人には十分となる働きができるだろう。

となれば、俺たちの目標は死なないこととなるな……。






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